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企業再生メモランダム・第45回 自分の仕事は、利益への貢献を前提としているか?

「企業再生メモランダム」では、私が、20代の時に、複数の会社の企業再生に従事する過程で作成したメモを題材として、様々なテーマについて記載していきます。

メモの35枚目は7年前に作成した「自分の仕事は、利益への貢献を前提としているか?」と題したメモです。

メモの背景

この頃になると、対象会社の一部のスタッフは、自分からいろいろとチャレンジするようになってきて、社内の雰囲気も徐々にですが良くなってきたように思います。

一方で、「何もしない。」という経営方針を掲げた社長は、何をやっていいのか分からず悩みを抱えているようでした。

一般的に、社長には、定型的な日常業務はありません。毎日決められた仕事をし続ける社長など世の中には存在しないのです。

対象会社の問題点は、日常業務をまわすスタッフしかいないことで、日常業務を創ったり改善したりできる人がいなかったわけですが、これは生え抜き社員である社長にも同様のことが当てはまりました。

そうなるとどうなるか。慣れ親しんだ元の役職の仕事をし始めるのです。不思議なことで、人間は何もしないということにも耐えられないのです。

信じられないかもしれませんが、社長は、社長という地位にありながら、経理部長の仕事をし始めました。それで日常の時間を費やすことで、心の空白や目の前の不安を埋め始めたのです。

そして、誰かがリーダーシップを発揮して新しいことをやろうとすると、本来ならば社長が率先垂範して企画立案して進めなければならないにも関わらず、野党のように反対して潰そうとしていました。

社長は、客観的にどう考えても、経理部長の器しかない人間だったわけですが、一度、会社組織の頂点の役職に就いてしまった彼は下りることもできないのです。

株主チームとしては、彼がまともに社長としての役割を果たすことを望んでいましたが、下りることもできず、彼の苦悩ばかりが積み上がっていったのです。

社長個人は、孤独を抱え、袋小路に迷い込んでしまったような状態でした。そして、後に記載しますが、さらにその状況は悪化する方向へ向かってしまいます。

一方で、社長がこのようなことになっているとは、つゆ知らず、私や経営改革に賛同してくれる一部の幹部社員、スタッフは、日々、経営改革に邁進していました。

そして、このメモのように、対象会社を「普通の会社」にすべく、当たり前のことを、繰り返し、繰り返し、スタッフに説明してまわりました。

メモ「自分の仕事は、利益への貢献を前提としているか?」の中身

1.前提:会社は利益を出さなければならない

会社は利益が出てはじめて、会社組織を維持できますし、スタッフ、株主、取引先、地域社会など会社を取り巻くステークホルダーにメリットをもたらします。

利益を出すことが至上命題なのです。

そのため、全てのスタッフは、例えば営業に関わるスタッフならば売上向上、バックヤードに関わるスタッフならば最低限の人件費でより多くの作業をこなすという費用対効果の最大化など、それぞれが会社に付加価値をもたらして、利益を出すことに貢献しなければなりません。

2.優先順位は何か?それは会社の利益!

(1)クレーム(苦情)のない会社は潰れる!

このタイトルの意味を考えてみてください。簡単です。クレームのない会社とは、お客様がいない会社です。だから潰れます。

「クレーム=ダメ!」と教わってきている人ばかりだと思いますが、これは実は論理の飛躍をしています。正確には、お客様を集客し、売上・利益を拡大することが前提で、そのうえで、クレームが発生しないようにしましょう。

また、そもそも、クレームを発生させてはならない理由は、顧客満足度の向上のためです。顧客満足度の向上を通じて、リピーターの促進や口コミの促進をし、売上・利益の拡大を目指しているのです。

クレームを発生させないこと「だけ」を目的にしてはいけません。

(2)売上チャンスを減らすな!

売上がなければ利益はありません。経費削減をし続けても、肝心の売上がなくなってしまっては、利益はなくなってしまいます。そうなるとスタッフ数も維持することができません。

「① 顧客満足度は高いもののサービスの利用率が低い、② 競合他社がいずれも同じサービスを展開しているため売上が低い・・・だからやめましょう。」というような提案を受けることがありますが、問題の本質は、逆なのです。

サービス利用率や売上を上げることに、スタッフが本気になって努力していないことが問題なのです。

(3)野党・評論家になってはいけない!

野党は、与党に対して、「反対!やめろ!」と罵声を浴びせます。評論家は、したり顔で「これはよくないね。」と批評をします。

会社は、実際に利益を上げなければいけません。世間でよく言われるとおり、結果が全てなのです。

もちろん、ビジネスはお客様ありきですから、10打数10安打というわけにはいかないと思います。失敗も、成功につながる過程では必要でしょう。しかしながら、少なくとも打席に立ち続けなければいけません。

やめること、やらないことは簡単です。前述のように、一見、論理的にも合っているように思ってしまう人もいるかもしれません。「やめましょう」、「やらない」と言いだすと、自分の仕事の存在価値が低下したり、会社において自分の存在価値がなくなってしまったりします。

3.頑張る方向を間違えないこと!

対象会社は、だいぶ改善されつつありますが、まだまだ大企業病に冒されています。記載してきたとおり、利益のために頑張らなければ、会社において自分たちの存在価値・居場所がなくなってしまいます。それが分からなくなるぐらい利益意識が低くなってしまっていたり、部署ごとの障壁(セクショナリズム)が発展してしまっていたりするのです。

繰り返しですが、会社は利益を出すことが至上命題です。

私たちスタッフは、会社を通じて、利益を出して、それでお給料をもらって生活していると言うこともできます。そのため、大前提として、私たちは利益を出すために頑張らなければなりません。今の自分の仕事は、利益への貢献を前提としているか、を自問自答してみてください。

くれぐれも誤解をしないで欲しいことは、文中に記載してあるクレームの発生を決して良しとしているわけではありません。また、利用率が悪いサービスをそのまま放置しようとしているわけではありません。

全スタッフが頑張る方向をしっかり認識し、努力した上で結果が出なかった場合に、それらは軌道修正すればよいのです。

会社がスタッフのために何をしてくれるのかではなく、スタッフが会社のために何が出来るか、どのような利益への貢献ができるかを考えて欲しいと思います。



本連載は事実を元にしたフィクションです。

株式会社スーツ 代表取締役 小松 裕介
 2013年3月に、新卒で入社したソーシャル・エコロジー・プロジェクト株式会社(現社名:伊豆シャボテンリゾート株式会社、JASDAQ上場企業)の代表取締役社長に就任。同社グループを7年ぶりの黒字化に導く。2014年12月に株式会社スーツ設立と同時に代表取締役に就任。2016年4月より総務省地域力創造アドバイザー及び内閣官房地域活性化伝道師。2019年6月より国土交通省PPPサポーター。

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