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いちばん大好きな人を遠ざけてしまった。

反抗期とは''いちばん大好きな人を遠ざける''という、哺乳類に共通する本能だ。



東京都美術館「おべんとう展」内の展示
「あゆみ食堂のお弁当」より


 私は反抗期のころの自分が嫌いだ。できれば思い出したくもない。だけどこの言葉を読んで、つい思い出してしまった。そして涙が出てきた。(さすがに一人で展示を観て泣いていたら引かれるので、涙が流れないように踏んばった。)

 私は反抗期のころ、父に優しくできなかった。母の言葉もわずらわしくてイライラしたけれど、特に父には嫌な態度もとった。そしてそんな態度をとったあと、悲しくなる。いま思い出しても目頭がツンとする。だけど当時はいい態度なんてできなかった。素直になれなかった。


反抗期とは''いちばん大好きな人を遠ざける''という、哺乳類に共通する本能だ。


 これを読んで、そういえば、小さいころは父のことが大好きだったと思い出した。
2階から1階に降りるとき、おんぶしてもらいながら階段を降りた。お風呂から上がったらソファーに二人並んでテレビを観ていた。
大好きだったからこそ、反抗期のときあんなに嫌いになってしまったのだろうか。だったら元からあんまり好きじゃなかったら、反抗期でもあれほど父を傷つけずにすんだんじゃないか。そんな、いまではどうしようもないことを考える。


 誕生日には父から「お誕生日おめでとう」とLINEがきて、「ありがとう」と返信した。父の日のプレゼントは恒例になった。二人で買い物もした。映画も観に行った。
 小さいころの関係にはきっと戻れない。照れくさくて気持ちは直接伝えられない。それでも私は父のことが好きだ。反抗期のころ傷つけてしまったぶん、いまから挽回していく。だからどうか長生きしてほしい。

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