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管理監督者メンタルヘルス研修のマニュアル


0.読む目的

わが国の管理監督者メンタルヘルス研修の発端や基礎を学ぶ


1.はじめに


2.対象者の選定

(1) 研修で効果をあげる

  • 教育の必要性が高い管理者を選定

  • 例えば、就業の見通しに不安がある集団、減給が行われた集団

  • 最終的にはすべての管理監督者への研修が望ましい

  • 対象者は層分けして選別する

  • 例えば部下を持つライン管理監督者には、部下への対応と産業保健職との連携

  • 例えば職位の高い管理職や経営層には一般的な内容に加えて事業用のシステムの重要性を伝えてシステム構築支援を促す

(2) 研修参加率向上の工夫

  • 研修の必要性がある背景を持つ集団に実施

  • ニーズや状況に応じた研修を実施

  • 就業時間内に実施


3.研修内容・形式

(1) 研修の目的

  • 研修の目的は、管理監督者の行動変容

  • 管理監督者の知識向上が目標

  • 事業場のメンタルヘルスの方針と体制の理解

  • 心の健康に関する正しい知識の獲得

  • 事業場ごとで必要な項目

  • 動機付けとスモールステップの目標設定 (自分もできると思えることを伝える)

  • 明確かつ具体的につたえる (管理監督者の平均的な知識・技術水準で可能な程度にとどめる)

  • 当該事業場での問題をあつかう

(2) 盛り込むべき内容

労働者の心の健康の保持増進のための指針の必要実行

1.メンタルヘルスケアに関する事業場の方針
2.職場でメンタルヘルスケアを行う意義
3.ストレス及びメンタルヘルスケアに関する基礎知識
4.管理監督者の役割及び心の健康問への正しい態度
5.職場環境等の評価及び改善の方法
6.労働者からの相談対応 (話の聴き方、情報提供及び助言の方法等)
7.心の健康問題により休業した者の職場復帰への支援方法
8.事業場内産業保健スタッフ等との連携及びこれを通じた事業場9.外資源との連携の方法
10.セルフケアの方法
11.事業場内の相談先及び事業場外資源に関する情報
12.健康情報を含む労働者の個人情報の保護等
13.代表的な職業性ストレス要因

①メンタルヘルスケアに関する事業場の方針

明確にして公表する

②職場でメンタルヘルスケアを行う意義

  • 労働者の健康と生活を守る、

  • 活気のある職場や組織を作る、

  • 事業場のリスクマネジメント

+過労死自殺の民事訴訟などの事例
+管理監督者は事業者の安全配慮義務代行者
+事業場の方針 (産業医や人事労務からの伝達)

③ストレス及びメンタルヘルスケアに関する基礎知識

  • メンタルヘルスの不調はストレスで誰にでも生じうる

  • ストレス因子 (職場と仮定)

  • ストレスマネージメント (運動・スポーツ、睡眠・休養、栄養、リラクゼーション法)

  • 病気のサイン (つまり鬱) 

④管理監督者の役割及び心の健康問題に対する態度

  • 職場環境などの改善

  • 部下に対する相談対応

  • 部下との日ごろからの交流 (有益な情報を得る、部下の精神面での変化を知る)

⑤職場環境の評価及び改善法

  • 職場環境には組織的なものがある

  • 仕事の要求度

  • 仕事のコントロール

  • 報酬

  • 組織的公正

*コメント:これは驚いた。ストレスチェックで使用されている職場のストレッサーは、個人に返却されても何の意味もない。しかし、管理職が知ることで重要な意味を持つ。わが国では活用のされ方そのものが間違っていることがよくわかる*

  • 職場のストレッサーに気づくために

  • 日常の業務管理の中でストレスの原因や部下のストレスサインい気づく

  • QC (Quality Control) 活動や職場安全衛生委員会などで労働者からの意見を取り上げる

  • 健康診断の問診やストレス調査票による状況調査

  • 職場巡視で作業を観察しストレス要因を評定

  • *コメント:素晴らしいと感じる。これらは、一般的には個人がストレッサーを把握する方法、産業保健スタッフが職場のストレッサーを把握する方法として紹介されている。しかしそうではなく、管理監督者の役割であるとすると、部下は相当らくになる。非常に素晴らしいのになぜあまり知られていないのだろうか*

職場環境の改善法

個々の労働者に過度な長時間労働、過労、心理的負荷、責任が生じないようにするなど、部下の能力・適正・および職務内容に合わせた配慮を行うよう求められる

*とにかく、ストレスチェックや職場のストレスは管理監督者が知るべきである。また、部下も知っておくことで、管理監督者の狙いや効果がわかりやすくなると考えられるため、セルフケアでも扱うべきものと考えられる。とにかく素晴らしい。すでに国際的な状況に関心を持った。研究者が素晴らしすぎる。堤明純先生というのですか*

