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【組織風土が急性心筋梗塞標準化死亡リスクに及ぼす影響】Influencing organisational cultureto improve hospital performancein care of patients with acutemyocardial infarction: a mixedmethods intervention study

概要

病院の組織風土は、急性心筋梗塞患者の死亡率など患者の転機に影響を及ぼすが、組織風土がどのように、あるいはポジティブな影響を及ぼすかは知られていない。
そこで本研究では、組織風土の次の5側面に対して、10の米国の病院を対象に2年間の介入研究を行った。①学習環境、②上級管理職のサポート、③心理学的安全性、④組織へのコミットメント、⑤改善の時間の5側面が介入対象となった。アウトカムは、組織風土の変化、リスク標準化死亡率、リスク標準化死亡率の低下を促す5領域の戦略の実施、の3つであった。測定は、ベースライン、一年後、二年後に行われ、一部を対象に詳細なインタビューを行い、またRSMRデータを得た。
その結果、すべての病院において組織風土の変化が認められた。特に学習環境と上級管理職のサポートに統計学に有意な改善がみとめられた (p<0.001)。質的データは、心理学的な安全性だけではなく、その他の領域でも大きな変化を認めた。ただし、10病院のうち6病院は大幅な変化を認めたが、4病院はおよそ効果がなかった。科学的根拠に基づく職場風土の改善戦略の使用も大幅に増加した。また、介入の間に組織風土が変化しなかった病院と比較して、変化した病院ではリスク標準化死亡率の低下をみとめた (1.07 vs 0.23)。
以上より、高いパフォーマンスを促す組織風土を形成する戦略への投資は、病院全体での患者の臨床的転機を向上させる可能性がある

問題と目的

(あまりよい論文ではない可能性が高いが、職場介入はほとんど意味不明か絶望的な内容が多い中で唯一明確なアブストラクトなので読んでみる)

  • 病院の組織風土は、例えば急性心筋梗塞患者のリスク標準化死亡率などの臨床的転機と関連する (Baggs et al, 1999; Bradley et al, 2001; Singer et al, 2009; Taylor et al, 2015; Curry et al, 2011; Bradley et al., 2012)

  • しかし、複雑に絡まった要因のなかで組織風土の測定は難しい

  • 組織風土が独立変数として、モデレータとして、またどのように臨床実践に影響をおよぼすかは議論が残っている

  • 本研究では、組織風土を学習を促進させる要因としてとらえ、したがってエビデンスベースドの臨床実践の習得や直接的な臨床転機に影響を及ぼすと考える

  • 組織風土と患者の臨床転機の関連は先行研究で指摘されているが、そのメカニズムは明らかではない

  • コクランレビューでは、先行研究はシングルあるいは数か所で行われており、妥当性のある尺度が用いられておらず、前向き研究による効果評価に乏しいとされている (Parmelli et al., 2011)

  • 本研究では、Leadership Saves Lives (Curry et al., 2015) による2年間の前向き介入研究によって、病院の組織風土の変化が急性心筋梗塞のリスク標準化死亡率に及ぼす影響を明らかにする

方法

研究デザインと対象者

  • 前向き、量的・質的混合研究

  • 対象となる病院の包含基準は、①最低でも年間200件の急性心筋梗塞患者の隊員がある、②2009年から2012年までに報告されたリスク標準化死亡率が全国平均あるいはそれを下回っており改善の機会が示唆されている、③複数の病院のシステムの場合、そのシステム内で最大の病院であること

  • 18の病院から10の病院をランダムサンプリングしたところ、2つの病院はうち一つは病院編成の問題、もうひとつは競合する取り組みの問題から辞退したため、地理的・教育状況が類似する病院を選択した

介入の内容

  • 詳細はCurry et al (2015) 参照(面白い結果であれば必ずよむ)

  • LSLは病院のパフォーマンスに関連する病院の組織風土の5領域を改善するよう設計

  • ①学習環境 (例:探求と実験を推奨して報酬を与える環境)

  • ②心理学的安全性 (例:リスクを冒しても対人関係で罰を受けず、発言しても安全であるという共通の信念)

  • ③上級管理職のサポート (例:変化に受けた共通の目的とビジョンを促し、ラインリーダーにそれを実現する権限を与える)(思っているサポートとちがったが、、)

