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人事としておさえる 心理学 5つの観点

人事は人と相対する役割。

だからこそ、人の理解、気持ちの理解をすることが大事。だけれども、実際の業務の中で学ぶことは基本的には手法やルールが多いです。

では人事が必要な心理学の知識ってどんなものだろう?

突き詰めればたくさんあるけれど、初歩的な話として知っておいた方が良いことをいったん5つの観点で超簡単にだけど整理してみました。(心理学の範疇外も含むかも)

職業選択の話

まずは20世紀初頭にでてきたフレデリック・テイラーの「科学的管理法/テイラー主義」

時間研究や動作研究によって仕事を分解。客観的に仕事を管理する手法を考え出しました。

ノルマ設定→出来高みたいな話もここから。

ノルマ設定するために、職務分析をし、標準化が進みました。一方でいわゆる歯車的な捉え方もできるので人間性阻害の問題も。

そのテイラー主義を補完し、「産業心理学」の父とも呼ばれるのがヒューゴー・ミュンスターバーグ。

最適な人材の選抜、最良の仕事方法、最高の効果発揮の3つの枠組みを提唱。

テイラー主義が広まった結果、人間性阻害という欠点が明らかになった中で行われたエルトン・メイヨー「ホーソン実験」

人間関係生産性に影響することを示して、人間関係論が発展。非公式組織、職務満足感、モラルなどの人間関係管理の主要な領域が広がった。

ひとつひとつの正しい理解は当然あるのだけど、どういう観点で研究が進み、それがどう時代の中でどのように展開されてきたのか理解するのは大事と思います。

バイアスの話

平たく言えば「偏見」の話。

意識的なものと言うよりは無意識に発生してしまっている「偏見」。人事の場合で言えば採用や評価の時に言葉としてよく出てくるのかなと思います。

よく聞くのは以下の10種。自身が組織人として意識しているものです。

「1.ハロー効果」「2.寛大化/厳格化傾向」「3.中心化傾向」「4.期末誤差」「5.確証バイアス」「6.類似性効果」「7.保守性」「8.感情バイアス」「9.生存者バイアス」「10.ジェンダーバイアス」

ひとつひとつはググればでてくるし有名な話でもあるので詳細は略します。

人事は企業の中で人や組織に働きかける分、当事者としてバイアスにまみれている印象もあります。

バイアスは意識的に排除し難いので仕組みに落とし込む必要があると考えます。

特にジェンダー、多様性に関わるものについては、本当に社会課題として根が深いと感じます。だからこそ、アンコンシャスバイアスについて正しく理解しておくことが大事です。

組織づくりの話

ダグラス・マクレガーの「XY理論」

X理論は人は怠け者と前提をおくので飴と鞭の話になる。Y理論は元来、人は働きたがる存在としている。

どちらの前提に立つかで組織の取り組みは変わる。最近で有名なのはメルカリの制度に関するスタンスかなと。

性善説に立った上で、企業組織が社員に何にできるかを一貫して考えています。

個人的にはY理論の延長にあるものかなと勝手に捉えているのがクリス・アージリスの「未成熟/成熟理論」

人は成熟な状態に向かうものとして、管理ではなく権限移譲を進めるべきとしています。

パーソナリティの成長を阻む要素として、仕事の専門化、命令の系統、指揮の統一、管理の範囲の4つを挙げていて、普遍的な原理原則と捉えられます。

あとはフレデリック・ハーズバーグの「二要因理論」

衛生要因と動機付け要因に分け、仕事に満足度を高める要素と、不満足を減らす要素が異なることを示しています。

言葉としては有名でありつつ、制度設計、人事施策の計画において考慮されてないこともありそうです。

キャリアの話

キャリアの発達段階の話もまた色々ありますが、個人的に論説というよりはキーワードとして大事だなと思っているのが「トランジション」という考え方。

転機や移行期を示しているもので、人生のステージが変わるある年齢段階で発生するイベント。

「トランジション」を理解すると、漠然とした不安から誰もが経験する時期的イベントであり、解決があるものだと捉えられます。

個人の心持ちの話ではキャロル・ドゥエックの「マインドセット「やればできる! 」の研究」も原理原則に近いと捉えてます。

自分の能力はもともと備わっているものとする「硬直マインドセット」と、能力は努力で成長させることができる「しなやかマインドセット」。別文献となるが、the passion paradoxによれば情熱も同じです。

私自身が実感しているのがジョン・クランボルツの「計画的偶発性」

個人のキャリアの8割は予想しない偶発的なことによって決定される。その偶発的なことを自身の行動によって計画的に導くことでキャリアを築く。提唱される5つの行動指針は好奇心、持続性、楽観性、柔軟性、冒険心。

リーダーシップの話

リーダーシップの研究として、元々は「特性理論」が20世紀初頭に出てきていますが、それだけでは説明ができないということで、後天的に学習可能と考える「行動理論」が登場。

可能性を広げた一方でメンバー特性、集団特性などの考慮も必要となって「状況適合理論」が広がりました。

(そんな中でいまだに個人の特性"だけ"を追おうとする姿をみかけると、どうなんだろうと思ってしまいます・・・。)

リーダーシップの分解として2軸で整理することが多いです。

三隅二不二が提唱した「PM理論」は職務遂行機能と集団維持機能の2軸。

ブレイクとムートンによる「マネジリアルグリッド」は業績への関心と人に対する関心の2軸。いずれも業績と人間関係で分けている。

リーダーシップの理論は色々ありますが、個人的にハーシーとブランチャード「状況対応リーダーシップ(SL理論)」、ロバート・ハウスの「パス・ゴール理論」はなるほどーなと思いました。

自身のリーダーシップとして意識しているのはロバート・グリーンリーフの「サーバントリーダーシップ」です。

―――

入口の話なので、網羅性や深みみたいなところはガタガタだけど、個人的に実務の場面で理解しておくべきだなーと感じたことのある話を集めてみました。

これからの組織づくり、新たな人事の世界、みたいな話をするのは好きだけど、0⇒1をつくるためには1⇒0をしなければなりません。

だからこそ、前提を学ぶ大切さはあります。学び続けなきゃ。

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