「Sui彩の景色」Sui≒Kanzaki

2020年7月より活動を開始した“水彩画のように淡く儚い歌声を響かせる 音楽ユニット”…

「Sui彩の景色」Sui≒Kanzaki

2020年7月より活動を開始した“水彩画のように淡く儚い歌声を響かせる 音楽ユニット”SUIRENのヴォーカルSuiであり Sui≒Kanzakiとしてのソロプロジェクトも2024年春始動!

最近の記事

Sui彩の景色 #15 -臨界-

-人物紹介- 小堀…高校入学後に結成したバンドのベーシスト。かなりベースが巧い。 土田…同じ高校のドラマー。同じ中学出身だがドラムが叩ける事は当時知らなかった。 高校内でメンバーが見つからなかった為他校のバンドに加入し活動していたが、江崎の構想する新バンド結成の為にSuiと江崎を引き合わせる。 江崎…他校のバンドマン。他校のバンドでメインギターのパートを担当していたが自らがやりたい音楽性のバンドを構想しSui達と共に新バンド結成。 榊原...前身のバンドのギタリス

    • Sui彩の景色 #14 -春の息吹-

      -人物紹介- 小堀…高校入学後に結成したバンドのベーシスト。かなりベースが巧い。 土田…同じ高校のドラマー。同じ中学出身だがドラムが叩ける事は当時知らなかった。 高校内でメンバーが見つからなかった為他校のバンドに加入し活動していたが江崎の構想する新バンド結成の為にSuiと江崎を引き合わせる。 江崎…他校のバンドマン。他校のバンドでメインギターのパートを担当していたが自らがやりたい音楽性のバンドを構想しSui達と共に新バンド結成。 僕の生まれ育った家は丘の上、車1台通るの

      • Sui彩の景色 #13 -代謝-

        -人物紹介- 大野…中学時代文化祭で共にライブをしたバンドメンバー。別の高校に進学し現在は土田と共にバンドを組んでいる。 榊原…高校入学後に結成したバンドのギタリスト。同じ中学出身ではあるが中学時代はギターが弾ける事を知らなかった。高校生らしからぬ演奏スキルを持っておりかなりの技巧派。容姿端麗でわがまま。 小堀…高校入学後に結成したバンドのベーシスト。実はかなりベースが巧い。 土田…同じ高校のドラマー。榊原同様に同じ中学出身だがドラムが叩ける事は当時知らなかった

        • Sui彩の景色 #12 -荒療治-

          「楽器も弾けないボーカルなんかロックバンドにいらない。」 榊原は僕にそう告げた。 小堀は黙ったままだ。 大事な話の時はいつもそうだ。 僕と榊原が揉めて小堀をはじめとした他のメンバーは黙っている。 というよりも榊原に物言い出来るのが僕しかいないと言った方が正しい。 だから、小堀以外の彼らは去ってしまったのだろう。 僕達のバンドには得体の知れない閉塞感が漂っていた。 外はもう木枯らしが吹いて肌寒い季節になっていた。 榊原と僕は入学して間もなくバンドを組んでメンバーを募集

        Sui彩の景色 #15 -臨界-

          Sui彩の景色 #11 -魅惑-

          始まりは真っ白だ。 何の色も線もない。 そして、孤独で不安で寂しい。 新しい環境に飛び込んで、新しい何かに挑戦しようとする度に、人は結局たった一人なのだと思い知らされる。 でも、心のどこかで。 自分だけではないのだと信じていたりもする。 自分と同じ様に。独りなのだと気付いて歩き始めた者がいること。 そして、いつかは並び立つことができるということ。 仮に支え合わなくとも。 1人ではないのだと思わせてくれる誰かが、自分と同じように存在するのだと。 軽音楽部に入部した新入部員がま

          Sui彩の景色 #10 -箱庭-

          入学早々に先輩バンドのライブを観て打ちのめされながらも、部活動紹介のレクリエーションの次の日には軽音楽部に入部届けを出しに行った。 入部届けを出しに行く道中、同じ中学校から入学した土田に会った。どうやら僕と同じく軽音楽部に入部希望らしい。 中学校時代は何度か話した事はあったが、クラスも部活動も違ったので顔見知り程度の間柄だ。 土田が軽音楽部に入部希望だというのは正直意外だった。 「今年の入部希望者は凄く多いらしいぞ。Suiはボーカル志望だよな?文化祭のライブは良かった。俺とバ

          Sui彩の景色 #10 -箱庭-

          Sui彩の景色 #09 -遭遇-

          厳しい冬を乗り越えて、自然の芽吹く匂いがする。 この季節が来る度に僕の心は高揚する。 新しい何かが始まる予感がするからだ。 この春、僕は市内のとある高校の門を叩いた。 思えば小学校、中学校は自分で選択した訳ではなく、その地域に住んでいるからそこに通うというものでしかなかった。 だが、今回ばかりは違う。 目的があってここにきたのだ。 だからこそ、例年の春よりも期待に胸を躍らせていた。 僕が進学した高校はかなり自由な校風だった。 制服はなく私服での生活で、携帯電話の持ち込みも可

