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企業再生メモランダム・第77回 リーダーシップについて

「企業再生メモランダム」では、私が、20代の時に、複数の会社の企業再生に従事する過程で作成したメモを題材として、様々なテーマについて記載していきます。

メモの60枚目は6年前に作成した「リーダーシップについて」と題したメモです。

メモの背景

改めて、一橋大学の名誉教授の伊丹敬之教授の「人は性善なれど、弱し」をご紹介したいと思います。

全ての人は性善であるが、弱い存在であるという価値観です。

一般的に、人は、心にゆとりがあって平常時であれば、周囲の人に怒鳴ったり、八つ当たりをしたりすることはありません。しかし、ミスが続いて自分に自信がなくなってしまったり、急な仕事が舞い込んで慌てふためいてしまったりすれば、周囲の人に怒鳴ったり、八つ当たりをしたり、“性善”ではなくなってしまうのです。

それこそ本連載で登場した社長たちも根っからの悪い人はいなかったと思いますが、弱い人ではありました。

対象会社では弱い人が沢山いたように思います。赤字会社というだけで人は自信を無くして弱くなるのです。

この普通の人たちの弱さを分かってあげる強さがリーダーには必要だと思います。リーダーは、「性善であって、強い」存在でなければなりません。

対象会社の企業再生を振り返ると、当初は、赤字部門の閉鎖と赤字部門の閉鎖に伴う人員整理など経費削減から着手して、確実に損益の改善を行い、スタッフからの信頼を勝ち得ていきました。

経営改善も徐々に取り組む内容の難易度があがっていき、売上向上とオペレーションの改善などについては、スタッフと本気で向き合わなければ実現しないことばかりでした。

途中、スタッフの言葉を鵜呑みにして、勉強会を開催して、マネジメント・スキルの習得などについて時間を割きもしましたが、行き着いた答えは、リーダーシップを発揮してもらって、組織と人をどう変えるかでした。

組織と人が変われば、ケイパビリティを獲得できて、合理的で正しい戦略実行ができるのです。

対象会社の企業再生では、ここまでで5年弱の年月を要しました。

対象会社の企業再生の当初の私は、以前よりリーダーシップという言葉は知っていたものの、正しい意味が理解できていませんでした。

企業再生の過程で、リーダーシップについて真剣に勉強をして、座学と実践を心掛けました。

私が対象会社を離れる際に、伝えたい言葉は何だろうと考えたときに、このリーダーシップについて伝えたいと思いました。

対象会社のためにも、残されたスタッフのためにも、各人がほんの少しだけリーダーシップを発揮してくれれば、会社は引き続きよくなり続けると考えたからです。

正しくリーダーシップを発揮すれば、組織や立場は関係ないですし、世の中と繋がることできます。そして、自分たちの手で未来を描くことができるのです。

メモ「リーダーシップについて」の中身

1.なぜリーダーシップなのか?

(1)全てのスタートは、世のため、人(他人)のためという意志。
※ 対象会社になかったことは、マネジメントだけではなく、リーダーシップだった。

(2)その意志があれば、例えば勉強など、自分で解決できる努力はするし、例えば繰り返しコミュニケーションを図るなど、他人を動かす努力もする。

(3)複雑化する社会。一人のリーダーが万能という時代の終わり。

2.リーダーシップに関する誤解

(1)リーダーとは、常に明るく、エネルギーに溢れ、先頭に立つマッチョな人?
⇒ 「静かなリーダーシップ」、「サーバント・リーダー」など人それぞれ

(2)リーダーシップは、先天的な才能であるという誤解。
⇒ 誰でも身につけることができるスキル。

(3)リーダーシップは、社長であったり役職者であったり、偉い人だけに求められるという誤解。
⇒ 全ての人が対象。立場は関係ない。

3.リーダーとは?

(1)リーダーは、常に高い目標があり、自発的に行動し、計画を立て、実行する。

(2)リーダーの意志が伝わり、リーダーについていくフォロワーがいる。

(3)地位やお金などパワーの力でフォロワーを動かすのではなく、ビジョン、夢や信頼など影響力で自らの意志でフォロワーが動くように導く。

(4)リーダーは、目標と現実を提示して、目標達成のため、自分とフォロワーが、自己認識し、謙虚さを持ち、自分たちの弱い部分と向き合うように促す。
※ 「善なれど弱し」

(5)リーダーは、フォロワーを信じ、支えて、成長させる。

(6)リーダーは、目標のために、最も良い選択肢を選ぶ。
⇒ そのため、他人の指導を受け入れ、自分が導かれることもできる。
⇒ そのため、必ずしも全ての人にとって、良い人ではない。

(7)結果、リーダーは愛され畏れられる存在となる。

(8)目標を達成し成果を出すためには、人の弱い部分と密接な関係のあるお金、地位、マネジメント・スキルなど、極めて人間臭い、現実的な問題と真摯に対峙する。
※ 世の中に変革を望むなら、自らが変革しなさい。
※ それぞれに深い信頼があり、個人が成長し、全員のためになる ⇒ 幸せ



本連載は事実を元にしたフィクションです。

株式会社スーツ 代表取締役 小松 裕介
 2013年3月に、新卒で入社したソーシャル・エコロジー・プロジェクト株式会社(現社名:伊豆シャボテンリゾート株式会社、JASDAQ上場企業)の代表取締役社長に就任。同社グループを7年ぶりの黒字化に導く。2014年12月に株式会社スーツ設立と同時に代表取締役に就任。2016年4月より総務省地域力創造アドバイザー及び内閣官房地域活性化伝道師。2019年6月より国土交通省PPPサポーター。

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