  • ④組織へのコミットメント (例:組織への愛着とアイデンティティに基づいた従業員の職場への定着願望)

  • ⑤改善努力の時間 (例:計画、振り返り、フィードバックするため時間のゆとり)

  • 各病院で、急性心筋梗塞患者のケアにかかわる複数の部門 (心臓病科、救急医療、薬局、品質改善など) および組織 (上級幹部から現場スタッフまで) の職員からなるおよそ15名のGuiding Coalition (推進チームのようなもの) を組成

  • 指導グループは次の内容を実施:

  • ①推進チームー4人が参加する年3回のフォーラム (なにそれ)

  • ②全推進チームによる、4回の1日のワークショップ、ウェブによる体験を共有するプラットフォーム (中身が大事なのに)

  • ③ワークショップは問題解決アプローチに基づき、推進チームはエビデンスベースドのアプローチにより組織風土の改善を試み、リスク標準化死亡率を低下させるために急性心筋梗塞のによる死亡の根本的原因を特定して介入することを目的とした

  • ④問題解決をサポートするような組織風土の形成のため、ワークショップは、役割の明確化、専門職と組織の境界を越えた協働、ヒエラルキーでの働き、心理学的安全性の創造、共通の目標への説明責任の育成、生産的な葛藤・対立への関与に重点を置く体験的学習セッションが含まれた (なにそれ)

測定とデータ収集

次の3点を測定した。①組織風土の領域、②リスク標準化死亡率の低下に関する科学的根拠に基づく戦略の採用、②当該病院及び全国的なリスク標準化死亡率

①組織風土を測定する項目 (Appendix A)

推進メンバーを対象に、ベースライン、1年後、2年後に測定

②リスク標準化死亡率低下に関する科学的根拠に基づく戦略の採用

  • 例えば、創造的な問題解決、急性心筋梗塞の症例を検討するための症例を検討するための EMS との月例会議、薬剤師によるすべての 急性心筋梗塞患者の回診、急性心筋梗塞をケアする医師と看護師の擁護、心臓カテーテル検査室のカバーに専念する看護師の設置

  • 戦略を実施しているか、病院の代表者1名から、ベースライン、1年後、2年後に回答を得た

③リスク標準化死亡率

④半構造化面接

ベースライン、半年後、一年半後に、推進チームから多様な役割を考慮して抽出し、およそ45分にわたり半構造化面接を実施した

⑤エスノグラフィックオブザーベーション

ベースライン、一年半後にサイト訪問

データ分析

病院における回答者の階層性を考慮して、組織風土スコアと時間の関連性を階層的一般化線形モデルで推定
質的データと量的データを独立して(ブラインドで)評定し、双方をもとにして、改善が認められた病院と (n=6)、変化のない病院 (n=4) に分類
例えば、二つの病院は量的・質的データいずれも改善を示したが、4つの病院は量的データに変化はないものの質的データに改善を認めた
(どうしてもこの点に限界があるし、おそらく量的データだけでは関連が認められなかったために、質的データと統合して算出したのだろう

結果

対象病院と対象者

  • 病院 (n=10、北アメリカ30%、北東部10%、中西部40%、西部20%)、指導状況 (指導者20%)、病床数 (100-299 20%、300-499 30%、500+ 50%)、急性心筋梗塞事例/年 (200-399 50%、400-599 20%、600-799 30%)

  • 対象者はTable1

  • 質問紙調査への反応率は、ベースライン (88% 147/168)、1年後 (83% 154/186)、二年後 (94% 167/178)、合計223名

  • インタビュー対象者は、ベースライン (n=162)、半年後 (n=118)、一年半後 (n=113)、合計197名

量的分析の結果

  • 変化が認められた病院と認められなかった病院では、ベースラインから二年後までの職場風土の変化について、学習環境 (p=0.04)、上級管理職のサポート (p=0.03) に統計学的な有意差が認められた

  • ただし、変化は病院間でばらつきがあった

  • エビデンスベースドの取り組みの数は、ベースラインから2年後にかけて増加した (P=.02)

  • ただし、最も大きく変化したのはベースラインから1年後にかけて

  • 変化の見られた6病院は、2010-2013から2011-2014にかけてリスク標準化死亡率の平均値が1.07, 対応のあるt検定のp =0.003減少し、変化の見られなかった4病院の平均値は0.23減少した (対応のあるt検定のp=0.40)

