Web広告運用を始める前に「自社サービスが競合よりも選ばれる理由」を磨き上げたい
1.はじめに
私自身が事業会社でwebマーケティングの仕事をしているので、GoogleやMetaのような各プラットフォーマーの広告製品について新機能や特性を学び、活用方法を考える機会が多いです。
一方で、尊敬する多くのマーケターは顧客理解と「自社サービスが競合よりも選ばれる理由作り」に多くの時間を使っているように感じています。
今回は尊敬するマーケターである北の達人コーポレーション木下さん、OFFICE MASA伊東さん、Strategy Partners西口さんの文献を参考に「自社サービス・製品が競合よりも選ばれる理由作り」について整理したいと思います。
2.Webマーケティングの全体像
まず、Webマーケティング全体を俯瞰し、広告運用の立ち位置を理解したいと思います。
木下勝寿さんの『ファンダメンタルズ×テクニカルマーケティングWebマーケティングの成果を最大化する83の方法』で登場するWebマーケティングの全体像資料は下記。広告運用が一番最後の工程であることが分かります。
つまり、顧客を理解して「自社のサービスが競合よりも選ばれる」理由を明確化していくことから始める必要がある。
ペルソナ、インサイト、カスタマージャーニー、パーセプションフローモデルなどの定性情報を集め、顧客の解像度を高めていく。
また、個人的な経験を踏まえると、定性情報の収集においてロイヤルカスタマーにインタビューするのは得るものが多い印象。
お客様が何にもやもやしているのか、葛藤しているのか、痛みを感じているのか、便益を感じて頂いているのか、納得感をもって理解できます。
3.ポジショニング分析フレームワークで自社が競合よりも選ばれる理由を磨く
上記を進める上で活用できるフレームワークが
『ポジショニング分析フレームワーク』。
4.POINT OF DIFFERENCE(POD)
PODにおいて重要なことは、サービスないし製品の特徴・成分・機能が顧客主語で便益に変換されているかどうか?競合比較で独自性があるかどうか?
ノバセル田部さんの言葉を借りると、
POINT OF DIFFERENCEとはつまり競合対比での差別化ポイント。
5.POINT OF FAILURE(POF)
顧客がサービス・製品を買わない理由を無くすことがFirst Step。
6.POD/POPはどう最適化させていくのか?
POD/POPを最適化していく上で、3つ観点がある。
①優位性
サービスおよび商品の優位性で圧倒するということ。
【事例】Gillette VS Schick
男性用剃刀のGilletteとSchickは当時どちらも3枚刃だったが、P&Gが研究開発によりGillette5枚刃を商品化。
Gilletteは5枚刃という機能を有したことでPODが「肌に優しい、剃り残しなし」になりSchickのPOFが「肌に優しくない、剃り残しがある」に転じた。
②重要性/必然性
サービスおよび商品が選ばれる理由部分の
重要性・必然性を最適化する。
【事例】ジョイ VS ファミリーピュア
台所洗剤JOYは油汚れに強い洗剤として販売が開始され、40%シェアを取る製品に成長。
しかし、競合製品ファミリーピュアの低価格化によりジョイの成長は鈍化しシェアは30%を切るように。
そこから、同製品は顧客が「洗浄力」以外の理由で台所洗剤が選ばれていることを発見する。
具体的には、ジョイのパッケージは主婦から「ダサい、攻撃的」と思われており、台所に置きたくないと思われていることに気付く。
そして、ジョイはパッケージデザインのダサさ、攻撃的な印象を払拭し、POFをPOPに変えることで、同製品が選ばれる必然性を作り直した。
③カウンター
PODにおける新機軸を作り出して、競合にカウンターをしかける。
【事例】アリエールイオンパワージェル VS アタック
当時、洗剤市場は激しい競争が起っていたが、
アタックはダントツのシェアを誇っていた。
アリエールイオンパワージェルは液体洗剤市場では国内1位だが、売上は縮小していた。
アリエールイオンパワージェルは価格をアタックより落としたり、機能開発を行うのではなく、PODにおける新機軸を作り製品差別化を図る。
具体的には、粉末洗剤の洗浄力では落とせない「洗剤カス」の着目。液体洗剤なら何も残らないことをPODにした。
7.ポジショニング分析フレームワークがプロダクト&コミュニケーションアイデアに繋がる
個人的な見解ですが、ポジショニング分析フレームワークを通して、磨きこんだPOD/POPは西口一希さんが『たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング』で書かれていたプロダクト&コミュニケーションアイデアの開発(再開発)に繋がっていくと考えています。
競合の動きから、短い期間で自社製品の独自性が失われやすい現代において顧客を理解した上で、ポジショニング分析フレームワークを活用し「自社が競合よりも選ばれ続ける理由」を磨き続ける必要があると感じました。
8.マーケティングにおける独自性とは比較優位性ではない
自社サービス・製品における独自性とは何か?定義を補足。
マイケル・ E・ポーターが著書『競争の戦略』で使用した言葉で、本来は独自性を意図して提唱されているが、一般的には、競合と同じ便益において「〜がより高い、強い、優しい、うるおう、清潔に……」などの比較優位性の意味だと誤解されている。
独自性がなく、比較優位性のみであれば、独自性×便益四象限のコモディティに近い状態で戦っていることになり、ポーターが提唱した元々の差別化の意味とも異なる。
自社サービスの独自性を開発する、磨きこむフェーズにおいて注意したい点だと思いました。
9.「自社サービスが顧客に選ばれる理由」を広告ランディングページに凝縮させる
前提 プラットフォーマーも広告主も望んでいること
前提として、Google・Metaなどの大手プラットフォーマーは運用型広告の入札勝利ロジックとして、上限クリック単価だけでなく、広告の品質も重視しています。
なぜなら、上記プラットフォーマーはユーザーへの価値発揮を通じて、売上を最大化させたいと考えているからです。
そして、広告主側も、高品質な広告を伴い、低CPC・CPAで事業ターゲット数が最大化されることを望んでいます。
広告クリエイティブに必要なこと
上記前提から考えると、広告クリエイティブは①視認性が高く、②顧客に便益が十分に伝わる内容であることが望ましいと思います。
そして、広告クリエイティブの②こそ、前段で記載した「自社サービスが顧客に選ばれる理由」を徹底的に言語化したものであるべきだと思いました。
なので、広告ランディングページ上のコンテンツに「自社サービスが顧客に選ばれる理由」を徹底的に、落とし込んでいく事が広告運用において重要だと考えています。
最後に元Googleで5年間に渡り、Hagakure、GORINの企画推進をリードしていたTomoyuki Yonemitsuさんのnoteから下記文章を引用したいと思います。
上記はGoogle 広告を主語にした話ではありますが、広告ランディングページのコンテンツを充実させることがいかに重要か分かる内容だと思います。
10.「自社サービスが顧客に選ばれる理由」を磨きこんでから「どこで何を謳うか?」を考えていく
PESOモデルの活用
「自社サービスが顧客に選ばれる理由」が明確に言語化されている状態とは、広告主が顧客に何をどう伝えるか?軸がハッキリしている状態と捉えることができます。
上記状態であれば、PESOモデル観点でどこで何を謳っていくのか?も整合性をもって施策に落としていけると思います。
私の場合、会社内の役割はWebマーケティング担当なので広告施策をメインに取り組みつつ、適宜オウンドメディア担当と連携する流れになると思います。
各メディア領域ごとの施策
ちなみに、Spinsucks社が公開しているPESOモデル(2020年版)を見ると各メディア領域ごとの施策が多岐にわたることが分かります。
以上です。
勉強を続けます。
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