企業再生メモランダム・第67回 幹部社員としての矜持 後編

「企業再生メモランダム」では、私が、20代の時に、複数の会社の企業再生に従事する過程で作成したメモを題材として、様々なテーマについて記載していきます。

「企業再生メモランダム・第66回 幹部社員としての矜持 前編」では、「幹部社員としての矜持」と題したメモの背景とメモの中身の一部について記載をしました。

後編では、残りのメモの中身について、ご紹介したいと思います。

メモ「幹部社員としての矜持」の内容

2.幹部社員に求められること、一般スタッフに求められること

(1)幹部社員に求められること

幹部社員は、高い職位にあるため、会社のために求められる役割が大きいです。そのため、万が一その役割が果たせないのであれば、会社のために自ら身を引くべきでしょう。

幹部社員には、役割を果たせていないにも関わらず、その高い職位を維持するというセーフティーネットはありません。

繰り返しになりますが、会社とは、経営陣、社員、パート、株主、取引先、地域社会など全てのステークホルダーの幸せのためにある運命共同体です。

そのため、みんなの幸せを担保できなかったり、みんなの幸せのために貢献できなかったりするならば、みんなのために自ら身を引いて、みんなのために貢献できる職位にあるべきです。

なお、2点補足いたしますが、① 厳しい会社の中には「UP(昇進) or OUT(退職)」を掲げている会社が多くありますが、対象会社はそこまで厳しいことは考えていません。② 対象会社は、世間一般の会社と比較しても、一般スタッフが働きやすい環境にあり、一般スタッフにとっては“セーフティーネット”が充実している会社です。

(2)一般スタッフに求められること

一般スタッフは、幹部社員と比較すると、会社のために求められる役割は小さいと思います。しかしながら、役割がないわけではありません。その会社から期待される役割を真っ当に果たさなければなりません。

(3)スタッフ全員に求められること

最後に、そもそも、幹部社員と一般スタッフともに共通することではありますが、私たちが働く目的は、会社の存続・発展のためです。

本来は、会社における地位や部署・職位や職域を気にする必要はありません。本当に会社のために資することであれば、誰が提言、発案しても良いのです。

そして幹部社員は、その貴重な意見に耳を傾けて、本当に会社のために資するかどうかを入念に確認して、もしそうであるならば積極的に実行してもらいたいと思います。

幹部社員や一般スタッフには、決められた日常業務以外は何もしないという選択肢はありません。

以前、対象会社には「今は何もしないで我慢だ」と言う幹部社員がいましたが、この発言は幹部社員である自分の存在意義を否定しています。

会社の問題に対して「何もしない」ならば、その幹部社員や一般スタッフがいる意味はありません。決められた日常業務のみを行うのは、パート・アルバイトの方々であって、一般スタッフではありません。

3.幹部社員としての矜持

(1)「役得」もあれば「役損」もある

幹部社員は、「役得」もあれば「役損」もあるということを認識しましょう。高い職位に就いているだけで、得する機会が多いと考えているようならばそれは大きな勘違いです。

高い職位になればなるほど重責があるのです。それだけの重い責任、役割を担っているからこそ、たまに得をする機会もあるのです。

自分ばかりが得をすることを求めて、高い職位を望むような人は、会社を良くすることはできないでしょう。

会社や全てのステークホルダーに対して奉仕するぐらいの気概がなければ、高い職位の仕事を全うすることはできません。

(2)幹部社員の仕事

幹部社員は、しばしば、会社の運命、つまりは全てのステークホルダーの運命を左右するような意思決定に関わることがあるでしょう。

その仕事を重いと感じるかもしれませんが、その重さ、辛さや大変さを抱えられることが幹部社員なのです。

私は常々「人は善なれど弱し」と言っていますが、幹部社員には「善でいて、しかも強い」存在になって欲しいと思います。

会社から期待された役割を期待以上に果たすだけでなく、「焼け火ばし」を我慢して持って、なおかつ、部下や周りの全ての人に対しても、ゆとりと配慮を持って接することができる精神的な強さや優しさが、幹部社員には求められます。

幹部社員は、仕事において成果を出すだけでは不十分であることを肝に銘じましょう。部下をしっかりと成長させなければなりませんし、人としても正しく、周囲の人たちの見本になるようでなければなりません。

(3)幹部社員としての矜持

幹部社員には、会社の存続・発展のために、大変ですが非常にやりがいがある仕事が待っています。

それを矜持(プライド)にして、自分を律して謙虚に、会社のため、全てのステークホルダーのために、身を粉にして働いていってもらいたいと思います。

このような働き方は、会社という運命共同体を守る任にある幹部社員全員の高貴なる義務です。

幹部社員は、社会的な名誉や社内における尊敬を得て、一般スタッフよりも金銭的にも優遇がなされます。

しかし、それは高貴なる義務を果たすからこそ得られる正当な対価です。

一朝一夕の努力では幹部社員として活躍することはできません。日々、会社のために、継続して自己研鑽に励んでもらいたいと思います。



本連載は事実を元にしたフィクションです。

株式会社スーツ 代表取締役 小松 裕介
 2013年3月に、新卒で入社したソーシャル・エコロジー・プロジェクト株式会社(現社名:伊豆シャボテンリゾート株式会社、JASDAQ上場企業)の代表取締役社長に就任。同社グループを7年ぶりの黒字化に導く。2014年12月に株式会社スーツ設立と同時に代表取締役に就任。2016年4月より総務省地域力創造アドバイザー及び内閣官房地域活性化伝道師。2019年6月より国土交通省PPPサポーター。

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