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5分で心を抉るエッセイ

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安易な自己肯定や他者否定ではなく、自分の心を抉った(えぐった)先に生きる強さを見出していく、5分で読めるエッセイです。
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#創作大賞2024

明日死ぬかもしれないと思って生きること。

「明日死ぬと思って生きなさい。」 かつての偉人がこんなことを言ったらしい。 今でも、この競争社会を駆け上がった者たちは、同じフレーズを口にする。 このフレーズ、頭ではよく理解できる。 昨日までの人生を悔いなく生きられているかというと、そんなわけがない。なので、今日からの人生はもっと悔いなく生きたいと、いつもそう思う。 けれど、どうしても心では、もやもやとした違和感が生じてしまう。 いくら「明日死ぬかもしれない」と思っても、普通に生きているだけで余裕がないから、怠惰

他人の子どもを叱れない

吾輩は猫を被るニンゲンである。名前はぽん乃助という。 子どものときに、叱られたことはあるだろうか? 「親父にもぶたれたことないのに!」という例外もあるかもしれないが、子どものときに親に叱られた経験のある人が大半だろう。 善悪がつかないから、無邪気な行動をしてしまう。親から叱られて、それが悪いことだと知る。 そんなのは、通学路と同じように、誰もが子どものときに通る道だ。 ただ、子どもとて、いつも親の近くにいるわけじゃない。 外で友だちと一緒にいるとき、ついつい無邪気

魔境『東京』で生き残るために

吾輩は猫を被るニンゲンである。名前はぽん乃助という。 目の前の席に座っていた人が徐に立ち上がった。 新生活に疲れていた私はそこに座ろうとしたら、隣の人から無助走のタックルを受けた。 隣を見たら、もうその人の姿はそこになく、気づけば目の前の席に座っていた。 ―嗚呼、東京に帰ってきてしまった。 満員電車の中で、桜の散り際を窓から見ながら、私はそう思った。 東京で生きてきた私は昨年、仕事の関係で東京から離れることになり、今年の2月まで大阪に居た。 大阪だって大都会だ。

アウトプットを崇拝していたバカな私へ

吾輩は猫を被るニンゲンである。名前はぽん乃助という。 それは、5年ほど前の話だ。インターネット上では、「アウトプット」が大事だという風潮になった。ベストセラーの著書でも、「アウトプット」がキーワードになった。 ニンゲンたちは、スマホという端末を手にして以来、SNSやブログ等で「文字」を通じた発信を活発にするようになったと思えば、YouTubeやTikiok等で「動画」を通じた発信も活発にするようにもなった。 そして、成功した発信者たちは、私利私欲を満たすための金鉱は「ア

芸能人の精神疾患の話題がバズってて、思索に耽っていた。

吾輩は猫を被るニンゲンである。名前はぽん乃助という。 ニュースサイトやSNSで、芸能人の精神疾患の話題がバズることがある。 以前は、特に理由は明示せずに「休養」という形でニュースが取り上げられていたことが多かったが、近年は「精神疾患」に関する理由が添えられることが多くなったように思う。 さて、そういうニュースに寄せられるコメントを見ると、「ゆっくり休んでください」といった心優しい内容もあれば、「社会はもっと寛容になるべきだ」「精神疾患の理解が広がってほしい」といった社会

蛙化現象から考える男女の恋愛論

吾輩は猫を被るニンゲンである。名前はぽん乃助という。 「蛙化現象」という言葉をご存知だろうか? 元々は心理学者が2004年の論文で名付けた用語であったようだが、2023年には流行語大賞の7位となるくらいに、ニンゲンたちの間では交わされている言葉であるようだ。 既に言葉の意味を知っている人も多いと思うが、一応解説すると、「元々好きだった相手の言動が気になって気持ちが冷める」という意味の言葉である。 以前、とある女性YouTuberが「男性が会計のときに財布を出しているの

家族に抉られた心の傷。過干渉という名の刃。

吾輩は猫を被るニンゲンである。名前はぽん乃助という。 気づけば最近、私の冷蔵庫には氷結無糖レモン缶酎ハイが詰まっていた。 自炊をしない私の冷蔵庫の中は、色のない無機質な世界だが、そこには多数の生命体が移り住んできたような景色だ。 そう、私は晩酌の日々が続いていた。それは、悩みがあるからだ。 悩みなんてものは、SNS上で顔知れぬ者たちに発信する暇があるなら、ちゃちゃっと現実世界の知り合いに相談した方が良いのは分かってる。 けれど、現実世界で相談しづらい悩みがある。それ

