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呼応する部屋

音は鳴る
語りかけるように
今日という一日を
伝える手段として

その部屋に
一人また
一人と集まってきて
それを受け取る

この部屋で起きたことを
その一部始終を
そこにいる
みんなで味わい尽くす

音の中に感情を探す
目を閉じて
心に聴く
今、自分のお腹と話せたかもしれない 

鳥を描いた女の子
一羽描いて
その紙を畳んで持ち帰った
その姿が美しかった
あの鳥はそこにいたし
あの子はそこにいた

音の中で日々は
紡がれていく

流れていくものの中に
小さな物語は
数え切れないほどに産まれていく


たとえばこの椅子に座っているだけでも
世界はわたしに
物語を魅せてくれつづけている 
ある日
目を閉じてしまうまでは


繰り返しているうちに
思い出していく
細かい雨の降るような時間の中で
ワタシノネガイは
わたしであることだと
思い出していく

ないがしろにしていたものが
宝物だとわかる

流れの中で産まれるもの
その時時に姿を変えていけばいい


正体を知りたいから
何者かになれと言われて
何者かになれなくて
それで切なくしていたと知る

痛いとかつらいとか
感じていても
その痛みを知りながらも
心の痛みというのは見えないから
そのままやりきってしまう


指をつっているのに
優雅な自分さえ演じてしまう


あなたは
わたしのネジを緩めてくれる人

それぞれの持ち物を持って
その場で好きなことをする

そしてまた
別々の場所に戻っていく
呼応する部屋で
なくしものを
探す
音のシャワーが
雨粒みたいに
洗い流していく

長いアコーディオン
色の森から現れた女の子
人見知りだった自分の正体
だいたい解散してないし
だいたいお休みしていることを愉しむ 

わたしの
言葉は、縦に産まれていく
上から下に
落ちるように流れるように
産まれていくことも知る

それを
またなくさないように
大切に出来るように
力強く握りしめた

呼び応える部屋の中で
起きた
白い花が語りだす
花びら一枚一枚の物語




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