見出し画像

日光金谷ホテル✶旅行記

 北千住駅から特急リバティに乗って1時間40分。東武日光駅に到着する。改札を出ると空気の良い山の景色が広がっている。そこから緩やかな登り坂を10分程度、100m分標高が上がった先に、日光金谷ホテルはあった。
明治6年開業。現存する最古のリゾートクラシックホテルの入り口に向かうと、ホテルマンの若い女性が文字通り駆けつけてくれ、荷物を持ってくれた。古い回転扉を抜け、チェックインを済ませる。まず感じたのは天井の低さで、ホテルマンの方がおっしゃるには、もともと、現在の2-3階がホテルだったものを、後から掘り下げてこの1階を作ったために、天井が低くなったのだそうだ。

ホテル全体を包む暖かさは、この天井が宿泊客を優しく包んでくれることに起因する気がする。
宿泊した別館は昭和10年築。金谷ホテルの中では第2新館に次いで2番目に新しい棟とのことだが、それでもそこには80年以上の歴史がある。お部屋は窓が二面についたコーナーツイン。
窓にはすりガラスと襖がついており、閉め方のパターンによっても部屋の印象が変わる。
部屋はすでに心地のよい暖かさで、暖房はスチーム暖房が使用されていた。

チェックインしたのは16:00。冬至近くの師走は日の入りも早く、17:00からのホテルツアーに参加する頃にはすっかりお日様は隠れて夜の様相が広がっていた。
ラウンジいっぱいに集まった宿泊客の様子がアットホームで、居心地がいい。
金谷ホテルの歴史を語るベテランホテルマンさんは家族の話をするかのように誇らしげで、聞いているうちに微笑ましい気持ちになってくる。

本館、新館、別館、第二新館と、時代を追うごとに増築され、その度に変化していったホテルの歴史を、肌に感じて味わうことができた。
1時間ほどのホテルツアーが終了すると既に夕食の時間が迫っていた。
ダイニングの場所は、ホテルが2階建だった頃にはエントランスとして使用されていた場所だそうだが、あまりその面影は無い。

いただいたのは日光虹鱒の金谷風ディナー。
カトラリー一つ一つに、金谷ホテルのトレードマークが印字されていてさりげなく可愛い。
メインの虹鱒だが、尾頭付きで皿からはみ出しそうである。
味付けはかなり和風。さすが伝統のフレンチ。
ウェイターさんが腕に重そうな銀のウォーターピッチャーを下げていて、こちらも年代モノのようだった。

夕食を終えて、本館から別館へと移動する。
ちょうどクリスマス前ということもあり、ホテル前の大きな木にイルミネーションで光っていた。
ちょうど月も明るく、いい気分。

猫脚の浴槽が備えられた浴室も、寝室と同じくスチーム暖房が入れられていて、部屋のどこにいても暖かく、ぬくぬくと眠った。
翌朝の朝食は、本館の食堂から少し突き出したバルコニー的なテーブルで。
冬晴れの日差しの中オムレツにナイフを入れる瞬間は、クラシックホテル滞在の醍醐味と言える。
コースでサーブされる夕食よりも、なんだか優雅な気持ち。焼きたてのパンとともにホテルの外の景色を眺めながら、うっとりとした時間を過ごす。

旅の最大の目的を果たしたところで、ホテルの外を探索してみる。すぐ下に流れる大谷川の川沿いから朱塗りの美しい神橋が見える。国の重要文化財で世界遺産にも登録されたこの橋には神秘的な伝承がある。
奈良時代の末に勝道上人が日光山を開く際、大谷川の急流の前で立ち往生していると、深沙王が現れ青と赤の2匹の蛇を放ち、その蛇の背中から生えた山菅が橋となったそうだ。そんな由来からこの神橋は「山菅の蛇橋」とも呼ばれる。
深沙大王の御加護によって、良縁、橋渡しのご利益があると言われる神橋は、日光のシンボルだ。
チェックアウト時間ギリギリの11:00まで近場を散策して、ホテルを出る。ホテルのすぐ横のお蕎麦屋さんの山菜そばでお腹を満たし、行きは登り坂であった一本道をゆっくりと下っていく。
帰りの電車まで時間があったので、到着時に気になっていた駅前の金谷ホテルベーカリーに寄る。朝食でいただいたホテルパンや、レトルトカレーも売っていて、帰りの電車で食べる用に購入。
北千住まで一直線の東急リバティに再び乗り込み、夕方16:00には帰路に着いた。

tyl✶

#旅行 #日記 #旅行記 #エッセイ #日光 #クラシックホテル #旅 #日光金谷ホテル

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?