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企業再生メモランダム・第59回 正しいことを行う

「企業再生メモランダム」では、私が、20代の時に、複数の会社の企業再生に従事する過程で作成したメモを題材として、様々なテーマについて記載していきます。

メモの47枚目は7年前に作成した「真実と向き合う」と題したメモです。

メモの背景

このメモの時には、企業再生を初めて3年半が経過し、早いもので4回目の年末を迎えていました。

機能していなかった社長が失踪し、訴訟相手に与するという前代未聞の事件が起きて以来、会社は急速に経営改革に対して一枚岩になっていきました。

ただでさえボトルネックであった会社トップが、誰の目から見ても明らかにおかしな行為をして、スタッフ全員の前から忽然と消えたのです。

多くのスタッフからすれば、彼は同じ釜の飯を食った同朋なわけですが、この一連の行為については、明らかに正義に反した行為のため、誰もかばいきれなかったものと思います。

その後も、その社長が弱い人であった残念なことが判明します。

以前、彼が経理部長時代に、前社長の放漫経営から会社を守ろうと、スタッフのボーナス資金の約5千万円を、彼が個人的に経理をしている会社に隠していた事件が起きたことがありました。

最終的に、このお金は、スタッフのボーナス資金に充てられたわけですが、当時、株主及び経営陣で大問題になった事件です。

それこそ、お金を管理する経理部長が、会社に隠れて、違う会社にお金を振り込んで隠してしまう行為は横領とみなされてもおかしくない行為です。

とはいえ、当時の放漫経営をしていた社長は、経営に興味がなかったからか、この行為自体はおとがめなしとなっていたわけですが、その後、ひょんなことから、追加でおかしな行為が判明してしまったのです。

約5千万円のお金のうち、数百万円が行方不明になっていたのです。

失踪した社長は、社長の地位にありながら、経理業務をしていましたので、彼がいなくなって、後任の経理部長が、過去の帳簿を丹念に調べた結果、この事実に気が付いたのです。

彼は前身の会社においては資金繰りに苦労するなど、会社のためスタッフのために頑張ってきた人だと思います。その事実は変わりません。

しかし、いつの日か、変節してしまって、会社のためが自分のためになってしまったのだと思います。

社長の地位にあったわけですから、いくらでも自分の力で会社を良くすることができたはずなのに、訴訟相手側に与し失踪するなど、どこで道を誤ってしまったのだろうと思います。

企業再生の仕事をしていると、役員の背任、社員の横領、そして、粉飾など不正を目にすることがありますが、そのたびに、人間の弱さを感じずにはいられません。

メモ「正しいことを行う」の中身

正しいことを行うというタイトルで、年内最後の話を記載します。まず、何が正しいことかについて再確認しましょう。

正しいことには、以下のことが挙げられます。
① お客様のために働くこと
② 会社のために働くこと
③ 一生懸命働くこと
④ 利益を増やすこと(売上を最大化して、経費を最小化して、利益を最大化する。)
⑤ 一緒に働く仲間(上司・部下・同僚)を大事にすること

対象会社の過去の歴史を振り返ると、みんな複雑に考え過ぎだったのではないかと思います。

会社は、本来お客様のために、社員のために存在しているにも関わらず、古くは労働組合・非労働組合、最近でも上司・部下、本社・現場、出身地、個人レベルでの好き・嫌い・・・など会社での地位や立場、個人的な感情で、社内政治をしていたのではないでしょうか。

会社で仲間と働くということは、実はとってもシンプルな話です。

それは、人として正しいことを行うことが求められているということです。

これは私の経験則ですが、正しいことを行うと、自分、自分の仲間、自分が所属している会社の可能性が大きく広がります。このことを全てのスタッフに知ってもらいたいと思います。

東日本大震災のときも、半年以上前から赤字部門の閉鎖など、正しいことをしていたから乗り越えることができたと思います。また、経営改善を続けた結果、対象会社も黒字化を果たすことができましたが、これも正しいことをしていたからだと思います。

もちろん、正しいことを行うことは、例え会社として必要であったとしても、個人レベルでは割に合わないと思ったり、非常に苦しかったりする場合もあります。

正しいこととは、みんなが嫌がる仕事かもしれませんし、自分の弱さと向き合わなければ達成できないことかもしれません。

しかしながら、正しいことを行うことによって、新しい可能性が広がるという前向きな事実にも目を向けてもらいたいと思います。

対象会社は、社会性のある素晴らしい事業を手掛けていると思います。

来年はさらに、スタッフの一人ひとりが正しいことを行うように心掛けて、可能性を広げていってもらいたいと思います。



本連載は事実を元にしたフィクションです。

株式会社スーツ 代表取締役 小松 裕介
 2013年3月に、新卒で入社したソーシャル・エコロジー・プロジェクト株式会社(現社名:伊豆シャボテンリゾート株式会社、JASDAQ上場企業)の代表取締役社長に就任。同社グループを7年ぶりの黒字化に導く。2014年12月に株式会社スーツ設立と同時に代表取締役に就任。2016年4月より総務省地域力創造アドバイザー及び内閣官房地域活性化伝道師。2019年6月より国土交通省PPPサポーター。

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