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【彫る】人・【版画好き】は千葉市美術館へー「ミュシャと日本、日本とオルリク」

千葉市美術館にて、見て来ました。

「ミュシャと日本 日本とオルリク」展を。

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ちょっと千葉は遠い…?と敬遠しがちな人も来た方がいいです

都内在住の人も、少し足を伸ばしても来る価値があります。チェコに興味のある人はもちろんですが、とりわけ版画に惹かれるという人にはもう大推薦!!の展示。
特に自分で「描く」とか「彫る」とかいう人には、もう手がウズウズうずいちゃってくるような刺激的な内容です。

Bunkamuraのミュシャ展に行った人にも見て欲しい

ミュシャ展といえばBunkamuraでも展示中で、こちらにもレポートを書きました。Bunkamuraの展示はとにかくミュシャ自身にフォーカスを当てて、さらにそこから世界のロックシーン(レコードジャケットやポスターなど)、そして日本のマンガへの影響を取り上げていました。


今回、千葉市美術館の展示はかなり毛色も展示作品も異なるもので、両展示ともいく価値はかなりあります。展示ボリュームも想像以上で、2フロアにわたってたっぷり堪能できるので、滞在時間は2時間以上は見込んでいたほうがよさそう。期間中大規模な入れ替えもあるそうで、実はもう一度行きたいくらいの内容。でも2回いけないひとも、立派な図録をゲットすれば前後期の作品も載っているので安心です。

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表紙裏が好みすぎる。装丁も紙質も含めてブックデザインが上質…これは超保存版!!

チェコにおけるジャポニズムと、その逆輸入

展示のテーマは、まずひとくちにいえば「チェコにおけるジャポニズム」。そしてそれが逆輸入されて日本に与えた影響について。ジャポニズムの影響を大きく受けたミュシャと、その影響を受けた日本人作家たちの作品があるのは前述した通りで、それに加えて、チェコ人画家のオルリクが日本に版画を学びにきた際の滞在をもとに日本の人々や風景画、版画作品を多く残している。

チェコにまつわる展示だけれど、まず展示室を入ると、尾形光琳などの琳派の作品、そして染色に使われる繊細な型紙や、葛飾北斎や歌川広重の浮世絵が展示された部屋からはじまる。パリ経由でチェコにまで届いたジャポニズムは、ここからはじまっているということをあらわしている。早速「彫る」人には手がウズウズしてきてしまうスタートです。

そこからまた膨大なコレクションがはじまるわけなのですが…今回は、あまり日本で知られていない、私も知らなかった「エミール・オルリク」について展示と図録で学んだものを書いてみます。

エミール・オルリクがみた日本

来日以前のエミール・オルリクの作品も、絵画や素描含め多数紹介されていますが、やはり版画に惹かれる私には、この人物たちたまらなくいいです。近所の裁縫工場のようすを描いた小版画。その身近な着眼点も、少なく控えめな色で描かれる世界観もたまりません。

エミール・オルリクは日本で版画技術を学ぶだけではなく、その師や工程なども版画に残している。オルリクの描く日本は、誇張もされていなくて、でも写真では決してなくて。彼の目でみた日本が素直に描かれているという印象。

製版を彼自身で手がけ、日本の印刷所で刷った作品もある。日本の慣例と異なった手法で、独特で芸術性が高い作品を彼が日本で作ったことが、以降の日本人の画家や版画かにも多くの影響と刺激を残したそう。

それにしても彼の作品の目は柔らかで、温和なタッチは、まるで日本人みたいだ、といったら語弊があるだろうか。だけどそれだけ日本に溶け込んで、日本に生活を楽しんでいたのだろうなという印象を受ける。

日本を離れ帰国したオルリクはまた母国のチェコやドイツなどでも精力的に活動を行う。とりわけ、クリムトなども参加していた「ウィーン分離派」の展示にも参加し、ウィーンの木版画熱を高めたともいわれている。ウィーンの木版画熱!!っていうのも版画好きの私には気になるワードでした。

