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資本効率って何? 【脱コーポレートガバナンス後進国②】

日本企業への提案はシンプルだ。

① 株式の持ち合いをなくそう
② 運転資金以上の現金を持つのをやめよう
③ 不動産賃貸事業に多角化をするのをやめて、コアコンピタンス(強み)に集中しよう

全て、結局は「資本効率の概念の欠如」ということで語ることができる。


①は、特に下請け企業の多い自動車業界に多く見られる慣習だ。トヨタ自動車は電装部品メーカーのDENSOをはじめ、さまざまな取引先と株式持ち合いをしている。

取引先に資本を入れることで、トヨタ自動車は下請け企業を言いなりにできる。

しかし、僅かな資本を入れることで取引先に対して強力な発言権を持つことで、取引先企業の他の株主の利益を害することになり、極めて不健全である。


②は、俗に「内部留保問題」として取り上げられる問題だ。

各企業が営む事業の性質によって、運転資金の量の大小はあれど、営業CFの5年分以上のキャッシュを持つ企業が上場企業の中にもゴロゴロいることは、非常に不健全である。

これだけのキャッシュを保持できるということは、それなりに安定した事業を持つ企業なのだが、社長は「何かあると不安」と言い大量の現金を蓄える。

会社と家計は違う。
会社は1つのプロジェクトのために存在している組織なのだ。
プロジェクト遂行に必要のないお金は、株主に還元すべきである。


③は、紡績業、製糖業、テレビ局など特定の業界に偏って存在する問題だ。

こうした経営判断をする企業には2パターン存在する。

  1. 扱う商品がコモディティであるため、常に激しい競争にさらされており、利益が安定しない企業
    ▶︎▶︎紡績業や製糖業を筆頭に、このような業界はまず 合併 をすることが優先課題だ。競争相手を減らし、資産を集約して資本効率を向上させることが、正攻法の「競争の戦略」である。

  2. 逆に、参入障壁が高く利益率が高い本業があって、金が余ってるために不動産業に手を出す企業
    ▶︎▶︎自社株買い をする。

これらの経営者としての仕事を怠り、不動産収入の上にあぐらをかくのは、プロ経営者として失格の烙印を押さざるを得ない。

アメリカでは、事業が自社のコアコンピタンスを強めるものかどうかシビアに判断される。

ウォルト•ディズニーの強みはアニメーション(利益率が高い)であるが、Disney+の顧客獲得のために、アニメーションとはかけ離れたコンテンツを制作した際、ボブ•アイガー はこれを誤った判断だったとして中止させた。

3M は、成長著しく利益率の最も高いヘルスケア事業を分社化させた。自社のコアコンピタンスである「接着と研磨」に集中的に資本投下をするためだ。


これらの提案で大切なことは、何も、新しい画期的なサービスを生み出せとか難しいことを求めていないこと。「止める」という意思決定をしてくださいと。

しかし、この提案をすると「ハゲタカ」と総括されてしまうあたりに日本企業やマスコミのマネーリテラシーの低さが垣間見える。
※むしろマスコミは指摘を受ける方の企業に入る 

日本には切り捨てることができない経営者が多い。
資本効率という概念を教わってないから、利益が立っている事業を止める理由を見つけられない。

ディズニーや3Mのような判断を下せる経営者が、日本に何人いるか。その判断を英断と理解できるメディアがいくつあるか。

VAIO事業 を切り捨てたソニーの平井さんの決断を、当時多くのメディアはまともに理解していなかった。「日本のものづくりの終焉」とかセンチメンタルなことを抜かしていた。


バフェットの言葉を借りると、

日本の場合は最もバイオリンが上手い人、ピアノが上手い人が定年間近に指揮者に登ることが多い。しかし、指揮者のやるべき仕事は演奏者の仕事とは違う。

経営者の仕事は「資本配分」なのだ。

要は、営業のトップ、製造のトップ、社内政治のトップが指揮棒を持ったところで、何をやったらいいか分からないのだ。


PBR1倍割れ問題は、資本効率の問題である。
資本効率を分かりやすく言うと「より少ない資源で良いものを作りましょうね」ということ。

だから、SDGsだのESGだの言うなら、太陽光発電とかではなく、まず企業が資本効率を高めることが必要だ。

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