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かたつむり

6月といえば、
カタツムリである。

カタツムリの思い出があるので、
ここに書くことにする。

数年前、わたしたち家族はペットロスに苦しんでいた。
10年間生活を共にしたラブラドール・レトリバーがこの世を去って1年が経とうとしていた。

わたしたちは生きものが好きだ。
犬を愛していたのももちろんそうだが、
家に動物が居なくなり、
大変な寂しさを感じていた。

次の犬やペットを飼うというのも、
死の痛みが大きすぎてその気になれずにいた。

ペットロスのくるしみの果てに、
家族は悲しみを紛らわすものを見つけた。

虫だ。

犬や猫ほど人に懐かず、適度な距離感がある。

伴侶動物というより、自然の一部を切り取ったかんじがする。

まず、祖母と叔母が庭でアゲハ蝶の幼虫を捕獲し、飼育を始めた。
死が辛いのは虫とておなじなので、蝶になったら外に逃がすことにした。

適度な距離感と敬意を込めて、
家族はアゲハ蝶の幼虫たちを「鈴木」と名付けた。

「今日、鈴木さんがさなぎになった」

夕食で母が言った数日後、
鈴木さんは素晴らしい羽を靡かせてうちを巣立った。

それからというもの、家族で狂ったように幼虫をさがし、拾っては蝶にした。
「そこにイモムシがいたから.......」と、
「そこに山があるから」みたいな理由で虫を拾った。

そして、今度は叔母がカタツムリを庭で5匹ほど捕獲してきた。
たぶん、オナジマイマイという種類だと思う。

カタツムリをよく観察してみると、
目と目の間の頭のところに何かコブができている。
人間でいうところの眉間あたりである。

こんなやつ。

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この頃、カタツムリの寄生虫が話題になっていたので、このカタツムリも寄生されたのだと思った。

ところが、「カタツムリ コブ」でググッたところ、
このコブはカタツムリが発情している合図であるということがわかった。
(コブは"頭瘤"と言うらしい。)

わかりやすくてよろしい。

人間でいうと、勃起する機能だけを有したおちんちんが眉間にガッツリ搭載された状態を想像した。

夜、カタツムリを見に行ってみると、2匹のカタツムリが絡み合っていた。

たいへんだ、共喰いをしている。と慌てたが、カタツムリの交尾であると判明した。

カタツムリの交尾はなんだかスゴい。

ありのまま書くと、
首の当たりから槍のような器官がでてきて、相手のカタツムリの首のあたりにくい込んでいる。

たいへんである。
しかも、この槍のような器官のことを"恋槍(ラブダート)"という。
いくらなんでも趣がありすぎる。

興味がある方はググッてほしいが、
取り急ぎ交尾のようすを図にするとこんな感じ。

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AV業界もびっくりの触手系スローセックスがおこなわれる。

翌朝見てみるとカタツムリは離れていた。

産卵を考え、土を入れた容器にうつすと、2匹のカタツムリは土に潜り、じっとしていた。

数日後、
叔母が「大変なことになった」と言うのでカタツムリの容器を見ると、赤ちゃんカタツムリのパーティー会場と化していた。

なんと2匹とも産卵を成し遂げていた。
カタツムリは雌雄同体の種類が多いので、1度交尾をするとお互いが卵を産める。
男女の関係から一転、お互いマタニティ仲間となる。

赤ちゃんカタツムリは生まれた時から殻をしょっている。
小学生のころ、
「カタツムリの中身だけ出てきたのがナメクジだよ」と言っていた男子がいたなら、そいつは嘘をついている。

カタツムリの赤ちゃんは、これから殻の素材となるカルシウムをたべて殻を固くしていく。
カタツムリが塀なんかでよく見られるのは、石灰質を摂取しているからである。

大量の赤ちゃんカタツムリにはちょっと鳥肌は立ったが、個々はめちゃくちゃかわいい。
赤ちゃんなので。

卵の殻を与えたりしてしばらく大きくなるのを見守り、庭に返したところ、
その年の家庭菜園は甚大な被害を受けた。

カタツムリを保護し、
カタツムリを繁殖させ、
自分たちの食料を奪われている。

人類の負だ。

知っているような生きものでも、
知らないことばかりだったりする。

今年の梅雨は、ぜひ、カタツムリを探してみてください。
最近見かけなくて少しさみしい。

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#6月 #カタツムリ #虫 #家族 #思い出 #生きもの #生物

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