哲学科は必要か

哲学という言葉をみると振り向かずにはいられません。

最近は哲学科卒という著名な方の本がベストセラーになったりと

社会の中で哲学科の存在が少し浸透してきたような気もしていますがどうでしょうか。

私は哲学科を卒業したものですが、「哲学科卒」ということで珍しがられます。哲学科を卒業したみなさんはどこで何をしているのでしょうか。社会には出ていない?のか。

哲学科を共にした友人二人のうちひとりは中国人の家柄の素晴らしい方だったので、就職することは考えず勉強し続ける人生を。もう一人は教授を志しがめちゃくちゃ勉強していましたが、社会に出て数年働いた後、田舎で主婦すると言ってのどかな場所で暮らしています。

データが自分を入れて三人とはデータとも言えません。かく言う私も社会に出てから哲学勉強してましたという方にお会いしたことがないのです。

みんな哲学科だったことを隠して潜伏して生きているのでしょうか。どこへ行ってしまったのでしょう。

一昨日「哲学科あるある」というページを見つけました。


哲学科にいる従姉妹は卒論指導の教授から「いいですか、哲学科で院に行くというのは潜在的無職になるのと同じですからね」と言われたらしい。面白かった— ぎんちょ (@gintyo20) 2012, 7月 15


これ、哲学科の学生は必ずどこかで先生から言われているような気がします。

高校の倫理の授業にて、哲学を初めて教えてくれた先生に

「哲学科に行くことに決めました」と言ったとき、

間髪入れずに返ってきた答えは

「哲学科行ったら就職できないよ!」でした。

え?先生、哲学あんなに教えてくれたのに⁉

当然喜んでくれると思っていた私はまさかの反対にビックリ。賛成してくれなかったことにガックリ。

そして若く熱かったので

「就職するために大学行くんじゃないんで」そう言い放ちました。

月日が流れ就職活動がはじまった大学4年生。

法学部の友達などが大企業に次々と受かっていく中、ぜんぜん受からない私。

先生の言ってたこと本当だったーーー

そのとき初めて気が付いたのでした。

大人の言うことって合っているのデスネ。

私自身の個人的な問題で受からなったのかもしれませんが、就職活動を通してわかったのは

「なぜ人は生きているのか、部屋にこもって哲学してました」

という人と

「部活で主将やって皆をまとめていました。バックパッカーで世界を回りました」

という人がいたら

会社が求めるのは完全に後者の人たちだということ。学問するために大学に入ったのに学問した人は求められない社会なら大学って何のためにあるのか

当時そんなふうに感じました。しかし、会社からしたらそうした選択は当たり前でしょう。

「哲学科にいた人間」は使いにくいと思われる人種です。

取り扱いが難しいかもしれない人間をわざわざお給料払って取る酔狂な会社はありません。

会社に利益をもたらしてくれる人材を選ぶのが就職試験です。

哲学科の先輩や学びを共にした方々を振り返ると、ホントだ、なかなかに会社では生きにくい人たちでした。

しかしそもそも、哲学科の人たち、就職をしようなんて考えていません。教授になれる人は本当に一握りですが、できれば研究を続けて大学に残っていきたいというのが皆第一の希望であったと思います。

アカデミックな世界を愛している人たちゆえ、学問を続ける人が大半なのです。一般の企業に就職してみようなんて考える人が稀有な存在だったようでそういえば、院にはいかずに就職すると話した際には

「還俗するんだね」と言われました。「ゲンゾク」って初めて聞いた音でしたが、漢字浮かびました。言われている意味も完全に理解できてしまいました!


さすが私も哲学科( ;∀;)


就活現場で哲学科は異星人。

哲学科で就職しようとしている人は異星人。


いずれにせよ私は異星人でした。


アカデミックすぎて飛んでいる教授

哲学科というのは大学の中でも非常にアカデミックな特殊な空間と言えるかもしれません。

私の場合は父に院には行かせないと早い段階で言われていたため入学当初から4年間で思いっきり学び、きっぱり卒業する予定でした。

哲学科の切れ者たちを目の当たりにして自分には院に行って研究を続けるほどの” 鋭さ”がないとわかっていたのも卒業の意を固くしました。

同時に「清濁併呑」善も悪も全て受け入れる生き方ができるとしたら俗世間の中にこそ面白い哲学があるのではないかと思えたことが、大学に残ることに固執しないで済んだ一番の理由だと思います。

哲学が学問の根源と言われるのを表わすように私の指導教官をしてくださった哲学者千葉先生の元には様々な学部の学生が集まりました。

ある日、数学科で研究をしているという方が世界的な賞を受賞されるという報告を千葉先生にしに来ました。

すると突然、私の方を向いて

「彼と結婚したらもう就職しなくていいよ。結婚して研究室に残ったらいいよ」

と嬉しそうに言う先生。

研究できることが人生において何よりの幸せだという確信からくる発言。

研究室に残って欲しいとは、ありがたい言葉でしたが

いや、まずお相手の方とは初対面だし(';')あちらの意見もおありでしょうし失礼ですよね。しかしそこで聞いていた張本人も微動だにしないから、やっぱり天才や切れ者と言われる人はちょっと普通の感性ではないのかもしれません。

それでも結婚ってそういうふうに決めないでしょ。

卒業することになりました。


「今までの人生で一番の失敗はなんですか?」という質問あったけど、間髪いれずに「哲学科に入ったことです」と答えられることが哲学科のメリット — ひふみなみ (@hfmnmk) 2012, 7月 4
哲学科の人に哲学科って何してるの、って聞いてもだいたい「分かんない」って言うし自分が何をしてるのかよく分かんないってことそのものが哲学っぽくてエッジが効いてる。

就職を見据えた人間が哲学科に入ってきたら、その人は確かに失敗してしまったかもしれません。

メリットは珍しい人として記憶に残る。哲学科卒をネタに出来るようになってきたこと。それくらいでしょうか。

しかし思考すること、その方法を学び。「自分が生きていること」そのものが哲学なのだと思えるようになったのは、現世をはかけ離れたアカデミックな世界に埋没したあの時間があったからこそ。


最近、哲学が世のみなさまにも必要とされてきている

そう感じるのは、私だけではないことを祈ります。

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