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信じられる嘘のつき方

この自粛期間の始まり頃、田村由美さんの漫画『ミステリと言う勿れ』を読破した。作品自体が面白いことは言うまでもないのだが、何より、この作品の随所に素晴らしい言葉が仕込まれている点を紹介したい。

そのなかの一つが『真実と織り交ぜて嘘をつくと、相手は信じやすい』という言葉。なるほどなーと思うと同時、これは見出しにできるなと(笑)。そんなわけで早速タイトルには、この言葉を引用しているのだけど、これは引っかかりに持ってきただけの話で、この投稿の本命は別にある。

特筆したいのは、物語中で扱われるマルクス・アウレリウス『自省録』(岩波文庫)という作品。本当は哲学者になりたかったローマ皇帝による人生訓』なんて文字帯が付いていて、さらに興味そそる。田村由美『ミステリという勿れ』で扱われた言葉は以下の文章。

何かする時いやいやながらするな。
利己的な気持ちからするな。
(中略)
君の考えを美辞麗句で飾り付けるな。
余計な言葉やおこないをつつしめ。
明け方に起きにくい時には、
次の思いを念頭に用意しておくが良い。
「人間のつとめを果たすために、私は起きるのだ」
(中略)
まだぶつぶついっているのか。
それとも自分という人間は夜具の中に
もぐりこんで身を温めているために
創られたのか。

いくつか引用されている言葉のうちの一つがこれ。皇帝である人が生活していく上で出た自省の言葉が、超一般人の私にも共感できるだなんて。人間誰しも同じようなことにつまづき、成長するのねなんて思ってしまう。この書物を漫画に引っ張ってくる田村さんのセンスが素敵。素晴らしい漫画の一部に落とし込まれているからこそ、楽しんで学べる。実際に『自省録』を読んでみたいけど、田村さんのフィルターあってこそ響いた言葉でもあると感じる。まあでも自粛期間、この作品を手にとる余裕があったらいいなあ。なーんて。最後にちょっと、真実と嘘を織り交ぜつつ嘘をついてみましたよ(笑)。

『自省録』を読んでみようかな、なんてちょっとカッコいいよね。だけど本当に読みたいのは『ミステリと言う勿れ』の続きだし、『BASARA』と『7SEEDS』も読みたい。最近活字だけだと頭に入らないから、漫画しか読めない。あー、なんて奥ゆかしさがないのかな!こんなんだから、嘘もつきたくなりますよね。自分をよく見せたるための嘘は、甘美だなあ。

#読書感想文  #ミステリと言う勿れ #田村由美 #漫画 #哲学 #心理学

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