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UXリサーチという薬と毒

こんにちは。Mutureのちゅうさんです。

大企業にリサーチの浸透と文化醸成を行っていますが、半年ほどみんなでやってくるとその「効果」と「課題」みたいなものが見えてきました。
まだまだ途中経過ではありますが、見えてきたことを書き記したいと思います。(最近ナレッジ溜めてないし)

デザイナー、リサーチャーの方や、プロダクトに携わる方、リサーチ文化を社内で広めたい方などに参考になると幸いです。

ちなみにMutureって会社がどんな会社か気になる方は是非公式noteをご覧ください。

リサーチを組織に浸透する推進者

私が組織伴走しているエポスカードのアプリ担当において、私のロールは「UXデザイナー/リサーチャー=専門家」となります。そこにエポスカード側でデザインのロールを担当する方がパートナーとなり、ともにリサーチを推進していきました

取り組みの全体像などはMutureメンバーのカネさんの記事をご覧ください。

専門家+推進者がUXリサーチというものを浸透させていく構図なのですが、大事なのは推進者の存在です。専門家が1人でそこを担うこともありますが、1人でリサーチを実行しながら浸透を行っていくのは限界があります。

推進者は「なんのためにリサーチするのか」の本質を理解し、共に学びながらチームに還元・浸透を進めてくれる人です。そして一緒にリサーチを進めていき、専門家に近づいていく人でもあります。

推進者は非デザイナーでも初学者でもOK。ただ「ユーザー中心」でプロダクトやサービス開発することの重要さと、ビジネス的なメリットを理解してくれている方が適しているでしょう。

「熱い気持ちで興味をもってくれている人」を見つけるか、作るのです。

プロダクトへの向き合い方、仕事への向き合い方が変わる

これまでのエポスカード社内でのリサーチの多くは答申のためのものが多く、ユーザーに聞いた、アンケートを取ったという儀式なものが多かったようです。スタイルもユーザーに答えを聞きに行くというもの。

ですが推進者と共にリサーチを行っていき、インタビューに各メンバーが参加するようになると変化がありました。
インタビューや定量データ等のファクトをもって、各スプリントの中で議論と意思決定を行うようになってました。

「◯◯の使い方をしていると話していて、データでも裏付けできそう」
「このペルソナは使わないと思う」
「ユーザーストーリーはこういうのが考えられる」

具体的にどこでというより、常にビジネス観点・技術観点と織り交ぜながら当たり前に、という感覚です。

当初はインタビューも「デザイナーと推進者がやる」ものという空気感だったものも、又聞きではわからないとなり、他のメンバーも参加してくれるようになり、ラップアップでも一緒に議論していくようになりました。

エポスカードでのパートナーであり推進者にあたる川上さんも、デザインやリサーチに向き合うことで、「型にはまらない私」になったようです。

確実に変化もありますし、プロダクト開発組織としてとても正しい状態だと思います。ただリサーチによるユーザー中心という考えは、一種の中毒性のあるものだと感じています。

「ユーザー中心」という毒

リサーチによって仮説を検証する、ユーザーの行動を観察する、データからユーザーのインサイトを考える。これが当たり前になってくると「ユーザーにとって良いもの作ろう」という意識が当然強くなります。

そうなると起こることが些細な仮説でもユーザーにインタビューしてみよう。インタビューしないと判断できない。

という状態に陥ってしまうことが見受けられます。
仮説にも粒度がありますし、インタビューで検証しないとわからないこともあるでしょう。ですがインタビューはリサーチの1つの手段でしかありません。定量データから検証も十分にできますし、競合を調査することで解決することもできるでしょう。

それでもインタビューをしないといけないと思うのは、自分たちが持つ判断材料たちが自分たちで信用できていないからだと思います。
そしてインタビューから得られたユーザーの言葉は、どのような情報よりも強いと感じられるからです。

定量データも本当に正しいのか、計測の方法間違っているのかも、この数値のロジックで意思決定していいのかな。というように。そうなるとなんでもユーザーに聞いたほうが安心できるということになるのかもしれません。

そうなるとプロダクト開発のスピードがどんどん落ちてくるのです。

UXリサーチは意思決定をするためのものではない

ちょっと語弊があるかもしれませんが、UXリサーチは意思決定のためにユーザー視点の材料を集めるためにある、と私は思っています。

以前リサーチチートシートの記事を書きましたが、これをやれば何かを「決定」できるわけではありません。

ビジネス観点もあれば技術観点もありますし、事業計画とプロダクトロードマップもあります。インタビューをすれば何かしらの意思決定をなすのではなく、必要な情報の保管するための手段として捉えるべきだと思います。

リサーチの専門家は「リサーチしないこと」を決められる

上記までのようなことが起こりながらも、仕組みを作ったり知識をインストールと啓蒙していくことで、組織にはリサーチが浸透していき「リサーチの民主化」がなされていくでしょう。

ではその時に専門家であるリサーチャー/デザイナーはどのように振る舞うべきなのでしょうか。

私の考えではありますが、リサーチを取りまとめる存在として「リサーチしないこと」を決定できることに1つ価値があると思います。

社内では様々なリサーチが日々走っています。
特にインタビューなどを中心に行うUXリサーチはアンケートやデスクリサーチなどと比較すると、「やっている感」がでますし、素晴らしいことに思えます。役員を始めとする上長たちも、無邪気に「ユーザーの声を聞いた?」と聞いてくるでしょう。

もしかしたらそのリサーチは必要無いかもしれないし、他に良い方法があるかもしれません。それを判断し、適切に導き、適切にデータを保管し、バイアスなくインタビュー結果が意思決定に使われることを管理し、その仕組が持続させていくことが専門家の役割になっていくかもしれません。

リサーチの用法用量は計画的に😉

最後に

Mutureでは一緒にMutureの組織作り、組織支援に取り組んでいただけるメンバーも絶賛募集中です。特にUXデザイナーや共に学んでいくアソシエイトUXデザイナーも募集しております。ぜひご連絡ください!


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