          Sui彩の景色 #09 -遭遇-

          Sui彩の景色 #08 -祭囃子-

          Sui彩の景色 #08 -祭囃子- 夏休みも終わり、いよいよ文化祭本番が近付いてきた。 何度かの練習を経て僕達は人前で演奏出来る手応えを感じ始めていた。 文化祭の準備期間は、学校全体が浮き立つ。 クラス毎の出し物や、クラス対抗の合唱コンクール等があり3年生にとっては受験前最後の大きなイベントであり、そして、これが中学校生活最後の文化祭。 自然と熱が入るというものだ。 文化祭にはクラスの出し物や合唱コンクールの他に、有志を募って何組かだけ全校生徒の前でフリーのパフォーマン

          Sui彩の景色 #08 -祭囃子-

          Sui彩の景色 #07 -微熱-

          「ねぇ、バンドやろうよ。」 その言葉をきっかけに小学校の頃からの仲で同じ部活の大柄な男、大野(仮名)と共に文化祭に向けてバンドを組む事になった。 バンドをやるとなればまずはメンバー集めだ。 そこで小学校時代、僕と同じく合唱部に所属していてギターが弾けるという噂のあった白石(仮名)に声をかけようという話になった。 そもそも大野は白石とバンドをやろうと話をしていたらしかったのだが正直この辺りの細かい話はうろ覚えだ。 とにかく白石は絶対必要だと大野は言った。 白石も大野

          Sui彩の景色 #06 -前口上-

          先輩後輩という関係は不思議だ。 先に産まれたか後に産まれたかで、敬われる立場と敬う立場が決まってしまうのだから。 そんな不思議な上下関係の世界に僕も足を踏み入れる事になる。 それまで〇〇君とか〇〇ちゃんとか、年齢が離れていても仲が良ければあだ名や呼び捨てで呼んでいた。 ところが小学校を卒業して中学校に入学すると、数年前まで友人の様な関係だった同校生達は完全に〝先輩〟になっていた。 そして、中学では着る物の自由もなかった。 男子は学ラン、女子はブレザーを着なければならず、何

          Sui彩の景色 #06 -前口上-

          Sui彩の景色 #05 -壇上-

          何度目かの春を迎え、気付けば僕も小学校生活最後の一年を迎えていた。 部屋の隅っこで一人遊びをする事も無くなり、休み時間には友達とサッカーをするような活発な男の子になり、兄と比較されることもすっかり 気にならなくなった。 むしろ、優等生の兄とはどんどんかけ離れていくことを 楽しんでいたようにも思う。 僕は僕だ。 そして、僕には歌がある。 それだけで良かった。 合唱部の活動は相変わらずで、楽しく、ハードだった。 先生は今年こそ地区大会金賞をとって県大会に出場するのだと意気込んで

          Sui彩の景色 #04 -福音-

          僕にとって、歌うことは喜びだ。 そして、勿論音楽自体が好きだ。 それは家庭環境も少なからず影響していると思う。 僕の育った家庭は比較的音楽が好きな家庭だった。 父はDeep PurpleやLed Zeppelin等、往年のハードロックが好きでよく聴かせてくれた。 他にもThe BeatlesやAerosmithやQueen等1960-70年代の音楽が多かったが、Michael JacksonやPrince達のような1980年代の洋楽も聴かせくれていたし、サザンオールスターズ

          Sui彩の景色 #03 -音楽室と彩色-

          僕には3つ年の離れた兄がいる。 学年で1.2を争う程、成績優秀で運動もまぁまぁ出来る。 当時一緒に通わされていたピアノ教室でも、兄は巧いと評判だった。 そんな兄に僕は何をやっても勝てなかった。 例えばテレビゲームやカードゲーム、その他様々な遊びにおいてもそれは同じだった。 当時の僕にとっては自慢の兄であると同時に、僕の劣等感を助長する存在でもあった。 小学校に入ると嫌でもその兄と比較される事になった。 兄は先生達のお気に入りで、僕は学校の行く先々で「〇〇君の弟」と呼ばれ、期

          Sui彩の景色 #03 -音楽室と彩色-

          Sui彩の景色 #02 -小さな社会-

          コミュニケーションとは本当に難しいものだ。 人の感情を読み取る事は勿論だが、こちらの感情を読み取って貰う事もまた難しい。 例えば僕が悲しい時、他人にはそうは見えないらしい。 例えば僕が怒ってる時も喜んでる時もまた、やはり他人にはそうは見えないらしい。 これは、小学校の入学式の話である。 僕はいきなり同級生に因縁をつけられてしまった。 理由はよく覚えていないが、僕も黙っていなかった。 そうして、口喧嘩になって、先生だったか、母親だったか定かでないが、とにかくお互いが怒られた。

          Sui彩の景色 #02 -小さな社会-

          Sui彩の景色 #01 -原色-

          初めて幼稚園に行くその日の朝。 送迎のバスに乗せようとする母親の髪を 引っ張って、泣き喚きながら乗車拒否する僕を、 何とも言えない表情で見つめる母の顔が 今でもまだ鮮明に覚えている。 席に着くとすぐ、 他の子は誰一人として 泣いてなんかいない事に気付いた。 自分だけが赤ん坊の様に泣いた事が、 なんだかとても恥ずかしいことの様に思えた。 幼稚園では、 なかなか周囲に打ち解ける事が出来なかった。 泥遊びも水遊びもお絵かきも、 そこで行われる何もかもが嫌いだった。 大きな遊具の