  • (サンプル数少ないのにt検定、群の数も異なっておりあまりよくない検定)

質的分析の結果

  • 変化の認められた6病院では、主に、学習環境、上級管理職の支援、心理学的安全性に大きな改善が認められた

  • 概要は上のテーブルに記載されている

①学習環境:

  • 改善が認められた6の病院では、意欲、創造性、問題解決能力、進捗の頻繁なレビューが認められるようになった

  • あるDirector of Cardiovascular Qualityによれば、メンバーは病因についてより深く理解したいと望むようになった

  • あるDirector of Emergency Servicesによれば、従業員は従来の考え方に打ち勝ち、新たな問題解決アプローチを探求するようになった

  • あるQuality Directorによれば、臨床家が自分のパフォーマンスデータに関心を持ち始めた

  • 対照的に、変化の認められなかった病院では、データを過小評価し、創造的な問題解決能力が制限され、問題解決のための責任の共有に欠け、実験とリスクテイキングを嫌った

  • あるChief Nurse for Qualityは、「私たちは創造的な問題解決からほど遠く、テンプレートに従って仕事をしている。創造的に問題を解決する機会が全くない」と述べた

  • 創造的な問題解決はヒエラルキーによる関係性により制限され、医者ではないスタッフはすぐ医者に譲歩し、医者はその他の職種を尊重しなかった

②上級管理職のサポート

  • 職場風土が変化した6つの病院では、上級管理職による急性心筋梗塞治療の質の向上の支援が次の側面で認められた

  • エンゲージメントと可視性、反応性の向上と改善へのサポート、現場と中級管理職へのエンパワーメントの増加、高いレベル説明

  • 参加者は、上級管理職がより接しやすくなり、即座に人的・経済的資源として機能するようになったと述べた

  • 例えばある看護師は、迅速に資金を割り当て、会議に適当な人材がいれば即座に物事を進めるようになったと述べた

  • ある参加者は、推進チームの進捗がないときに、「分かれ道に来たら立ち止まらず進め」というヨギ・ベラの演説を行った瞬間がスタッフにモチベーションを与えて、改善に対する責任感を高めたと述べた

  • 改善の認められなかった4つの病院では、介入プログラムへの参加を表明しているのに資源の提供や慢性化している障害への対処を怠る上級管理職への不満を述べた

  • 例えば、Director of a Heart and Vascular Centerは、医師のエンゲージメント意欲のなさについて言及し、それでも医師の代表者を失うと新しい人を雇うことになるため、優れたリーダーシップは必要であるものの懸念があると述べた

  • 上級管理職が会議に参加しないため推進チームが機能を果たしづらいことも報告された

③心理学的安全性の変化

  • 改善が認められた6つの病院でも心理学的安全性に統計学的に有意な変化はなかったが、質的データでは懸念点を自由に口にできるようになり、専門領域や部門を超えてリスペクトが生じ、生産的なコラボレーションをサポートする専門知識への評価が高まった

  • 互いへの尊敬に加えて、伝統的に対立を避けて難しい問題を口にしなかったが、優しくしながらも率直なコミュニケーションを行う様子が見られてエキサイティングだったという感想も見られた

  • 一方で改善が認められなかった4つの病院では、お互いを信頼するむずかしさと自由な発言の制限を述べた

  • あるCardiologisは、専門医同士では自由に話し合うが、スタッフレベルになるとそうではないだろうと話した

  • また、専門性や部門を超えたやりとりは活発に行われずクローズされていることも話された

  • 情報共有が閉ざされている様子も話された

考察

(打開する方法への言及を探す)

打開ではなく、結局本研究の目的は、組織風土の有無によるコンディションが急性心筋梗塞の標準化死亡率に影響を及ぼすという実験的関心に基づいていていてそこから踏み込んでいない




文献

  1. Baggs JG, Schmitt MH, Mushlin AI, et al. Association between
    nurse-physician collaboration and patient outcomes in three
    intensive care units. Crit Care Med 1999;27:1991–8.

