見出し画像

アートを通して人が輝き、つながる美術館をご存知ですか?

表現することは好きですか?

例えば、絵を描くことはどうでしょう。

ずっと絵を描くことが好きな人もいれば、以前よく描いていたけれど今は描かなくなった人もいるのではないでしょうか。

そして、描かなくなった人の中には「正しく描かないといけない」という考えがあって、素直に絵が描けない人もいると思います。

こんなことを書いている私も、図工の授業で絵の評価が良くなかったことがきっかけで、絵という表現への苦手意識が芽生えた人の一人です。

でもこの世に、表現をしちゃいけない人はいません。誰だって同じように、心が動いたことを文章や絵、映像や音楽のような形で表現をして良いはずです。

また、表現は心も豊かにしてくれます。

悲しい気持ちを文章にしたら、心が軽くなった。恥ずかしくて伝えづらいありがとうの気持ちを絵にしたら、心が明るくなった。

素直な感情を表現することで、あなたがもっとあなたらしくいられる。今までどこかで、表現がもたらす豊かさに救われた人は少なくないはずです。

このように表現との出会いを通じて、誰もが豊かに生きてほしいと願う美術館が、福島の猪苗代町にあります。

それが、はじまりの美術館さんです。

実は、はじまりの美術館さんが生まれるきっかけは、アートではなく福祉だったそうです。

はじまりの美術館さんを運営する安積愛育園さんは、主に知的に障がいのある方の支援を行う社会福祉法人です。さまざまなこだわりや特性を持った利用者さんが、個性を活かして作品を作る姿を見て、

「利用者さんの作品をもっと多くの人に届けたい」

というスタッフさん達の想いが膨らんだことが、美術館が生まれるきっかけになったそうです。

実は、館長の岡部さん曰く、美術館を運営しているうちに福祉とアートのつながりもより濃く見えてきたそうで。それについては、こちらのnoteや記事内の動画をぜひご覧ください。

ちなみに、アートを専門的に勉強していない人のアートは、アール・ブリュットと言われることがあるそうです。

アール・ブリュットとは、

日本語で「生(き)の芸術」。フランス人画家のジャン・デュビュッフェが、伝統や流行、教育などに左右されず、自身の内側から湧きあがる衝動のままに表現した芸術のことを指し、提唱した概念

はじまりの美術館ホームページより

です。はじまりの美術館さんでは、こうしたアール・ブリュットの作品や現代アートの作品を中心に展示が行われています。

興味深い作品をひとつ、ご紹介します。

きになる⇆ひょうげんホームページより

一見、なにでできているのか分かりにくい作品ですが、実は一粒一粒が紙でできています。

紙を丸めることが好きな作家さんの作品を、公募展の審査員の意見を参考に、はじまりの美術館のスタッフさんがより素敵に見える方法を工夫して、展示された作品だそうです(元々、このように山のような形で積み上がっていたわけでなく、単なる丸まった紙の粒たちだったそう)

ちなみに、こちらの作品が展示されていたのはこちらの展示会。

はじまりの美術館さんでは、このように作品がより魅力的に見える方法や館内のどこに展示するのがいいかなど、細かいところまでスタッフさんが考えて展示会を企画していらっしゃるそうです。

ちなみに、今までに行った展示会やそこに作品を出している作家さんのストーリーに関しては、ぜひこちらをご覧ください。

館長の岡部さんをはじめとする3人のスタッフさんが、普段なかなか聞くことができない展示会にまつわるエピソードや温かい想いを語っていらっしゃいます。

今までの展示会の中でも、はじまりの美術館が生まれるきっかけとなった作家さんの青木尊さんのエピソードは、とても興味深いです。

青木さんの作品には、ちょっとした秘密があります。色鮮やかな絵に描かれているのは、青木さんの好きなものたち。

力強い表情の人物が描かれていると思えば、それが青木さんの好きなプロレスラーだったり、かっこいい虫が描かれていると思えば、これもまた青木さんが好きなカマキリだったり。

実は青木さん、絵を描くだけではなく、時にはカマキリの真似をして周りを楽しませてくれる一面もあるそうで。そんなユニークでエンターテイナーな青木さんの魅力が溢れ出る作品は、どれも私たちを元気付けてくれます。

また、はじまりの美術館さんのある展示会に出品していらっしゃった全盲の写真家・しらとりけんじさんの日記には、不思議と元気をもらえます。

「全盲でどうやって写真を撮るの?」という疑問が入り口だったはずなのに、いつの間にかしらとりさんが感じている景色の鮮やかさに魅了されてしまう記事です。

「はじまりの美術館って、なんだか面白そう!」と思ってくださった方には、運営母体の安積愛育園さんの作家さんを紹介するこちらのサイトもおすすめです。

作品の画像をダウンロードすることもできるそうなので、おうちで作品を楽しむことはもちろん、スマホやパソコンの待ち受けとしてお気に入りの作品を探してみるのはいかがでしょうか。

社会福祉施設のスタッフさんの温かい想いから始まったプロジェクトが、今や施設の垣根を超えて、多くの人の表現が輝き、つながりがはじまる場所になっています。そして「私も表現をしていいんだ」と勇気をもらえるきっかけも、たくさん詰まった美術館です。

このnoteでは、私たちが「愛とアイデアがある」と感じた企業さんについて語り、そして、できれば繋がり、そこから愛とアイデアを生み出すきっかけを作りたいと思い、始めたものです。

今回は、アートを通して人が輝き、つながる美術館、はじまりの美術館さんをご紹介しました。次回の愛とアイデアのある企業もお楽しみに。