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デンマークのバスに揺られて、いつだか書き記していたメモ。


北欧の冬明け。

いつのときも、どこにいても、季節を知らせてくれるのはいつも自然のうつろいだなと感じる。
殺風景だった広大な平野に、いつのまにか一面の菜の花畑。

菜の花の黄色と、デンマークの澄んだ青空に見惚れて写真を撮ろうとカメラを構えたあと、脳裏にウクライナの国旗が巡り、なんとなく手をとめた。

ぼんやりと1人、長距離バスの窓から世界を眺めて、自分の所在地に輪郭を与えようとしている。さみしいような、かなしいような、うれしいような、しあわせなような。一周まわってこのデンマークの土地のように平たんな心持ちに気づく。

同じところを走っているようなかわり映えのない車窓からの景色は、走馬灯か、穏やかな悪夢のようで、忙しく思考だけが動いていく。

二羽の太った鳩が、同じようにうねりながら飛んでいる。いかにも仲良さげに着陸するところまでを見届けられた。こんなふうに飛び方まで合わせて飛ぶのか、となんだか心底感心する。前方に飛び立つ者を見続けて飛べば、互いに自然と似てゆくのだろうか。この鳩同士がお互いを唯一の存在だと決めて同じように飛び、同じように着地することを決定づけたことはなんなのだろう。

大切な人たちを想いながら、窓を眺め続ける。あの鳩みたいに、素直に飛べたら気持ちがいいんだろうな。そんなことを言ったら「いいきなもんだな」と鳩に怒られるかもしれない。


鳩の飛ぶ姿にさえ、何かを投影し思いをめぐらせ続けていられる。これはなんなのだろうと思うところ、こうやって死ぬまで生きることを模索し続けることは人としての性なのかもしれない。

だから、生きていけるのかもしれない。

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