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業界·企業研究②「3つの視点で業界構造を理解しよう」

始めに

お忙しい中、本稿を読んで頂きありがとうございます。

 最後まで読み終わったら、既読の証として♡マークを押していただけると励みになります。宜しくお願い致します。

 本稿のテーマは、業界·企業研究②「3つの視点で業界構造を理解しよう」です。
本稿と先日掲載した業界·企業研究①業界·企業を知るなら、営業利益率を見ろ!〜知ってほしい会計知識〜は、関連性があるので、2稿セットで読んで頂けると理解深まると思います。よろしくおねがいします。


業界·企業研究①の復習

 まずは、前稿のおさらいをしたいと思います。

「業界·企業研究の理解を助ける補助線」として、
「決算書において企業活動の結果である利益率(営業利益率)を調べ、その原因を逆算して市場規模·コスト·シェア割合の3つ視点から分析すること
をお伝えし、前段の「営業利益率の重要性」と「利益についての会計知識」について説明させて頂きました。

そして、「なぜこの業界·企業は、利益率が高いのか」を後段にあたる部分を使って説明するといったところ終わっており、本稿はその続きとなります。


注意事項

 まずは、注意事項を説明します。利益率の定義についてです。
利益率=利益額/売上という式で成り立ちます。
つまり、「高い利益率」の要因には下記の2パターンが考えられます。

  1. (分母の売上額が同じなら)分子の利益が大きい=利益率が高い

  2. (分子の利益額が同じなら)分母の売上が少ない=利益率が高い

つまり、利益率を比較する際は、「売上額が同等の業界同士(パターン1)」or「利益額が同等の業界同士(パターン2)」で比べるという前提条件があります。
「業界・企業の構造を理解する」ことを趣旨として書いており、単純化のため、本稿ではパターン1のみ取り扱います。ご了承ください。
したがって、これ以降「利益額≒利益率」と捉えて頂いて差支えありません。


分析する前に

分析方法の詳細を説明する前に利益額について確認します。
利益額=得たお金-出ていったお金で計算されます。
業界としてこの式を考えると、
業界全体の利益額=業界全体の売上-業界全体のコストと言い換えられるでしょう。
つまり、「業界全体の売上が大きい業界」や「業界全体のコストが小さい業界」が利益率が高い業界ということになります。
まずは、「業界全体の売上が大きい業界」について考えていきましょう。


視点①市場規模~業界全体の売上が大きい~

 「業界全体の売上が大きい業界」とは、「市場規模の大きな業界」ということになります。市場規模とは、その業界で行われた取引額。つまり、入ってくるお金と考えてもよいでしょう。入ってくる金額が大きければ、当然利益率も大きくなります。

下記に業界別の市場規模ランキングを掲載しておきますので、参考にしてみてください。

市場規模について理解して頂けたところで、もう一歩踏み込んで、市場規模を分解してみます。
分解すると、市場規模=単価×販売量と式を変換できます。
つまり、単価 or 販売量が大きくなれば市場規模も大きくなるのです。
「単価」と「販売量」についてそれぞれ説明します。

単価~参入障壁が単価も守る~

説明するまでもないですが、単価とは「製品・サービスの1個当たりの値段」です。
企業は単価を引き上げたいのですが、相当な理由がない限り難しいです。皆さんも「値上げ」って嫌ですよね。私が以前働いていた会社では、営業部員の仕事で値上げ交渉が一番嫌な仕事だとされていました。

しかし、値下げは簡単に起こってしまいます。買う側にとっては、製品・サービスの品質が同じなら安い方が良いに決まってます。
売る側から見ても、単価を下げたとしても、競争相手の企業のシェア奪うことができれば企業の売上や利益は増加します。いわゆる"値下げ競争"です。

つまり、単価では値下げ競争に巻き込まれないこと=業界に競争相手が少ないことが重要になってきます。
では、競争相手の少ない業界の特徴とは、何でしょうか
それは、「参入障壁が高い」ことです。

