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異世界の島 第二章(第五話 住処探し)

「そういえば悪魔とクローバーっていうのはね、春野家に代々伝わる伝説にも繋がっていて…」
風花が口を開いた。4人が紙を見つけた時から、みんな考え事にふけり黙り込んでしまったのだが、何か思い出したのだろうか。

「昔、日本には名家の四家があって、国の裏の中心的存在だったらしいの。「春野」「夏井」…私と烈の家の名は残っているけれど、二つの家の名前は色々あって忘れられてしまったんだって。その四家は新しい時代を作ろうと企んで、『悪魔』と呼ばれる存在と契約したの。でもその代わり…」
「その代わり?」
烈が問う。風花は何か苦いものを噛んだような顔をすると、首を振った。
「…忘れちゃった。何か代償があったのかな。でもただの伝説だし。」
「その代償がこの世界だとしたら辻褄が合うかも知れないな。もしかしたらこれまでにもお前らのように先祖の血を引く奴らがこの世界に飛ばされて、その方法によっては私たち一般人も巻き込まれていたのかもな。」
「あ、そうか!地球で新しい時代を、と悪魔に契約したときに、その家の子孫に試練をさせるという対価を求めたのか…。」
大地と烈が風花の言葉を聞いて考えを話す。私は頷いた。
「この世界が別の世界だってことがほぼ確実な感じだから、なんでも考えられちゃうね。紙に書かれてる1年っていうのは気になるけど、もしかしたら何かの力が与えられて元の世界に戻れるかも知れないな。とりあえず、家を作ることを先に考えよう?」
「私もそう考えているところだ。簡単な家の作り方は知っているが、岩の合間に洞窟とかがあればそれを利用したい。烈、あの本を見せてくれるか?」
大地が近くにある重そうな岩にもたれかかりながら言った。私はあることに気づく。この岩は、ホルンフェルスとチャートでできている。ざらざらしているところはとても痛そうだが、チャートの部分は肌触りが良さそうだ…

「どーぞ」
烈は渡すと同時に座り込んだ。疲れた顔をしている。風花がその頭をポンと叩いた。
「烈も大変だよねぇ。教えてもらわなかったんだし。…ぎゃああ」
風花が座った所には何かの虫がいた。飛び退いて烈にくっついた風花は息をつく。そして大地が本を見ている中、こちらに顔を向けた。烈が迷惑そうな顔をしている。
「おい、くっつくな」「あのさ、思ったんだけどー。ここどんな動物がいるのかもわからないし私すっごい怖いのにさ、みんなどうしてそんなに落ち着いてるの?」
「そう…だね。実は私は普段から毎日山登りをしているんだ。その中で熊や蛇、猪とかと会っていたから怖くないのかな」
(むしろ怖いのは人間の方かも知れない。だめだ、こんな感情は…)

「お、見つけたぞ。『洞窟の活用方法』?ふむふむ…」
私は大地さんがいつのまにか狩っていたウサギのようなものの耳を掴んだ。なんで荷物の中に入っているんだ。
そんなこんなで、私たちは石の隙間を見つけることに成功した。一番幼い風花にこの地道な作業はやはりきつかったのか、座り込んでしまった。壁は一面黒いホルンフェルスで、太陽の光が当たってキラキラしている。いつのまにか太陽は上の方に移動していた。どうやら、昼のようだ。




彗星です。異世界の島…全然進まなかったのですが、構想だけはしっかり考えていたので久しぶりに投稿できました。ゆっくり島の生活が進んでいくのを、暖かく見守ってください…………