  2. Bradley EH, Brewster AL, Fosburgh H, et al. Development
    and psychometric properties of a scale to measure hospital
    organizational culture for cardiovascular care. Circ Cardiovasc
    Qual Outcomes 2017;10:e003422.

  3. Bradley EH, Curry LA, Spatz ES, et al. Hospital strategies for
    reducing risk-standardized mortality rates in acute myocardial
    infarction. Ann Intern Med 2012;156:618–26.

  4. Bradley EH, Holmboe ES, Mattera JA, et al. A qualitative
    study of increasing beta-blocker use after myocardial
    infarction: Why do some hospitals succeed? JAMA
    2001;285:2604–11.

  5. Curry, L. A., Brault, M. A., Linnander, E. L., McNatt, Z., Brewster, A. L., Cherlin, E., ... & Bradley, E. H. (2018). Influencing organisational culture to improve hospital performance in care of patients with acute myocardial infarction: a mixed-methods intervention study. BMJ quality & safety, 27(3), 207-217.

  6. Curry LA, Linnander EL, Brewster AL, et al. Organizational
    culture change in U.S. hospitals: a mixed methods longitudinal
    intervention study. Implement Sci 2015;10:29.

  7. Curry LA, Spatz E, Cherlin E, et al. What distinguishes topperforming hospitals in acute myocardial infarction mortality
    rates? A qualitative study. Ann Intern Med 2011;154:384–90.

  8. Parmelli E, Flodgren G, Schaafsma ME, et al. 2011. The
    effectiveness of strategies to change organisational culture
    to improve healthcare performance. Cochrane Database
    Systematic Reviews:Art. No: CD008315.

  9. Singer S, Lin S, Falwell A, et al. Relationship of safety
    climate and safety performance in hospitals. Health Serv Res
    2009;44:399–421.

  10. Taylor N, Clay-Williams R, Hogden E, et al. High performing
    hospitals: a qualitative systematic review of associated factors
    and practical strategies for improvement. BMC Health Serv Res
    2015;15:244.

Appendix A

組織風土 (Bradley et al., 2017)

Learning and Problem Solving (Factor 1)

  1. Clinicians are encouraged to creatively solve problems related to AMI care.

  2. There is good coordination among the different clinical units involved with the care of patients with AMI.

  3. The clinicians who care for patients with AMI hold each other accountable for high quality care.

  4. We rely on data to guide our improvement processes.   

  5. Our hospital has frequent interactions with outside organizations (e.g., other hospitals and professional associations) to acquire new knowledge on how to improve AMI care.

  6. In this work environment, people are interested in better ways of doing things.

  7. In this work environment, people often resist new approaches.

  8. In this work environment, people value new ideas.

  9. Despite the workload, people in this work environment find time to review how the work is going.

  10. In this work environment, someone makes sure that we stop to reflect on the team’s work process.   

Psychological Safety (Factor 2)

  1. If you make a mistake in this work environment, it is held against you.

  2. People in this work environment are able to bring up problems and tough issues.

  3. In this work environment, someone would deliberately act to undermine my efforts.

  4. It is difficult to ask others in this work environment for help.

  5. In this work environment, people’s unique skills and attributes are valued and utilized.

  6. People in this work environment speak up to challenge assumptions.  

Senior Leadership Support (Factor 3)

  1. Senior management has set reducing 30-day AMI mortality as a priority.

  2. Opinion leaders have indicated that current practices for patients with AMI can be improved.  

  3. Opinion leaders have encouraged changes in practices to improve AMI care. 

  4. The necessary financial resources for personnel and equipment are provided for the care of patients with AMI.

Commitment to the Organization (Factor 4)

  1. I would be very happy to spend the rest of my career at this hospital.

  2. I enjoy discussing my hospital with people outside of it.

  3. I think I could easily become as attached to another hospital as I am to this one.

  4. I do not feel like ‘part of the family’ at this hospital.

  5. I do not feel ‘emotionally attached’ to this hospital.

  6. This hospital has a great deal of personal meaning to me.

  7. I do not feel a strong sense of belonging to my hospital.

Time for Improvement (Factor 5)

  1. In this work environment, people caring for patients with AMI are overly stressed. 

  2. In this work environment, the time pressure gets in the way of doing a good job.

  3. In this work environment, people are too busy to invest time in improvement.

  4. There is simply no time for reflection in this work environment.



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