見出し画像

あの三毛猫の柄を、大切に

専門性 ★~★★
・ポイント
三毛猫の毛並みはどう決まるの?
同じ三毛猫のクローンでも、毛柄は同じなの?

事前知識 猫のような哺乳類はXY型の性染色体(ヒトと同じ)である。
雄はX染色体とY染色体を一本ずつ持ち、雌はX染色体を二本もつ(それぞれ一本ずつ親から受け継がれる。)


三毛猫のまだら模様は、なんとも愛くるしい。

その三毛猫の毛柄に同じものはない。全く一緒の柄という三毛猫は猫歴史上存在しないだろう。それはなぜだろうか。そもそもなぜ、あの毛柄ができるのであろうか。

猫の毛色を決めるのは、遺伝子である。どの遺伝子が使われるかで、生える毛の色が決まる。
では、その毛の色の遺伝子はどこにあるのだろう。

染色体(DNAがまとまった棒状のもの)に全ての遺伝子がある。
猫のX染色体と呼ばれる染色体は、二種類ある。それは黒毛の遺伝子をもつX染色体と、茶毛の遺伝子をもつX染色体である。
この二種類どちらかのX染色体をもつかどうかで猫の毛色は決定される。
つまり、黒毛のX染色体しかもたないと、茶色の毛が生えることはない。逆のこともしかり。


さらに、雌猫は性染色体の組み合わせはXXであるので、黒毛の遺伝子をもつX染色体一本と茶毛の遺伝子をもつ染色体一本をもつことができる。
(もちろん、X染色体の組み合わせによって、黒毛の遺伝子をもつX染色体しかない雌、茶毛の遺伝子をもつX染色体しかない雌も存在する。)

ここで、予備知識の説明をしよう。
雌の細胞は二本あるX染色体のうち、どっちか一本を使えないようにさせて、保存しておくことができる。
(これは、XY型生物種の細胞では雌雄で遺伝子数が異なってしまうため、活躍するX染色体数を同じにしなければならないというわけがある)
これによって不活性化されるX染色体はランダムに決められる。
つまり、雌の各細胞では、どっちかのX染色体は活躍しているが、どっちかのX染色体は機能していないのである。

これをX染色体不活性化という。
それは、数千個の細胞からなる発生初期の段階で起こり、ランダムにどちらかのX染色体が不活性化していく。
そして、黒毛の遺伝子が機能する細胞と茶毛の遺伝子が機能する細胞に二種に分かれる。(この時点で黒毛を生やせる細胞か、茶毛を生やせる細胞かが決まる)
その二種の細胞は分裂を繰り返し、それぞれの組織を形成する。
最後に、その一部が皮膚を形成し、それぞれの機能する遺伝子にあった毛を生やし、見事にかわいらしい三つの毛をもつ猫が生まれる
なお、白毛は別の遺伝子の影響によるものである。

このように、三毛猫の毛柄は遺伝子調節の結果生まれたものであり、全くの偶然にあの三毛猫の毛柄はつくられる。
これで全く同じ毛柄が存在しないと言えることが理解できたのではないだろうか。

あなたの名前の形に見える毛柄をもつ三毛猫が亡くなってしまい、その三毛猫との再会を渇望しているとしよう。
すると、あなたはそのクローン三毛猫を作り出し、もう一度会おうと決意するかもしれない。
しかし、X染色体不活性化がランダムに起こるので、違った魅力的な柄をもつ可愛いらしい三毛猫と出会えることとなるだろう。

この記事が参加している募集

#最近の学び

181,879件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?