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ふぐの毒をふぐに盛る

 ネットニュースで見つけた記事。フグはテトロドトキシンと言う致死性の毒を持つことが知られているが、この毒を無毒化したフグに盛るという研究が東京大学と長崎大学の共同で行われたそうな。結果、フグの腸内細菌叢が変化したとのこと。原著を読んでいないがおそらくはアウトカムを腸内細菌叢の変化として行った研究であろうから、その他の影響がなかったと結論づけるものではないと思われる。

 ネットで上がった意見として見かけたものは「フグ毒でフグは死なないんだ!」という驚きの声で、これは私も気になった問いだったので多くの方と同じ疑問を持っていたと知ることができた。何でも、フグ毒の意義は不明な点があるものの、フグ自身のストレス緩和にもなっているとかなんとか。受け手次第で毒にも薬にも変わるということだろうか。

 さて、今回の研究とは全く関係のない話題に移りたい。このフグ毒たるテトロドトキシンだが、愚痴や誹謗中傷みたいなものだなとふと考えた。誹謗中傷はむやみにされる側にとっては明らかに毒であり、時と場合によっては命を奪われかねない。一方、日常生活において、話の通じない仕事関係者や周りに迷惑をかける有害な相手に対し本人不在の場で気分転換や困難を乗り切るためにこぼす愚痴は、真っ当な人間の正当なストレス発散の手段である。この場合の愚痴は毒ではなく、ガス抜きのために有用な薬となる。
 愚痴で済むか、誹謗中傷になるか。受け手次第でどうにでも転がる危うさは扱う側の力量が問われる。フグ取り扱い免許は皆が持つものではない。しかし、相手がフグであって安易に手出ししてはいけないということを私達は知っているし、相手がテトロドトキシンで死ぬ人間だということも知っている。皆がフグみたいにフグ毒で死なない訳ではない。相手を知り、相手の気持ちを考える必要性を、フグもしくはフワを見て思い出せたら良いと思ったオリンピックイヤーの夏の日でした。


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