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LINE Pay の本人認証から見るテキストの重要性

つい最近、自粛の影響もあり趣味で絵を始めようと、iPad ProとApple Pencilを購入しようと思った時の話です。

現金から支払いをしたかった為、LINE Payを使用しようと考えました。

ところがその代金をチャージするタイミングでアクシデントが発生したのです。

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参照:LINE

犯罪防止の観点からだと思いますが、一度に10万円以上のチャージが出来ない仕様のようです。

2回に分けてチャージ

「一度に入金できるのは10万円まで」と書かれていたため、面倒ですが10万円と1万円の2回に分けてチャージしようと考えました。

ところが10万円をチャージ後に、1万円をチャージしようとしたところでさらにアクシデントが勃発しました。

なんと本人確認が済んでいないユーザーが1日にチャージできる上限金額自体が10万円だったのです!

テキストを設定した開発者が仕様を把握しきれていなかったのだろうかと、テキストを再度読み返して絶句しました。

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参照:LINE

「一度に」という文言が「1日あたり」に差し替わっていたのです!(絶望)

なぜ仕様を勘違いさせるテキストをわざわざ1度表示させたのかは謎ですが、その時私はきっと苦虫を噛み潰したような顔をしていたに違いません。

本人確認を促すテキスト

既に10万円をチャージ済みの私は、引き下がるわけにはいかず、本人確認に進みました。

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参照:LINE

そして説明を読むと「最短数分で本人確認が完了」と書かれており、ほっとひと安心したのを覚えています。

ですがそんな希望も本人確認実行後に届いたメッセージによって、本日2度目の絶望に変わります。

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参照:LINE

またテキストが差し代わってる...

本人確認前は「最短数分で完了」と説明していたにも関わらず、実行後の説明では「数日かかる場合がある」となっていました。

本人確認完了にかかる時間は、数分から数日の範囲であり、両方とも嘘ではないのでしょう。

しかし、これは意図的に表現を変えており、あまりにユーザーの感情を無視しすぎではないでしょうか。

開発者側にはさほど悪意がないかもしれませんが、フレーミング効果の悪用と受け止められても仕方がありません。

フレーミング効果とは?

アメリカにあるダートマス大学の実験で、AとBの2つの言いまわしで被験者に乳がん検診を促しました。

A「早期に発見すると治療の幅が広がる」
B「早期に発見しなければ治療が難しくなる」

Bの方が、より多くの人が検診を受ける結果になりました。

人は同じ内容でもその伝え方ひとつで受け止め方が大きく変わります。そしてこのような誰もが持つバイアスを、フレーミング効果と呼びます。

今回の本人確認を促すテキストについても、フレーミング効果が利用されています。

意図的に本人確認を後押しする表現を選択したのです。

普通の状況であれば今回の件に対して、何も感じなかったかもしれません。

ですが私には「すぐ支払いたい」というコンテキストが存在した為、この状況はまさに地獄です。

最終的に別の支払い方法でAppleへの支払いを済ませ、LINE Payに費やした時間は全てムダになりました。(翌日に本人確認完了)

行動経済学を悪用しない

イギリスではこうした誰しもが持つバイアスを悪用し、一時期問題となりました。

人は手に入りづらいものや、数の少ないものに対して、その価値を高く見積もる希少性の法則があります。

そこで、売上を上げる為に、航空会社が数に余裕ある座席を意図的に少なく表示して購入を促したのです。

行動経済学を利用してユーザーにアクションを促す場合は必ず誠実である必要があります。

ユーザー自身にとって有益かという観点を必ず忘れてはいけません。

まとめ

先ほど挙げた航空会社の例と比較すると、LINE Payのテキストはそれほど悪意あるものではありません。

むしろユーザーにとって、本人確認を済ませておく事が有益であるという考えのもと、書かれたテキストであった可能性すらあります。

ですがLINE Payは支払いをする為のサービスであり、本人確認を必要とするタイミングは急を要する場合も多いはずです。

デザイナーを含め開発者はあらゆるユーザーのコンテキストを想定してテキストを含めたデザインをする必要があります。

ユーザーがどういった状況にいるかで、その受け止め方は大きく変わるため、その選択によってはユーザーから信用を失う可能性があるのです。

初めから「一日の上限は10万円」「本人確認は数分から数日かかります」と書けば良かったのではないでしょうか。

そしてこうした開発では、売上げやコンバージョンを目標に掲げた職種の方もいます。ユーザーの代弁者となり「これはおかしくないですか?」と最もユーザー目線に立場、指摘できる職種がデザイナーである事も多いはずです。

デザイナーは常にユーザーに対して誠実でいましょう。そしてそれが長い目で見て、会社のためになるのです。



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