⑥労働者からの相談対応

必要な情報収集と適切な情報提供
+話を聞いてもらえた安心感、相談したいという信頼感

  • 日ごろから部下の健康や生活に関心を持つ

  • 変化に気づいたときは必要に応じて個別の面談を設ける

  • 強い強度の心理的負荷を伴なう出来事を経験した部下や長時間労働により過労にある部下には特に相談の機会を持つ

  • *コメント:明記してあるのにできない人がいるものですね*

  • 部下に仕事の見通しを伝える

  • 疲労・体調不良などの兆候があれば本人・産業保健スタッフと相談して指導

  • 業務量や指示内容など状況・対応の記録を残す

  • *コメント:仕事として支援するということ*

⑦心の健康問題により休業した職員への服飾支援

復職判定→再発予防の配慮→定期面談による休職要因の探求

⑧事業場内産業保健スタッフ等及び事業場外資源との連携法

*コメント:このマニュアル考えた人天才じゃないか*

  • 管理監督者→産業保健スタッフ→専門医の連携体制確立

  • 守秘義務について明確にする (産業保健スタッフは秘密を守るので相談できる)

  • 病気の兆候があれば産業保健スタッフ、精神・心療内科の専門医に相談

  • 例えば、いつもとちがう変化に加えて、「眠れない」「食欲がない」「死ぬことを考える」場合は早めに専門家につなぐ

  • 迷う場合は早めに管理監督者が専門家に相談 (コンサル)

  • 必要な場合は「職場が本人の健康状態を心配している」と本人に伝えて受診を促し、本人が拒絶したら家族に連絡して協力を求める

  • 多くの場合は仕事上の能率低下やミスが生じるので気づきにつながる

⑨セルフケアの方法

管理監督者もストレスで心身の不調をきたす可能性がある

⑩事業場内の相談先及び事業場外資源に関する情報

事業場内相談窓口、契約医療機関、精神保健福祉センター、労災病院、産業保健推進センター、EAP (従業員支援プログラム)
詳しく分からなくても、気づく→相談でOK

⑪健康情報を含む労働者の個人情報の保護等

  • 個人情報の取り扱いを厳格に定める

  • 基本的には誰かに連絡を取る、結果を伝える際には本人の承諾が必要となる

  • 管理監督者が部下から信頼を得て詳細な得られる

  • ただし、一定のプロセスを経てもなお本人の同意が得られず、このまま就労継続するのが心配・危険である場合には、事業場の安全配慮義務の代行者として同意を得ずに人事・労務、産業補お件スタッフ、家族に連絡する場合があることも説明しておく

  • この際は、個人情報の保護に配慮し、安全配慮義務に基づいて行動したとして経緯を明確に記録しておく


4.研修の効果を上げる工夫

(1) ウェブの活用

e-ラーニングは受講者の自由な時間にいつでも学習できる
反復学習も可能

(2) 参加型研修

ロールプレイやグループ学習などの参加型様式
相談対応・積極的傾聴のロールプレイの有効性が期待される

(3) 当該事業場データと事例提示

*コメント:難しそう*

(4) その他

  • 注意事項として、管理監督者がメンタルヘルスについてほとんど知らないことを前提にすること

  • 管理監督者役割も聞いたこともないことを前提にする

  • 情報を多くしすぎない

  • 休憩をこまめにとる

  • 明るく和やかに (??)

  • 最後に質疑応答を設ける


5.研修時間、研修頻度・期間の推奨

  • 研修の効果 (管理監督者の知識及び行動レベルの効果) は、半年程度で漸減

  • 一定期間ごとの反復研修が必要

  • 年に1回の研修が推奨される

  • 一回の研修ですべて達成するのは実用的ではない


6.事例紹介

機械製造業事業場における管理監督者へのメンタルヘルス教育の介入効果

  • 対照研究で管理監督者の介入効果を検証

  • 講師は事業場外心理士

  • 傾聴、受容・共感、批判的・忠告的態度の禁止、感情のフィードバック)

  • ロールプレイなし

  • アウトカムは、管理監督者が産業医に報告したメンタルヘルス不調者の数、不調者の重症度 (欠勤がない事例を軽症、欠勤後を重症)、精神疾患による1か月以上の休職者の人数、休職期間、復職後1年以内の同一病名による再休職者の人数

  • 研修実施群では、管理監督者が産業医に報告するメンタルヘルス不調者の人数が2倍に増加

  • 精神疾患による休職者の休職期間は短く、再休職の発生数が少なかった

  • 休職者の発生率は減少し、重症者の発生率も介入事業所の方が減少傾向が強く認められた

  • 便益分析

  • 研修受講済みの上司が労働者の1%を産業医に紹介し、そのうち重症者は75%発生し、その65%が休職しており1000人中7.5人が休職していたが

  • 介入により休職者が2.28人への変化した

  • 介入により1000人当たり2.6人の休職を防いだ

  • 休業1件当たりの平均的な逸失利益は200-422万円とされているため

  • 1000人あたり520-1097万円の損失が防げる


Reference

堤 明純他 (2012).管理監督者教育の普及・浸透 厚生労働省厚生労働科学研究費補助金 労働安全衛生総合研究事業 労働者のメンタルヘルス不調の第一次予防の浸透手法に関する調査研究 平成23年度総括・分担研究報告書 第2章,11-58.

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