私が「自己肯定感」を拒絶してしまう理由

吾輩は猫を被るニンゲンである。名前はぽん乃助という。 私は、「自己肯定感」という言葉が苦手だ。 嫌いというわけではないが、どちらかと言えば近づきがたい存在だと感じる。 私は「自信」という言葉に近い定義だと認識していて、「自己肯定感が高まれば対人関係もうまくいく」という論理も、抽象的ではあるもののなんとなく理解できる。 しかし、頭では理屈をわかっていても、心では「自己肯定感」を拒絶してしまう。 いや、拒絶しているのではなく、私の心の奥底ではビビっているのかもしれない。

「男といるほうがラク」と言う女を好きになった男の末路

吾輩は猫を被るニンゲンである。名前はぽん乃助という。 「男といるほうがラク」と言う女性は、多く存在する。 街の中で、女性の集団に一人だけ男性が混じっているという構図はあまり見ないけど、男性の集団に一人だけ女性が混じっているという構図をよく見かける。 なぜ、急にこんなことを話したかというと、私は「男といるほうがラク」と言う女性と多く付き合ってきたからである。 決して、そう言う女性を否定するつもりは無い。逆に、私もそういう女性が魅力的だと思って、付き合ってきたからだ。

「教え方が悪い」って、もう言わないよ。

吾輩は猫を被るニンゲンである。名前はぽん乃助という。 私は不器用だった。だから、色んなことで躓く(つまずく)ことが多かった。 覚えているのは、折り紙を折っていたとき。教室で私だけが、みんなのペースに合わせることができなかった。 -私だけが、取り残されている。 私は、そんなふうに感じることが多かった。 そして、あのときの先生の苦笑いの顔は、忘れられない。 まだ未成熟な私の心では、自分の不器用さを恨む感情をひとりで抱えきることができなかった。 だから、「教え方が悪い

女子会と喫煙所は似ているという話

吾輩は猫を被るニンゲンである。名前はぽん乃助という。 女子会と喫煙所は一見非なるものだが、本質は似ているという話をしたい。 先日、仕事でイベントを開催した際に、私を含め10名ほどで午前中から準備を進めていた。 その10名は同じ会社に所属するメンバーではなく、3社から老若男女が集まった状況であり、お互い気を遣いながら準備にあたっていた。 一番下っ端であった私は、会場内のレストランの席を予約し、午後から始まるイベントの前に打合せと称したランチ会を開催した。 年齢は30歳

あの時の後悔した「選択」が私を強くした。

吾輩は猫を被ったニンゲンである。名前はぽん乃助という。 最近は、「親ガチャ」という言葉をよく聞く。 大学入学共通テストにも、「親ガチャ」を想起させるような問題が出題されたようだ。 行動遺伝学では性格の遺伝率はおよそ40%と考えられており、最近は、収入や学歴についても遺伝の影響があるとも言われている。 SNSで煌びやかな生き方をしている人がいる一方で、「生まれつき」に運命が定められているという現実は、不幸に直面する人の目から光を奪うことになるだろう。 「親ガチャ」とい

「病気にならないと休めない」という現代病

吾輩は猫を被ったニンゲンである。名前はぽん乃助という。 私は、旬の過ぎ去ったこのタイミングで、新型コロナ患者になった。 これまで罹ったことがなかったので、「私だけは特別だ」という主人公補正を感じていたものの、無惨にもその幻想は散った。 家から近くのクリニックでPCR検査を受けに行き、騎士のように重装する医者から爆弾を解体するかのような扱いを受け、その後、「あなたは陽性ですので5日間は外に出ないでください」という宣告を電話で受けた。 宣告を受けたその日は、頭の中からハン

「成長依存症」に陥っていないか?

吾輩は猫を被ったニンゲンである。名前はぽん乃助という。 「成長」って良い響きだ。誰もがそれを否定しないだろう。 -もっと上を目指さなきゃ。もっと頑張らなくちゃ。 私は、成長することに日々必死だった。 noteやTwitterでも、「いいね数を伸ばす」「フォロワー数を伸ばす」といったようなコンテンツがよく見られている。 今日よりも明日の人生が良くなると信じて、「成長」に向けて頑張る。 アイドルが上に向かって一生懸命になる姿が輝いているように、自分だって輝きたい。