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今日の一枚〜沢田研二『G.S. I LOVE YOU』

 佐野元春さんと伊藤銀次さんにとって、そして沢田研二さんにもだな、重要なアルバムを昨日聴き返してみました。
佐野さんがこのアルバムに用意した曲は「彼女はデリケート」、「I‘M IN BLUE」、「THE VANITY FACTORY」と名曲揃いで、ファースト・アルバムのアウト・テイクだった「I‘ M IN BLUE」以外はこのアルバム用に書き下ろした曲だったと記憶しております
ちなみに曲を依頼された佐野さんは「この曲は銀次にアレンジしてほしいんだ」と話したとか。
銀次さんはその言葉に「他のもっと名前が通った人がやると思うよ」と答えたとか。
その後、銀次さんに編曲の依頼が来たのはその直後だったとか。
じゃ、行ってみよー。

・沢田研二『G.S. I LOVE YOU』(UPCY-6817/ユニバーサルミュージック)

 当時の銀次さんは佐野さんのレコーディングで編曲、実質的プロデュースは行っていましたが、ナイアガラ・トライアングルVOL.1やバイバイセッションバンドに参加したのが目立つ程度でアルバムの編曲を任されるという発想は銀次さん自身になくて当然でした。
ちなみに銀次さんの前にアレンジを担当していたのは後藤次利さんでしたから、次に銀次さんというのはかな、ら意表をつく人選だったようです。

 このアルバムのレコーディング時点では沢田さんのレコーディング及びライヴのサポートはまだAlwaysが担当していて、その後長年サポートすることになるEXOTICSとメンバーは重複はしていますが、まだニューウェイヴに移行する前の段階でした。
ちなみに銀次さんとはバイバイセッションバンドで活動を共にした吉田建さんや、元ジュリエットの柴山和彦さんなど沢田さんとこの後活動を長くするメンバーが既にAlwaysにはいたわけですよ。

 ソングライターとしてこのアルバムにはかまやつひろしさんや沢田研二さん自身、銀次さんも参加しています。
この顔ぶれだと佐野さんのファースト・アルバム『BACK TO THE STREET』でのブリティッシュ・ビートを踏襲しつつも、ニュー・ウェイヴ・タッチな編曲をしていたからこそ、作品の良さを引き出せると予想しての起用だったと推測できますね。

 沢田さんにとっても特に「THE VANITY FACTORY」はEXOTICSのみならず、吉田建さんと村上ポンタ秀一さんに柴山和彦さんらによるTHE JAZZ MASTERなどでも重要なレパートリーになっています。

そして、AlwaysからEXOTICSへの移行期だったこともあって、レコーディング・セッションにムーンライダーズの白井良明さんを呼んだことで、銀次さんの次にレコーディングを実質的にプロデュースする人材が見つかったというのも興味深いですね。
沢田さんにとっては新しいソングライターとアレンジャーを手に入れたアルバム だったし、銀次さんにとってはプロデューサーへの道を開いたアルバムでもあるわけなんですねー。

 佐野さんにとっても沢田研二さんに曲は書いたことや銀次さんとの作業がナイアガラトライアングルVOL.2への参加を決定的にしたという意味でターニング・ポイントになったというわけですよ

 この辺を考えたら、このアルバムは日本のロック、ポップス史上重要なアルバムだと断言できるわけです。
大瀧詠一さんはこれら全てを見通した上で行動していたことは非常に深いと実感しています。

 勿論、これらの知識がなくても最高のアルバムですから、簡単に入手できる今のうちに是非。

 ではまたー。 

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