参入障壁とは、その市場・業界に新しく参入する難易度を指します。
参入障壁が高ければ、その業界のビジネスを簡単に行うことができないので、競争相手が少なくなります。

参入障壁にはいくるか種類があり、資金面や技術面などがあります。
例えば、資金面での代表例は素材業界です。
私の住む大分県には日本製鉄の巨大な工場があります。大きさでいえば、街と形容するのがしっくりくる程の大きさです。そのような工場を建設するには、数千億円が必要になるでしょう。「よし、鉄の工場を作ろう!」と思っても、相当な資金力がある超大企業でなければ、そんな大金を搔き集めるのは不可能でしょう。

技術面の代表例には、自動車業界が挙げられます。
日本の自動車メーカー持っているガソリンエンジンに関する技術・データ・ノウハウは、他国の自動車メーカーが何十年かかっても勝つことができない程の差がついていると言われています。
今からそんな業界に新たに参入しても既存の自動車メーカーに勝てないでしょうから、競争相手も増えることがありません。

逆にネット業界は参入障壁が低い業界です。
例えば、YouTubeを始めようと思えば、スマホ1台で「撮影・編集・投稿」といった全ての工程を行うことができます。そのため、競争相手も多くなります。TVで「この方は、若者に大人気の有名youtuberです。」と紹介されても、私はほとんど知りません、、、

販売量~人口・趣味趣向・社会の変化などで変わる~

 何かを販売するには、当然買ってくれる人が必要になります。強い言い方をすれば、買ってくれなければ、どんな製品・サービスもゴミ同然です。

需要にもいくつか種類がありますが、「人口のよる増減」と「趣味嗜好や社会の変化による増減」を紹介します。

まずは、「人口による増減」から説明します。
少子高齢化が進行し、人口が毎年減少している現代の日本では、物を買う人がいないわけですから、多くの業界で需要減が見込まれています。
このように人口が減少することで経済が停滞・衰退することを「人口オーナス」といいます。(人口が増加し、経済が発展することは「人口ボーナス」)
そのため、買ってくれる人を求めて大企業は、人口増加が見込まれる東南アジアなどに進出しているのです。

続いては「趣味嗜好や社会の変化による増減」です。
コロナ前後を比べればイメージしやすいでしょう。コロナ前は、みんなで集まって活動していたのに、今やリモートがスタンダードになったという経験をされた方も多いのではないでしょうか。
飛行機業界も国内の出張需要がコロナ前の水準に戻ることはないかもしれません。
逆に日本国内で需要増が見込まれる業界ももちろん存在します。

自分が気になっている業界の需要がこれから伸びるのか調べてみてください。


視点②コスト~業界全体のコストが小さい~

ここからは、「業界全体のコストが小さい業界」について考えていきたいと思います。
そのために数あるコストの内、「製造原価」・「販売費」の2種類に絞って説明したいと思います。

製造原価~作るコスト~

製造原価とは、その製品を作るのにかかった費用を指します。
パンを例にすれば、「小麦粉やバターなどの材料費」・「パンを作る人の人件費」・「水道光熱費などの経費」が挙げられます。

製品原価という言い方とは少しずれてしまいますが、サービスを作る費用という面では「金融業界」や「ソフトウェア業界」のコストは安くなります。

金融業界とは、「お金がお金を生む業界です。」
銀行が融資するときを考えると、お金が銀行から借りたい人に動いただけで、利息という収益を生み出します。何か材料などを消費したわけじゃないですよね。それゆえに金融機関の給料は、高いのです。

ソフトウェア業界も同様に考えられます。
最近では、SaaSと呼ばれる、インターネット上でサービスを提供するビジネスも増えてきました。音楽の定額聞き放題サービスであるspotifyをイメージして頂ければ大丈夫です。
この種のサービスを利用し始めるときは、サービスへの使用許可を与えてもらうだけですから、製造原価は安くて済みます。

