「Sui彩の景色」Sui≒Kanzaki

2020年7月より活動を開始した“水彩画のように淡く儚い歌声を響かせる 音楽ユニット”…

「Sui彩の景色」Sui≒Kanzaki

2020年7月より活動を開始した“水彩画のように淡く儚い歌声を響かせる 音楽ユニット”SUIRENのヴォーカルSuiであり Sui≒Kanzakiとしてのソロプロジェクトも2024年春始動!

最近の記事

Sui彩の景色 -近景- #07 -積雪と足跡-

「Suiさん個人に、1つ残念なニュースが飛び込んできました…。」 突然のマネージャーからの連絡で、そう切り出された。 「OKMusicでの連載ですが、次回の2月更新分を最終回にしていただきたく思います。」 スマートフォンの画面に映るテキストを眺めながら、その言葉の意味を咀嚼する為に、頭の中で何回も復唱した。 何かが終わる時はいつも突然だ。 これが最後だと思いながら文章を書けるのだから僕にとっては幾分か親切な話だろう。 2021年の12月15日に連載がスタートして、2年と2

    • Sui彩の景色 -近景- #06 -半吉-

      バス停の前に立ち、大通りのカーブの向こう側から帰省する為に予約した高速バスが見えるのを、今か今かと震えながら待っていた。 予定の時刻から数分遅れてバスが到着すると、僕はすぐさまスマートフォンの画面に映る乗車券を見せバスに乗り込んだ。 暖かな車内とエンジンの振動が心地よく感じられ、ウトウトしているうちにバスは首都高を駆け抜け、最初の休憩地点となるサービスエリアに止まった。 トイレを済ませ、軽食と水と缶コーヒーを買って車内に戻ると程なくしてバスは動き出した。 辺りは見渡す限りの山

      • Sui彩の景色 -近景- #05-キャンバス-

        音楽が自分を随分と遠くまで連れてきてくれたように思う。 もし、音楽と出会い歌い続けていなければ、立つことのなかった場所、出会うことのなかった人、景色、感情。 自分の人生の大半は音楽というフィルターを通して得たもので構成されている。 新幹線の車窓の向こうに目を移すと、絵に描いたような富士山が見えた。 ここ数ヶ月幾度となく乗ったはずなのに、今までどうして気づかなかったのだろうか。 コロナ禍で結成した僕達は必然的にインターネット上での活動が主戦場になっていた。 故にこれを普段

        • Sui彩の景色 -近景- #04-道中-

          肌寒さを感じる深夜1:10。 僕は都内の環状道路沿いの路肩で迎えを待っていた。 ようやく秋らしくなってきたな、もう少し暖かい 格好をしてくるべきだったか…。 そんな事を考えていると、TOYOTAの白いSUVが速度を落として近づいてきた。 運転席には馴染みのスタッフが座っている。 この車に乗れば、恐らく24時間程は家に帰れないだろう。 助手席に乗り込むとレコーディングが終わったばかりのSUIRENの曲が車内に響いていた。 向かうはTOKYO FM。 この日は、都内のラジオ番組で

        Sui彩の景色 -近景- #07 -積雪と足跡-

          Sui彩の景色 -近景- #03-名のない感情-

          『Eggs presents FM802 MINAMI WHEEL』 『HIGHWAY STAR PARTY 2023』 2つの大きなライブを終え、僕は今この原稿を書いている。 9月の後半はレコーディングに向けた楽曲制作も佳境に入り、月末になんとか2曲録り終えそこからはリハーサルやラジオの収録等バタバタと日々は過ぎて、気付けばあっという間に大阪行きの新幹線に乗り込んでいた。 そして、大阪心斎橋でライブをし、直ぐに東京に戻って、中1日の休息を経て豊洲PITでのライブ。 ス

          Sui彩の景色 -近景- #03-名のない感情-

          Sui彩の景色 -近景- #02-主観-

          この夏、全国的に猛暑が続いており、7月下旬以降の高い気温について、気象庁の検討会は「太平洋高気圧の本州付近への張り出しが記録的に強まったことが要因で歴代と比較しても圧倒的な高温で異常気象だといえる」と結論づけました。 スマートフォンをスクロールしていると、そんなネットニュースの記事が目に飛び込んできた。 なんでも今年の7月は、この125年間で最も暑い7月だったらしい。 ビルの隙間から覗く空の青さはどことなく不気味で、青ければ青いほど太陽の光は針のように肌に突き刺さる気がし

          Sui彩の景色 -近景- #02-主観-

          Sui彩の景色 -近景- #01-氷菓-

          2020年7月より活動を開始した“水彩画のように淡く儚い歌声を響かせる音楽ユニット”SUIRENのヴォーカルSuiが、ヴォーカリストSuiになるまでのエピソードを描いた「Sui彩の景色」(1st Season) を経て 本シリーズ -近景- では、現在のヴォーカリストSuiを彩る エピソード、モノ、景色を写真とコラムにて、お届けします。 SUIRENを始めてから、もう三度目の夏。 「音楽を辞めよう。」 当時そんな事を考えていた僕の前に、何年振りかに現れ、 「一緒に音楽やらな

          Sui彩の景色 -近景- #01-氷菓-

          Sui彩の景色 #20 -小路-

          行き着けのファミリーレストランでは決まって窓際の一番端にある4人掛けのボックス席に座る。 勿論混んでいる時は別だが、何時でも空いているというのが、このレストランの最も気に入っているところだ。 「Sui彩の景色#19-針音」を書き終え、そっとノートPCを閉じると、ディスプレイの光を朝から浴び続けた眼球がズキズキと痛むのを感じる。 会計を済ませ店を出ると辺りはもうすっかり暗くなっていた。 「少し遠回りをして帰ろう。」 曲を作る時も歌詞を書く時もそうだが、思考に没入した後には、現実

