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日本に漂う悲壮感とZ世代

ぼくは今年に入ってからというもの、個人的に日本に対して悲壮感を感じるようなことが多くなったように思う。きっかけは最近の政治の動向と、今の仕事に関連する日本の医療経済問題だ。

10月27日付の読売新聞にはこんな記事が掲載されている。

岸田首相は26日、税収増に伴う還元策を巡り、政府与党政策懇談会を首相官邸で開き、来年6月に1人あたり4万円の定額減税を行う考えを表明した。住民税非課税の低所得世帯向けには1世帯あたり7万円を給付することも明言した。

https://www.yomiuri.co.jp/politics/20231027-OYT1T50000/

端的に言えば、税収が増えたのでその分を国民に「還元」することを目的としたもののようだ。

いったい国とは何なのだろうか。国民とは何なのだろうか。ここで、株式会社の仕組みをアナロジーにとって考えてみようと思う。

ある見方をすれば、ぼくたちは「株式会社日本」のオーナーであり、CEOとなるのが内閣総理大臣と考えることができる。会社はオーナーである株主に対して利益を還元し、その方針について中期経営計画や10ヵ年計画といった形で示すことが一般的だ。なぜなら多くの会社のゴールは、より大きな会社にして、より社会に貢献することだからだ(その感謝のしるしとしてお金を得る)。

ぼくたちは日本というおおぶねに乗っている

会社は設備投資をし、効率性を上げることで、将来の成長の機会を確保する。もし、会社が必要なところに投資をせずに、余った利益を従業員に還元することを考えていたら、その会社の未来は暗いように思う。特にに今の時代、VUCA (Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)という4つの単語の頭文字をとった言葉で、目まぐるしく変転する予測困難な状況を意味する)という言葉が使われるように、変化のスピードが激しく、変化なくして未来はない。人間は進化し続けることで現在までたどり着いたのだ。

今の日本の政治をこの視点で眺めてみると、中期経営計画でも、10ヵ年計画でもなく、どこか目先の1週間先のプランのように見えてしまう。もちろん物価高で多くの人が生活苦であることは事実であろう。だからこそ、増えた税収を使って未来に投資をしなければならないのではないだろうか。それは、教育であり、子育て政策であり、目線を上げて10年後の未来を見据えるのが政治の大きな役割ではないだろうか。

ここで少し、医療経済の話を取り上げてみようと思う。ぼくは今、製薬業界で新薬の価格戦略を考えたり、マーケティング戦略を考える仕事についている。仕事柄多くの医療従事者の方と話をするのだけれども、最近よく耳にするのがこの「医療経済」というキーワードである。

日本では国民健康保険制度のもと、全国民が医療サービスを受けることが可能な一方で、高齢化が進むにつれて、医療ニーズが増大している。これはつまり、医療費が膨れ上がることであり、国民の負担、特に現役世代の負担が増えることにつながる。

レカネマブ

レカネマブという認知症治療薬が開発され、日本でも承認を受けた。米国での年間費用は日本円で390万円程度に上り、国内でも高額になる可能性が高いとされている。高齢化が進むにつれて認知症患者の数は比例して増えていくだろう。しかしながら、この高額な薬剤費は「高額療養費制度」が適用されると、その数十分の一の自己負担で使えてしまうのである。残りはもちろん、医療費での負担となる。

ネット上ではこんな意見も散見されたようだ。

「アルツハイマーの進行を27%遅らせるが治らない」
「要介護期間が延びるだけ」
「高齢者の少しの長生きのために、若者の1年間の稼ぎ丸々投じる勢い」
「社会保険料アップは不可避、現役世代は死にますね」

https://president.jp/articles/-/74362?page=1

これがまさに、先にあげた「未来への投資」をどう考えるか、という観点につながる。少子高齢化が進み、相対的なプレゼンスが下がる中、目先の「利益」を優先し、未来への投資を怠る政治。それに歩調を合わせるかのように進む、優秀な人材の海外流出。日本で英語が話せる優秀な人材は高給を理由に外資系企業に就職し、ジリジリと日本を蝕んでいく。

ぼくたちZ世代の中には、日本に対する悲壮感が漂う2023年の秋だ。

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