企業再生メモランダム・第47回 なぜ私たちは変わらなければならないか?

「企業再生メモランダム」では、私が、20代の時に、複数の会社の企業再生に従事する過程で作成したメモを題材として、様々なテーマについて記載していきます。

メモの37枚目は7年前に作成した「なぜ私たちは変わらなければならないか?」と題したメモです。

メモの背景

企業再生とは何かと問われば、私は人の再生であると答えます。

特にビジネスモデルが脆弱な時価総額100億円以下ぐらいの企業だと、人材に依る部分が大きいのです。

「普通のサラリーマン」が、「普通」に働けば、「普通」に利益が出ます。これが「普通の会社」なのです。

赤字会社で働く人々には、この「普通」が分からなくなってしまうのです。

こういった人たちに、「普通」の感覚を取り戻してもらう。私はこれが企業再生だと考えています。

確かに経営戦略やマーケティングなどマネジメントにかかるテクニカルな内容も大事だとは思いますが、赤字会社はこういった戦略が実行できないほどに人が弱くなってしまっているものです。

そのため、一人ひとりと向き合って、繰り返し、繰り返し話をして、一緒に仕事や自分と向き合ってもらわなければなりません。その先にある答えが、ケイパビリティです。

ケイパビリティが獲得できれば、企業再生はできたも同然なのではないかと思います。

ここまでくれば、論理的に正しい経営戦略を立案して、実行することができるのです。

正しい経営戦略を実行できれば、経営成績が上がらないわけはありません。

メモ「なぜ私たちは変わらなければならないか?」の中身

1.現状認識の重要さ

(1)今までの経緯

私は今まで数社の企業再生に関わってきました。それらの会社の社員は、① 会社の業績向上を実現しなければ、会社が存続できず、自分たち社員の生活が守られない、② そのため、会社の現状、つまり今の自分たちの仕事そのものや仕事のやり方を変えていかなければならないことは理解しているが、具体的にどのように変えていいか分からないという人ばかりでした。

これらの経験から、私は、この数年にわたり、やる気ある希望者に対して、科学的で合理的な仕事の方法論であるビジネススキル(経営戦略、マーケティング、オペレーション、アカウンティングなど)について教えてきました。

その一部のスタッフの頑張りもあって、東日本大震災など想定外の事態発生による財務状況の毀損もありましたが、経営成績自体はグループ全体で6年ぶりに黒字化を果たしました。

しかし、これはスタートラインに立ったに過ぎません。

毎日のようにテレビで報道されているとおり、日本経済は不確実な時代に突入しようとしています。今まで優良企業と言われていた企業が、明日にはどうなっているか分からない。まさに一寸先は闇です。

対象会社においても、さらに多くの人たちが変わっていかなければいけませんし、もっともっと大胆に変わっていかなければ、この厳しい時代を生き残ることができないのです。

(2)会社を良くすること = 変わろうとする意志 × マネジメント・スキル

標題の数式の中で、変わろうとする意志とマネジメント・スキルはどちらが重要でしょうか?答えは変わろうとする意志です。理由は、まず意志があって、次に方法論があるからです。

高度なマネジメント・スキルを有しているとしても、やる気がなければ話になりません。逆に、変わろうとする意志があっても、全くマネジメント・スキルがないでは話になりません。

但し、変わろうとする意志があれば、マネジメント・スキルを持った人を動かすことができるという真実もあります。一番重要なことは、この意志なのです。

なお、今まで私が作成した他の文書では、この意志のことをリーダーシップと言っています。

では、現在の対象会社において、変わろうとする意志、リーダーシップを持っているスタッフはどれぐらいいるでしょうか?

(3)しっかり現状認識をしなければ、変化が必要な理由が分からない。

対象会社が抱える問題は世間で大企業病と言われるものです。それは一言でいえば当事者意識の欠如、つまり「他人事」です。

例えば、① 決められた仕事だけやっていれば、会社の利益を考えなくとも、自分の給料が出ると思ってしまっている、② いざとなったら誰か他人がやってくれる、助けてくれると思っているなどが挙げられます。

今、対象会社が行っている改革、これから行おうとしている改革は、現状認識さえしっかり出来ていれば当たり前のことです。当たり前のことを言っている、行っている、行おうとしているにも関わらず、まだまだスタッフ自らの意志で変わろうというところまで至っていません。

多くのスタッフは、変化の必要性、つまり、変わらないと生きていくことができないという非常に厳しい現実をまだ理解していないのではないかと思います。改めて、私たちは現状認識をしなければなりません。

2.現状の再認識

私が、この会社に来た時、この会社は倒産の危機に瀕していました。しかし、前社長が本当の経営成績を隠蔽していたことも理由の一端ではあると思いますが、多くのスタッフはその危機を認識していませんでした。

しかしながら、対象会社が倒産の危機に瀕していたのは、前社長の経営戦略上のミスだけが問題だったわけではありません。対象会社は、老朽化する建物のように、スタッフの意識も、日本経済の「失われた20年」と同じように、時代から取り残されてしまったのです。

そこで本文書をきっかけとして、対象会社の置かれている現状、自分たちの仕事の現状の再認識をして、今、なぜ私たちは変わらなければならないかを認識して欲しいと思います。

① 前社長時代の対象会社
② 東日本大地震後の対象会社
③ これからの経済環境
④ 自社分析
⑤ 市場分析
⑥ 競合分析
⑦ 個人の視点(会社とスタッフの関係、スタッフのスキルレベル)



本連載は事実を元にしたフィクションです。

株式会社スーツ 代表取締役 小松 裕介
 2013年3月に、新卒で入社したソーシャル・エコロジー・プロジェクト株式会社(現社名:伊豆シャボテンリゾート株式会社、JASDAQ上場企業)の代表取締役社長に就任。同社グループを7年ぶりの黒字化に導く。2014年12月に株式会社スーツ設立と同時に代表取締役に就任。2016年4月より総務省地域力創造アドバイザー及び内閣官房地域活性化伝道師。2019年6月より国土交通省PPPサポーター。

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