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あの頃わたしたちは︰再会     

あの頃わたしたちは
わたしはわたしの
あなたはあなたの
ことをことばかりをかんがえていた

あの頃わたしは
あなたの辛さには無頓着で
自分の荷物の整理と
点検ばかりをしていた

あの頃あなたは
わたしの悲しみには無頓着で
言い訳ばかりをくれた

もう隣には座れないことを
寂しく思ったりもした
わたしがおばあちゃんになって
あなたもおばあちゃんになったら
縁側でお茶を飲もうと約束したのに
それが叶わないことを
寂しく思ったりもした

時流て
サクラミドリ
モミジチリユキハフリ

時流て
サクラミドリ
モミジチリユキハフリ

それを繰り返し

会えない時間は
永く過ぎる

あなたも
わたしも
わたしたちはわたしたちのことを
もう忘れそうになるころ
サクラミドリになるころ
再びあなたに出逢った

これは
出会い直しという名前がある
とあなたは教えてくれた

あの頃わたしは
わたしのことばかりを
かんがえていた
かんがえていたごめん
といって
あなたを抱きしめた
そして
こどもみたいにわんわんと
二人で泣いた
外には雨が降っていた
涙のうえに雨が重なった
二人で
その姿をわらった

言い訳ばかりを沢山した
あなたを傷つけた
あなたはそういって
わたしにすまなそうな顔をした
『もう一度、ともだちになりたい』
と、わたしは言った
わたしとあなたは握手した

今日は四月のなんでもない日だった
なんでもない日の平日の昼下りだった
雨が降ってきた
それくらいの普通の日だった

それでも今日は
とても素敵な日だった

わたしたちは
再びはじまる
はじまる予感がした

昨日とは
違う今日のわたしたち

あの頃のわたしたちに
教えてあげたい
再び会えるってことを
泣いていたあの日のわたしに
伝えてあげたい

あの頃わたしたちは
こんな素敵な日が来る
ということを
まだ知らない

涙にまじる雨は
夏のはじまりの
いい香りがした

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