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企業再生メモランダム・第12回 若手スタッフへの話 後編

「企業再生メモランダム」では、私が、20代の時に、複数の会社の企業再生に従事する過程で作成したメモを題材として、様々なテーマについて記載していきます。

「企業再生メモランダム・第10回 若手スタッフへの話 前編」「第11回 若手スタッフへの話 中編」の続きになります。

メモ「若手スタッフへの話」の中身

<仕事とは?>
1.不確実な時代

2.あなたの仕事は狙われている?
(1)ライバルは老人、若者、外国人
(2)社員は経費(お金を使うコスト)なのか、資産(お金を稼いでくれる財産)なのか
(3)付加価値のある仕事が求められている。
(4)給料分の付加価値のある仕事をしよう!ぶら下がり社員にならないために。

3.「労働」ではなく「仕事」にしよう!何のために働くのか?

4.キャリアとは?
(1)あなたは会社に何ができる?社内におけるキャリア設計。憧れの上司。
(2)社外におけるキャリア設計。どこにいっても通用する人材になろう。

5.「上司」と「部下」は、組織における役割分担。

6.上司には「役得」もあれば「役損」もある。

7.自分に投資をしよう!
(1)勉強のススメ(会計、マーケティング、経営戦略、ファイナンス、オペレーション、テクノロジー、歴史、心理学、統計・・・)
(2)読書のススメ

終身雇用を前提とする人事体系の企業だと、このような考え方が埋没してしまいがちなようですが、本来は、上司と部下は組織における役割なのです。

良い社長とは社長としての役割を果たせている人ですし、良い課長とは課長としての役割をきちんと果たせている人です。

良い上司とは、組織として課せられている上司としての役割をしっかりと果たせる人であって、先に入社したからとか年齢が上だからとかではありません。お金を稼げるとか部下に優しいとかでもありません。もちろん、役割を果たしたうえで、お金を稼げたり部下に優しかったりすれば、なおのこと良いことは言うまでもありませんが、これらは良い上司としての必要条件ではないのです。

対象会社のような地方企業の大会社では、「地縁」(住む土地にもとづく縁故関係であり、近隣の住民との間で相互扶助などを通じて形成される地域コミュニティ)と「血縁」(親族など)を通じた入社の方が多く、人に対する評価がぐちゃぐちゃな状況がよくあります。

例えば、会社では上司と部下の関係であるものの、地域社会のコミュニティでは部下のほうが上司よりも立場も上で発言力もあるといったことがあるわけです。

東京では、組織図をそのままに「縦」の指揮命令系統のみを意識すればいいわけですが、このような会社だと「血縁」も馬鹿にできません。幹部社員の子どもが、夏休みにアルバイトで来て、親の肩書の威光を笠に着て、現場で威張り散らすなど、一般常識では信じられないような光景まで繰り広げられることがあるわけです。

会社組織の役割を明確にして、シンプルにそれが果たされているかどうか。人格も人間性も関係なければ、出身地や学歴など属性も関係ありません。ましてや、入社のきっかけが「地縁」だろうが「血縁」だろうが関係ないということを伝えなければなりませんでした。

また、赤字会社にありがちではありますが、糸の切れた凧のように、社長をはじめ、幹部社員はやりたい放題な状態だったので、一般スタッフは、「役職」=「役得」のように捉えてしまっていました。

対象会社の社長が、会社が傾くぐらい無駄なお金を費消したことについては先に述べたとおりですが、当時、社内政治においては社長と対立関係にあった経理部長も、似たり寄ったりで、自分のお気に入りの部下には会社に内緒で手当てを多く付けていましたし、朝は体調不良を理由に出社しないことも度々ありました。

このような上司に囲まれていて、一般スタッフの感覚が狂わないわけがありません。

私は、若手スタッフに対して、白洲次郎が言ったとされる「地位が上がるほど、役得ではなく、『役損』が増えることを覚えておけ」という言葉を紹介しました。

会社の社長や幹部社員の地位に就いた人は、スタッフの生活を守ったり地域社会に貢献したりすることで、たまに華やかなこと(役得)もあるかもしれませんが、一方で、不景気であったりトラブルであったり、人間力が試されるような厳しい局面(役損)もあるわけです。

世の中は本当によく出来ていて、組織のトップである社長ですら、得も損もちゃんと用意されているわけです。

このことをしっかり理解しないと組織の上には立つことができません。役得ばかりだったら、それはやりたい人ばかりでしょうが、一定の人間の器や能力がなければ、その重要な役職に就き続けることはできないのです。

他にも、若手スタッフに対して、上記メモに加えて、以下のような社会人にとって当たり前の話をしました。

<会社とは?>
1.もしあなたが社長だったら何をする?

2.会社は誰のもの?~株式会社の歴史~

3.ビジネスとは?売上、原価、一般管理費、利益

4.会計を身につけよう。財務会計、税務会計、管理会計

5.プロフィットセンターとコストセンター、ラインとスタッフ

6.因数分解(会計からビジネスへと逆算しよう)
(1)売上を分解しよう
(2)経費を分解しよう

私は職業柄、今まで様々な会社の若手スタッフと接してきていますが、赤字会社の若手スタッフからは毎度「こういう話をしてくれる上司はいなかった。」と言われているように思います。

しかし、一度、この話を知ってしまったら、あとは早いです。若い人の吸収力はスポンジのようで、あっという間に良識と常識を身に着けて、立派な社会人に成長していくものです。



本連載は事実を元にしたフィクションです。

株式会社スーツ 代表取締役 小松 裕介

 2013年3月に、新卒で入社したソーシャル・エコロジー・プロジェクト株式会社(現社名:伊豆シャボテンリゾート株式会社、JASDAQ上場企業)の代表取締役社長に就任。同社グループを7年ぶりの黒字化に導く。2014年12月に株式会社スーツ設立と同時に代表取締役に就任。2016年4月より総務省地域力創造アドバイザー及び内閣官房地域活性化伝道師。2019年6月より国土交通省PPPサポーター。

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