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【オススメ本】出町譲『日本への遺言 地域再生の神様 豊重哲郎が起こした奇跡』幻冬社、2017


人口300人に満たない小さな集落がたった一人のリーダー「豊重哲郎」氏により、今や年間5000〜6000人が視察に訪れるまちとなった。舞台は「やねだん」こと鹿児島県鹿屋市串良町柳谷集落。

土着菌堆肥からサツマイモ栽培オリジナル焼酎開発、トウガラシ栽培からコチュジャン開発などの六次産業化により、集落の独自財源を築き高齢者には一万円のボーナスが支給されることで一気に全国区になったと聞けば、思い出す人もいるだろう。また、トータルで1000人を超える方が「故郷創世塾」で学ぶなど、地域づくりに関わる方で知らない人はいないのではないだろう。

その傑出したリーダーである豊重さんを師と仰ぐジャーナリスト出町氏が豊重さんのフィロソフィーやストーリーをエッセイ方式で綴った書が本書。

やねだんや豊重さんを紐解くキーワードは「自主財源(補助金には頼らない)」「全員野球」「焼酎」「ボーナス」「迎賓館」「防災無線」「文化」「声の抑揚」など色々とあるが、挙げきれば実にキリがない感じである。

そこで、細かなストーリーは本編を楽しんでいただくとして、ここではコラムとして掲載された15の言葉だけを紹介したい。

・人は宝。すなわち人財である。
・論ずるよりもまず、リーダーが率先垂範。
・急ぐな、慌てるな、近道するな。
・仲間と物事を始めるときは、一人一人がレギュラー選手。補欠の人間などいない。
・人は情熱と感動と洞察力を持ったリーダーに必ずついてくる。
・良きリーダーなくして組織の活性化はあり得ない。
・出会いは最高のチャンス。メディアは最高の友。
・教育とは「褒められて成長」「褒められて感動」。
・挑戦は喜びの延長線。
・夢ある創造力は前進。満足はただの後退。
・満点のリーダーなんてどんな社会にもいない。
・立ち位置を変えて、相手の心を読む。
・アイディアの養成場はどこにもない。
・パートナーとブレーンは最後の切り札。
・後継者育成ほど難しいものはない。だからおもしろい。

以上であるが、いずれも含蓄が深く、噛めば噛むほど味が出てきそうな言葉である。

本書のタイトルは「やねだんへの遺言」でも、「地域づくりへの遺言」や「地域再生への遺言」でもなく、「日本への遺言」となっている。

すなわち、上記の言葉は地域づくりだけでなく、企業や教育、家庭でも応用できるエッセンスが詰まっていると思われる。

豊重さんはまだ現役であり、遺言というタイトルに入れるのはいささか失礼な気もしたが、それぐらいの重さと深さがあるということであろう。

地域づくりに関わる方はもとより、リーダーシップにビビッと来た方にはぜひ一読をオススメしたい。

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