販売費~売るコスト~

販売費とは、作った製品を販売するための費用です。
よく「販売費及び一般管理費」とセットにされることが多いですが、今回は販売費のみに注目します。
販売費の代表例は、営業部に関わる費用やCMなどに代表される「広告宣伝費」です。

販売費が少ない業界といえばBtoBビジネスの業界が挙げられるでしょう。
BtoBとは、ビジネスtoビジネスの略で、企業相手にのみビジネスを行っている会社のことです。(消費者相手のビジネスは、BtoC)
つまり、我々が日常的に耳にしない企業であり、地味な企業と言えるでしょう。

就活では、食品メーカーなど普段から耳馴染みのある会社に興味を持つ人が多いと思います。
しかし、地味というのは、強みです。
一億人以上いる一般消費者に宣伝するのに対して、関係のある企業にだけ宣伝すればよいのですから、販売費は圧倒的に少なくて済みます。
この地味さが企業の利益を生み出すのです。


視点③シェア割合~分配方法~

ここまでで「業界全体の売上が大きい業界」と「業界全体のコストが小さい業界」の説明を通して、「利益率が大きな業界」とはどんな業界かお話してきました。
最後に、業界の中身を分析するために視点③シェア割合が必要になってきます。
「利益率が大きな業界」とは、例えるならば「業界にどのくらいの宝があるか」と考えてもいいかもしれません。
これからお話するシェア割合とは、「宝の分配方法」です。

簡単な例を出しましょう。業界Aと業界Bがあったとし、それぞれの業界シェア割合が下記の通りだったとします。

  • 業界A:1位70% 2位15% 3位10% その他5%

  • 業界B:1位40% 2位30% 3位25% その他5%

どちらも1~3位が業界の95%を占めています。
しかし、業界Aの方がBに比べて配分に偏りがあります。
なぜこのようなことが起きるのでしょうか。

シェア割合の偏りが大きい業界

偏りの大きな業界とは、1社が市場を占拠しやすい業界ということです。

例えば、お笑い芸人の世界を考えてみましょう。
お笑いの賞レースであるM1グランプリの2021年大会への参加者は6021組だそうです。多くのアマチュア漫才師がいるにしても、漫才は一人ではできませんから、日本には最低でも1万人以上のお笑い芸人がいることがわかります。
しかし、貴方は何人の芸人さんの名前を言えるでしょうか。調べることなくスラスラと100人言えたら凄いと思います。我々は、毎日のように芸人さんを見ていますが、限られた僅かな芸人さんがメディアを占拠してるといえるでしょう。

他にもアメリカの”GAFAM”や中国の”BATH”に代表されるようなネット業界も1社が市場を占拠しやすい業界でしょう。
オンラインであれば世界中のサービスが使えるため、我々は常に最も優れたサービスを利用します。
今や”GAFAM”と”BATH”によって世界が支配されたといっても過言ではない状態になっています。

このような「1社が市場を占拠しやすい業界」というのは、競争が激しく、業界2位であっても決して安心できません。2位以下の企業に関しては、「1位を追い抜くことができるのか」もしくは「1位ができないことをやっているのか」という点を調べる必要があります。

シェア割合の偏りが小さい業界

逆に偏りの小さい業界とは、1社が市場を占拠できない業界ということです。

国際規格が決まっている素材や小麦などの「差が付きにくい製品」の販売を行っている業界が多いです。
このような規格が決まっていて、どの会社から買っても違いがあまりない商品のことを「コモディティ商品」と呼びます。

「1社が市場を占拠できない業界」というのは、それほど競争が激しくなく、安定している業界といえます。
しかし、裏を返せば、差別化が難しく、大幅な成長も見込みにくいともいえます。

以上で、3つの視点の説明は全てとなります。
この3つの視点をスタートとして業界・企業分析をすることで、今までよりも深く理解することができるのではないでしょうか。

前稿と本稿が皆さんの業界・企業研究の補助線になることを切に願っています。


最後に

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