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週休3日なんていらないから酒をくれ。

なぜ人は、生と死の狭間を彷徨いたがるのだろう。

はっきりとした意識の中で過ごすだけでは、何かが足りない。

お酒、タバコ、セックス、ギャンブル――人々は無意識の世界へと逃れる術を次々と見つけ出してきた。時には、その世界に深く入り込み、現実に戻れなくなる者もいる。

私の妻の父も、そうだった。病気の兆候があり、周囲から何度も止められていたにもかかわらず、酒もタバコも手放すことができなかった。

そして、先日亡くなった。60代半ばの死。平均寿命が伸び続ける現代において、その死はまるで世間に逆行するかのようだった。

家族を失うと、悲しむ暇もなく葬儀が行われる。先日は私の祖父が亡くなり、少し気持ちが落ち着いたと思った矢先、今年二度目の葬式に参列するとは思いもしなかった。普段は意識もしない「死」という概念が、この時ばかりはお経の響きとともに否応いやおうなく迫ってくる。

夜、眠りにつけば、朝が来るまでの時間を感じることができない。死とは、その感覚が永遠に続くことなのだろうか。それとも、死後の世界である彼岸は存在するのだろうか。

死は始まりなのか、それとも終わりなのか――生きている間には、その答えを知る術はない。ただ、自分が今、生きているということだけは、強く感じさせられる。

普段は仕事に細心の注意を払い、人間関係も円滑に保つよう努める。健康を維持するために節制し、利他的で真面目な生き方を心がける。誰もがそれを間違いだとは言わないだろう。

しかし、自分の体を壊してまで働く人もいる。好きなことを我慢してまで健康を追求する人もいる。果たしてそれが、本当に幸せなことなのだろうか。

エコノミークラスの席にしか座れない身分にとっては、飛行機の中での長い時間は苦痛だ。しかし、目の前の画面で見られる映画というオアシスが、その時間をほんの少し和らげてくれる。

先日、イスタンブール行きの飛行機で観た映画『悪は存在しない』。『ドライブ・マイ・カー』と同じ監督の作品で、知名度がある作品であるものの、日本では限られた映画館でしか上映されておらず、現在は配信サービスでも視聴できない。そんな希少な作品を目にする機会を得た私は、上映中ずっとその世界に引き込まれ、見終わった後から今もなお、余韻に浸り続けている。

日常の中で感じる、何かが変わるかもしれないという不穏さ。分かり合えない他人とどうにかしてコミュニケーションを取ろうとするぎこちなさ。そして、理不尽に訪れる死――この映画はそんな情景を鮮烈に描き出していた。

特に心に残ったのは、主人公が口にする「バランスが大事だ」という言葉だ。なぜ人は、体を壊してまで働いてしまうのか。なぜ人は、好きなことを我慢してまで節制に努めるのか。それは、その人が真面目だからでも、利他的だからでもない。

きっと、バランスを崩すことが怖いのだ。けれども、心の奥ではバランスを壊したいという欲望を抱いている。人間はそんな矛盾の中で生きているのだ。

私自身も、そうだ。普段は現実性を大切にしているくせに、現代美術館で見るシュルレアリスムのような非現実的な作品に強く惹かれる。それは、生と死の境目に誘われ、崩壊した世界に触れることで、自分が生きていることを実感できるからなのだと思う。

鼻を突くような匂いで目を覚ました。どうやら、近くにいた人の口臭が漂ってきたらしい。私は街銭湯のサウナで整っていた。

意識が遠のいている間、ずっと生きることについて考えていたが、我に返ると、すぐに明日の仕事のことが頭をよぎり、朝の満員電車に乗る自分を想像して憂鬱になる。

以前、週休三日に憧れたこともあった。しかし、私の場合、休みが増えることで、いざ現実に戻った瞬間の憂鬱さがさらに大きくなるだけなのだろう。

結局のところ、私はこう思う。バランスを崩すことへの恐れが薄れれば、もっと幸せを感じられるのではないか、と。

生産性や効率性を求め、無駄を省くことばかりが重視されるこの世の中で、そんなことばかり考えていても幸せにはなれない。実際、合理性を追求する人々が幸せそうに見えることはほとんどないのだから。

おそらく、私に必要なのは、非合理の象徴――お酒なのだ。もし、週に一度でも仕事中にお酒を飲んでいい日があれば、週休三日を得るよりも幸せになれる気がする。真面目な人ばかりだったはずの職場が、酔った者ばかりに溢れれば、いかに自分がバランス中毒に陥ってたかを自覚できるだろう。

そもそも、一人でバランスを取ろうなんて、私は自分のことを過大評価しすぎていたのかもしれない。私はただの小さな存在だ。自分勝手に生きたところで、簡単に世界のバランスが崩れるはずもない。

だからこそ、私はもっと自分のエゴに従って生きたいと思った。それが、私にとっての「自分らしさ」であり、幸せな生き方なのだから。

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