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企業再生メモランダム・第18回 組織と日常業務について

「企業再生メモランダム」では、私が、20代の時に、複数の会社の企業再生に従事する過程で作成したメモを題材として、様々なテーマについて記載していきます。

メモの13枚目は9年前に作成した「組織と日常業務について」と題したメモです。

メモの背景

対象会社は、経年劣化によって、ビジネスモデルが老朽化して、組織が硬直化している状態でした。

このような状況下で、どのようにすれば「普通の会社」のようにマネジメントサイクルがまわるようになるのか。これが課題でした。

企業再生の仕事をしていると、赤字会社に勤める人々の過去の栄光の話を聞くことになります。

彼らは皆、「昔は良かった。」と口を揃えて同じようなことを言います。

当時、対象会社の幹部社員でも、二度と戻ることのない20年以上前のバブル期の話を未だにしている人が多くいました。

光が当たれば影ができます。そして、その光が強ければ強いほど、影の部分は濃くなって表れるのです。

企業再生をする会社の多くは、社歴が長い会社だったり、一定の規模を有している会社だったり、会社が赤字で傾いているとはいえ、ビジネスモデルはしっかりしています。

しかし、このようにビジネスモデルがしっかりしている会社で勤めるスタッフたちの多くは、作られたビジネスモデルを「まわす」人々でしかなく、残念ながら、モチベーションもスキルも低いことが多いのです。

冷静に考えれば、優れたビジネスモデルにフリーライドしていることぐらい自分たちでも分かりそうなものですが、時々、不幸なことに「自分は優秀である。」と勘違いするスタッフが生まれてしまいます。対象会社でも、地元で財界活動に勤しむ幹部社員の一人は、地域社会からも「勘違いぶり」を失笑されていました。

そのため、そのビジネスモデルが経年劣化した際に、自分たちでビジネスモデルを立て直したり作り直したりできる人がいないということもよく起こり得ます。

逆に考えれば、このような「弱い人たち」だけでもビジネスを回せるほど、ビジネスモデルが強かったとも言うことができます。

また、多くの場合、人間は一度、地位が上がって、楽をしたり贅沢をしたりしてしまったら、元に戻ることはできないのです。これは破産しても、なお、他人のお金でシャンパンを開け続ける有名人と同じです。

一度、スポットライトを浴びてしまったら、自意識過剰となり、元に戻るには勇気が必要です。一度でも光を浴びると、今までいた場所に戻ることにさえ、酷く怯えることになるのです。

この勇気がない「弱い人たち」は、石にかじりついてでも、他人に迷惑をかけてでも、地位にしがみつくことになります。

私も年齢が不惑近くなって思うのですが、努力をしない人が自分の実力以上の地位や名声を望むことは、罪深いことだと思います。

人生は長い勝負です。光が当たれば影もできることを理解して、初心を忘れずに、不断の努力を続けなければなりません。

メモ「組織と日常業務について」の中身

スタッフの責任と権限を明確にして、マネジメントサイクル(PDCA=Plan(計画)、Do(実行)、Check(確認)、Action(修正))という改善活動を日常業務に組み込むことが必要となります。

<決定しなければならない事項>

1.仕事の範囲の決定

部署が取り組むべき仕事をヌケなくモレなく把握する必要があります。本来ならば取り組むべき仕事が現在仕事として認識されていない場合や、部署間のはざまで宙ぶらりんになってしまっている仕事などは注意する必要があります。

2.業務の範囲の決定(業務分掌=ヨコ)

1で決定した仕事を、部署内において、それぞれ担当を決定する必要があります。

3.管理職の権限の決定(職務権限=タテ)

管理職と一般スタッフの職務権限を明確にする必要があります。

4.重要業績指標(KPI=Key Performance Indicator)の決定

業務を行った成果である業績指標を決定します。例えば、営業部門の場合は売上が重要業績指標になりますが、管理部門の場合は売上は重要業績指標になりません(なぜなら売上はないため。)。それぞれの部署が、その業務の直接の成果となる重要業績指標を設定しなければなりません。

※ 対象会社は、他社と比較して、定量的な数値指標が少ない会社です。そのため、定性的、感覚的な話によって、意思決定をしていることが多い状況でした。また、業務と直接連動していない業績指標を設定しているため、業績指標が業務の改善に役立っていませんでした。

5.マネジメントサイクルの実行

Plan(計画) → Do(実行) → 4で決定した重要業績指標でCheck(確認) → Action(修正)を繰り返します。このPDCAというマネジメントサイクルが確立できれば、4で決定した重要業績指標の数値を良くすることが日常業務となります。日常業務の中に、改善活動を組み込むことができることになります。

このように、会社を良くするために、日常業務においても、仕事の範囲、スタッフの責任と権限、重要業績指標を決め、マネジメントサイクルを確立することが必要です。



本連載は事実を元にしたフィクションです。

株式会社スーツ 代表取締役 小松 裕介

 2013年3月に、新卒で入社したソーシャル・エコロジー・プロジェクト株式会社(現社名:伊豆シャボテンリゾート株式会社、JASDAQ上場企業)の代表取締役社長に就任。同社グループを7年ぶりの黒字化に導く。2014年12月に株式会社スーツ設立と同時に代表取締役に就任。2016年4月より総務省地域力創造アドバイザー及び内閣官房地域活性化伝道師。2019年6月より国土交通省PPPサポーター。

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