          Sui彩の景色 #19 -針音-

          -人物紹介- 小堀…高校入学後に結成したバンドのベーシスト。かなりベースが巧い。 土田…同じ高校のドラマー。同じ中学出身だがドラムが叩ける事は当時知らなかった。 高校内でメンバーが見つからなかった為他校のバンドに加入し活動していたが、江崎の構想する新バンド結成の為にSuiと江崎を引き合わせる。 江崎…他校のバンドマン。他校のバンドでメインギターのパートを担当していたが自らがやりたい音楽性のバンドを構想しSui達と共に新バンド結成。 もし、タイムマシーンが発明されたら

          Sui彩の景色 #18 -抗体反応-

          -人物紹介- 小堀…高校入学後に結成したバンドのベーシスト。かなりベースが巧い。 土田…同じ高校のドラマー。同じ中学出身だがドラムが叩ける事は当時知らなかった。 高校内でメンバーが見つからなかった為他校のバンドに加入し活動していたが、江崎の構想する新バンド結成の為にSuiと江崎を引き合わせる。 江崎…他校のバンドマン。他校のバンドでメインギターのパートを担当していたが自らがやりたい音楽性のバンドを構想しSui達と共に新バンド結成。 大野…中学時代文化祭で共にライブをし

          Sui彩の景色 #18 -抗体反応-

          Sui彩の景色 #17 -光の街-

          -人物紹介- 小堀…高校入学後に結成したバンドのベーシスト。かなりベースが巧い。 土田…同じ高校のドラマー。同じ中学出身だがドラムが叩ける事は当時知らなかった。 高校内でメンバーが見つからなかった為他校のバンドに加入し活動していたが、江崎の構想する新バンド結成の為にSuiと江崎を引き合わせる。 江崎…他校のバンドマン。他校のバンドでメインギターのパートを担当していたが自らがやりたい音楽性のバンドを構想しSui達と共に新バンド結成。 東京の空に星は見えない。 子供の頃

          Sui彩の景色 #17 -光の街-

          Sui彩の景色 #16 -水槽-

          -人物紹介- 小堀…高校入学後に結成したバンドのベーシスト。かなりベースが巧い。 土田…同じ高校のドラマー。同じ中学出身だがドラムが叩ける事は当時知らなかった。 高校内でメンバーが見つからなかった為他校のバンドに加入し活動していたが、江崎の構想する新バンド結成の為にSuiと江崎を引き合わせる。 江崎…他校のバンドマン。他校のバンドでメインギターのパートを担当していたが自らがやりたい音楽性のバンドを構想しSui達と共に新バンド結成。 あれは小学校低学年の頃だろうか。 僕は

          Sui彩の景色 #15 -臨界-

          -人物紹介- 小堀…高校入学後に結成したバンドのベーシスト。かなりベースが巧い。 土田…同じ高校のドラマー。同じ中学出身だがドラムが叩ける事は当時知らなかった。 高校内でメンバーが見つからなかった為他校のバンドに加入し活動していたが、江崎の構想する新バンド結成の為にSuiと江崎を引き合わせる。 江崎…他校のバンドマン。他校のバンドでメインギターのパートを担当していたが自らがやりたい音楽性のバンドを構想しSui達と共に新バンド結成。 榊原...前身のバンドのギタリス

          Sui彩の景色 #14 -春の息吹-

          -人物紹介- 小堀…高校入学後に結成したバンドのベーシスト。かなりベースが巧い。 土田…同じ高校のドラマー。同じ中学出身だがドラムが叩ける事は当時知らなかった。 高校内でメンバーが見つからなかった為他校のバンドに加入し活動していたが江崎の構想する新バンド結成の為にSuiと江崎を引き合わせる。 江崎…他校のバンドマン。他校のバンドでメインギターのパートを担当していたが自らがやりたい音楽性のバンドを構想しSui達と共に新バンド結成。 僕の生まれ育った家は丘の上、車1台通るの

          Sui彩の景色 #14 -春の息吹-

          Sui彩の景色 #13 -代謝-

          -人物紹介- 大野…中学時代文化祭で共にライブをしたバンドメンバー。別の高校に進学し現在は土田と共にバンドを組んでいる。 榊原…高校入学後に結成したバンドのギタリスト。同じ中学出身ではあるが中学時代はギターが弾ける事を知らなかった。高校生らしからぬ演奏スキルを持っておりかなりの技巧派。容姿端麗でわがまま。 小堀…高校入学後に結成したバンドのベーシスト。実はかなりベースが巧い。 土田…同じ高校のドラマー。榊原同様に同じ中学出身だがドラムが叩ける事は当時知らなかった

          Sui彩の景色 #12 -荒療治-

          「楽器も弾けないボーカルなんかロックバンドにいらない。」 榊原は僕にそう告げた。 小堀は黙ったままだ。 大事な話の時はいつもそうだ。 僕と榊原が揉めて小堀をはじめとした他のメンバーは黙っている。 というよりも榊原に物言い出来るのが僕しかいないと言った方が正しい。 だから、小堀以外の彼らは去ってしまったのだろう。 僕達のバンドには得体の知れない閉塞感が漂っていた。 外はもう木枯らしが吹いて肌寒い季節になっていた。 榊原と僕は入学して間もなくバンドを組んでメンバーを募集

          Sui彩の景色 #12 -荒療治-