蔵書票という文化を伝えたオルリク

オルリクは、日本に「蔵書票」という文化を伝えた人だとも言われている。
蔵書票とは、自分の愛蔵書に、これは自分の本だぞという印をつけるもの=蔵書印、ひいてはそれを紙に刷って本に貼り付けるためのもの。量産もしやすいため版画家が木版やリノカット(床材などに使われる版画材料)で彫ったものが多い。

オルリクがつくった小版画、蔵書票はもちろんのこと、その他チェコ人作家による蔵書票もいくつか展示してあった。実物をみるとその小ささと精密さに驚く!刷った元の版が見たい!

一部の版画家・画家の作品の中では、当時のパトロンの名前入りの蔵書票を作っているものもあって、面白い。これらも大きさは…8センチ角くらいだったかな…。かなりぎゅっとした世界観なのだ。

アール・ヌーヴォーが日本のグラフィックへ与えた影響

ミュシャのポスターなどが日本にもわたり、それがのちの日本のグラフィック・デザイナーの草分けとなる人たちへも多大なる影響を与えた。とくに文芸雑誌「明星」でも美術作品の紹介に力を入れており、日本のミュシャ派ともいうべき作品が展開され、1900-1910年代にかけては美術と文学が花開いたという。このあたりはBunkamuraのミュシャ展でも触れてはいたけれど、より版画作品に重点をおいた紹介、とりわけ杉浦非水図案集などが私には垂涎ものでした。

というわけで、表題に含まれた「ミュシャ」を語らずともこのボリューム感になってしまいました!それだけ充実した展示ということです。

さらに、ミュージアムショップをのぞいてみれば…クヴィエタ・パツォウスカーやチャペック兄弟の過去の展示図録や過去のグッズ、さらに世田谷美術館で今度始まる「チェコ・デザイン100年の旅」の図録まであるという充実ぶり。もちろんその他、展示の中で気になった人たちの図録や本などもたっぷりありました。

(*2020/06/16追記:残念ながら展示は終了してしまいましたが、展示風景の動画がYoutubeにありました。1:24くらいから、オルリクの作品も少しみられます。)

チェコ人画家に親しみが持てる展示

これを見るだけでも、チェコの美術や文化の一側面がしっかりと見られるだけでなく、日本との関わりも見られるからこそ、チェコにも改めて親しみを持ってもらえるのではないかなと思いました。

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「ミュシャと日本、日本とオルリク」
会期 2019年 9月7日(土)→ 10月20日(日)

この展示の関連企画で消しゴムはんこワークショップを実施しました

展示のことばかり書いてしまいましたが(笑)、かくいう私は、この展示の関連企画として、「消しゴムはんこで蔵書票をつくろう」というワークショップを実施したのでした。

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なんと総勢22名!の参加者さんの前で、手元をモニターでうつしだしながら彫り方をレクチャー。そしてみなさんそれぞれの蔵書印を完成させてくれていましたよ〜!

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千葉市美術館でのワークショップは、スタッフのかたの進行、そしてボランティアスタッフさんの見守りと応援、多大なるサポートによって実現しました!みなさまとお話してあらためて、地域の方にも愛されている素晴らしい美術館なのだなぁと実感…。

今回の展示とその次の展示(現代アートチーム「目」による展示)が終わった後、来年はリニューアルのため半年間閉館となるそう。今後ますますパワーアップしていく千葉市美術館も楽しみです。
私の今後の作品制作にかなり大きな影響を与えてきそうな、刺激的な展示でした。

あまのさくや 
絵はんこ作家。はんこ・版画の制作のほか、エッセイ・インタビューの執筆など、「深掘りする&彫る」ことが好き。チェコ親善アンバサダー2019としても活動中。
http://amanosakuya.com/

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