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イタリアで遺品を求めて。

ある日、ボクの電話に普段、アルバイトさせてもらっている日本人の知り合いから電話がかかってきた。

大学の実習室にかつて在籍していた日本人の作品が保管されてるから確認してきてほしいという事だった。誰の作品の事か聞いた時、ふとイタリアに来て最初の頃に聞いた話を思い出した。

それはボクがイタリアに来る一年前に自殺した日本人留学生の話だ。

◼️入れ替わりで入っていたボク

その学生は日本で職人関係の仕事をした後にイタリアに来たようで年齢も結構高かったように聞いた。自殺する数日前まで周りと普通に会話して夜は飲みに行ったりしてたがある日、自分の部屋で手首を切って自殺した。イタリアに来て2年目だった。

その時、家族は遺体を引き取りにイタリアに来てそこで葬式も行ったらしい。大学の作業場に生えてる大きい木の隣に植えてあるオリーブの木はその学生の弔いのために大学が植えたそうだ。

その話をイタリアに来てすぐに周りから聞かされた時、周りのボクに対する繊細なモノを触るかのような対応に合点が入った。特にボクはイタリアに来てからも単独行動が多く作品を作る時くらいしか喋らないし同じ日本人で職人出身という事で警戒されていたのだ。

ボクはその日本人学生の話を聞いた時、一笑に付したのを覚えている。

「これから必死でやらないといけないのに自殺するってアホやん。日本に帰ってから死ね!」とか暴言をイタリアの教授に吐いて作業に戻ったのを覚えている。

自殺した日本人のせいでボクを割物に触るような接し方をされて腹が立った。

それ以来ボクはその話には触れなかったのだ。だが今回、少し話が複雑だった。

◼️反故にされた大学との約束。

日本人学生が自殺した当時、両親は遺体と共に遺品も引き取るつもりでいたが大理石の彫刻が数品あってその発送を大学側が負担して日本に送るという事で両親は日本に帰っていったらしい。それが2019年から3年前ということになる。

そして今回、その自殺した日本人留学生の両親が3年待っても全く遺品が返ってくる気配がないので現役学生のボクに探してほしいと連絡してきたのだ。

ボクはすぐに当時その学生に教えていた教授に作品がどうなっているのか確認しに行った。すると思い出したかのように

「彼の作品はしっかり保管してあるよ!いつ送ろうか?」

いつ送るとかの問題じゃない。どうして3年も経ってるんだ?と聞くと大学の予算やらなんやら訳の分からん御託を並べ出した。

「作品どこにあんの?両親に画像を送るからみせてよ。」

ボクがそう言うと明日にしてくれ、という事になった。他の先生も呼ぶからと。

正直、既に会話中からガッカリした気分だった。

遺品の作品を日本に送る事なんてボクに言われるまで大学側の人間は完全に忘れていたのだ。

こういう無責任な事はこのイタリアでは本当に多い。日常茶飯事である。だからボクは重要な事はどれだけ相手が年上だろうと信頼してない相手には徹底的に承諾させる癖が付いてしまった。

イタリア人に合わせてヘラヘラしてたら「オレらのペースでいいんだ」と安心を与えてしまうのだ。

ボクは常にやる気も満々だしこれくらいでボク個人が揺らぐ事は一切ないが本当に残念だし複雑な心境になる。正直悲しい。



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