企業再生メモランダム・第33回 第9回勉強会 まとめ 後編

「企業再生メモランダム」では、私が、20代の時に、複数の会社の企業再生に従事する過程で作成したメモを題材として、様々なテーマについて記載していきます。

「企業再生メモランダム・第32回 第9回勉強会 まとめ 前編」では、「第9回勉強会 まとめ」と題したメモの背景とメモの中身の一部について記載をさせてもらいました。

後編では、残りのメモの中身について、ご紹介したいと思います。

メモ「第9回勉強会 まとめ」の中身

3.仕事において「考えるということ」

日常業務を(ただ漫然と)こなすだけでは会社を良くすることはできません。私たち一人ひとりが会社を存続発展させるために何ができるか、何をすべきかを考えなければなりません。

(1)戦略的思考

会社を存続発展させるためには、戦略的思考をもって、明確な方向性に基づき、どの分野へいかにして進むかを決めなければなりません。

お金や人など経営資源には限りがあるため、全ての選択肢を実行に移すことは不可能です。つまり「選択と集中」が大事なのです。

そのため、環境の変化や競合企業の動きに対して、自社が最も有利に成長できるような道筋を選ぶことが必要です。

(2)「因数分解」という考え方

第7回「ロジカル・シンキング」において説明したとおり、MECEやフレームワークの概念を用いて、「因数分解」をしなければなりません。論点(問題点)が明確になっていれば、解決方法は見つかります。

会社を存続発展させるためには様々な論点があります。それに対して、モレなくダブリなく、一つひとつを考えていかなければなりません。

また、3C分析、マーケティングの4Pなどフレームワークを用いるのも効率的かつ効果的です。

(3)お客様目線の考え方

第5回「マーケティング」において説明したとおり、日本経済は成熟を迎え、販売志向から顧客志向や社会志向になってきています。そのため、お客様目線で何ごとも考えることが重要になります。

会社を存続発展させるためには、まず会社の生み出す付加価値に対して、お客様が価値を見出してくれなければなりません。

マーケティング発想を持って、① 市場機会を分析し、② 標的市場を選定し、③ マーケティング・ミックス戦略を開発し、④ マーケティング活動を管理していかなければなりません。

4.仕事において「実行するということ」

会社を存続発展させるためには、考えるだけでなく、実行しなければなりません。どんなに優れた考え方だとしても、しっかりと実行までがなされなければ不十分です。

考えたことをスムーズかつミスがなく実行できることは、経営を支える基盤であり、競争力の源泉ともなる非常に重要な分野です。

(1)マネジメントサイクル

マネジメントサイクルを通じて、① 考えるということ 、② 実行するということ、③ KPIを設定してチェックし、④ 問題点の修正を行うという業務改善を図ることができます。

マネジメントサイクルは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(確認)、Action(修正)の頭文字をとってPDCAサイクルとも呼ばれ、一定のサイクルで管理のプロセスが行われることを示したものです。

(2)オペレーション・エクセレント

オペレーション・エクセレンスを誇る会社では、マネジメントサイクル(PDCA)による進化のサイクルが確立しており、オペレーションの品質の向上を継続的に測定するためにKPIの設定がなされ見える化がなされています。

(3)クリエーティブ・ルーティン

自分たちの仕事を進化させること自体が仕事であると捉えられ、その姿勢が哲学や信念のレベルにまで昇華され、根づいていることが大事です。

また、自分の仕事だけを考えるのではなく、「仕事の流れ全体を見渡し、一連の流れをより効率的に、よりスピーディに、そしてより正確にするためにはどうしたらよいか」を企業活動に従事する一人ひとりが常に真剣に考えなければなりません。

5.「人を動かす」

(1)正しい現状認識はできているか?

① 対象会社の現状認識
財務状況、経営環境
② 外部環境の認識
不確実な時代(崩れた終身雇用、安価な労働力)

正しい現状認識ができれば、現状のままではいけないことがよく分かると思います。但し、人によっては、① 楽観的な人(理由はないが、今回も、これからも大丈夫なのではないか。)、② 他力本願の人(誰かがなんとかしてくれる。それは経営者や管理職の仕事。)、③ 現状が正しいと認識している人(日常業務をこなす=仕事であったスタッフには悪意はない。)などがいるため、前提の共有には時間を割いてコミュニケーションをしなければなりません。

(2)今、何をすべきか?

私たちは仕事、会社や働くことについてよく考えなければなりません。現状のままでいけないことが分かっていても、「今、何をすべきか?」、「どうすればいいのか?」を理解している人は少ないと思います。

対象会社を存続発展させることが、私たちの生活をよくすることであり、人生を守るということです。

そのためには正しい経営「会社を存続発展させること」をしなければなりません。

しかし、日常業務をこなすだけでは会社を存続発展させることはできません。私たちは今回の勉強会で身に付けたマネジメント・スキルを活かして、考えて、実行していかなければならないのです。

(3)あきらめずにコミュニケーションを行うこと

正しい現状認識と「今、何をすべきか?」が理解できれば、私たちは必ず変わることができます。そして正しい経営をしていれば、会社を存続発展することができるという成果がついてきます。

会社の変革期において一番難しいことは、「人を動かす」ということです。前述のとおり、人によって、理解度、モチベーションや会社に対するスタンスに違いがあります。

そのため会社組織に帰属する全員が、共通の前提認識と目標を理解するには、多くのコミュニケーションが必要になります。また、理解するということは、人によって時間差があるのです。

一般論ですが、若手スタッフであれば変わることが容易にできるかもしれませんが、ベテランのスタッフが今までのやり方を変えるのは抵抗があるものです。今まで旗振りをしていた人間が、転向して意見を変えるのは、すんなりはいかないのです。そのためベテランのスタッフほど、変化に対して、抵抗をします。頭で変化の必要性を理解していても、感情ではNO!と言ってしまうのです。

私たちは、会社のため、長い目で見れば、全てのスタッフ、パート・アルバイトなど会社を取り巻く全てのステークホルダーのためにも、スタッフ、パート・アルバイトに対して、変化を求めなければなりません。

例え時間がかかったとしても、あきらめずにコミュニケーションを行わなければならないのです。

一番重要なマネジメント・スキルは、単なる知識ではなく、会社を良くしたい、社員の生活を守りたいというこの経営者の意志です。

この意志を持って、会社を存続発展させるために、経営戦略やビジョンを考えて、全てのスタッフ、パート・アルバイトら他者とコミュニケーションし、実行にまで責任を持つ。これがリーダーシップです。



本連載は事実を元にしたフィクションです。

株式会社スーツ 代表取締役 小松 裕介
 2013年3月に、新卒で入社したソーシャル・エコロジー・プロジェクト株式会社(現社名:伊豆シャボテンリゾート株式会社、JASDAQ上場企業)の代表取締役社長に就任。同社グループを7年ぶりの黒字化に導く。2014年12月に株式会社スーツ設立と同時に代表取締役に就任。2016年4月より総務省地域力創造アドバイザー及び内閣官房地域活性化伝道師。2019年6月より国土交通省PPPサポーター。

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