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守りたいものを守るために、お金持ちになりたい

最近、お金持ちになりたいなあとぼんやり思う。
別に贅沢な暮らしがしたいわけではなくて。
お金があれば、守りたいものを守ることができるんだと気がついたから。

そう思ったきっかけは、名古屋市にある桑山美術館へ訪れたこと。
閑静な住宅街のなかにある、私設の美術館。
日本画を主に収蔵しており、横山大観や上村松園、川合玉堂などの作品が並ぶ。
作品の鑑賞だけでなく、メインの展示室から、アーチ状の支柱をくぐって庭へと散策もできる。庭園に設けられた茶室には、木々が木漏れ日を落としている。
館内の階段の手すりはゆるやかな曲線を描き、吹き抜けの天井にはシャンデリアが吊るされていた。
収蔵作品はもちろん、建物まで素敵だった。

近頃は紋切り型の建築物が立ち並ぶ。
友人のアパートにお邪魔しても、私のアパートと似たような作りだ。
経費の削減と納期の短縮による、タイル「風」の外装、木目「調」の壁紙などもよく見かける。
それらを批判するつもりは全くないけれど、凝った作りの建築物にはやっぱり惹かれる。
人の心を動かすものは、やっぱり時間と手間をかけてつくられたもののように思う。

例えば私がお金持ちになったら、左官職人さんに壁や土間を施工してもらいたい。
知り合いの左官職人さんは、昔より仕事がなくなってきていると言っていた。大手ゼネコンなどによる効率的な施工によって、職人さんたちは淘汰されてしまったのだという。

私の祖父は大工さんだった。
特に仕事に困っているような感じはなかったが、後継ぎがおらず一代で屋号を畳んでしまった。

手間とお金がかかる選択をすることで、職人さんに仕事が生まれ、職人さんの技術を建築物という形で後世まで残すことができる。
自分が良いと思った、心惹かれた美術作品を未来に引き継ぐことができる。
それらはお金があれば実現できる。
自分が心惹かれたもの、後世にも残っていってほしいと思うもの、
つまりは守りたいものを守ることができるのだ。



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