見出し画像

【共通テストの物理攻略法】2.21年度共通テストを振り返って

お久しぶりの方はお久しぶりです。K.T.と申します。
さて、本日は共通テストの物理に関して、初年度の振り返りをしていこうと思います。基本情報~傾向までは比較的データを基にした客観的な情報を、最後の所感・展望の項目では、実際に自分が解いた感想を含めて分析を行っています。時間がない方は所感だけでもご一読いただければ幸いです。
(問題→ 第一日程 第二日程 [産経新聞HPより。以下の引用も同じ] )

21年度大学入学共通テスト:物理

<基本情報>

河合塾データネットによる集計では、
第一日程(1/16,17):平均点は58.9点、標準偏差は19.2点 (62,094人採点)
第二日程は大学入試センター(DNC)の速報値で、
第二日程(1/30,31):平均点は49.89点、標準偏差は22.74点 (145人採点)
とのことでした。第二日程の母数が圧倒的に少ないため、正直比較はできませんが、昨年の平均62.0点(河合)よりは低い結果となりました。
しかし一昨年の平均56.94点(DNC)と比べると、物理においては必ずしもセンター試験よりも点数がとりづらいわけではないことが分かります。
[※点数がとりづらい→難易度が難しいという話ではありません]
(なお事前の告知では、共通テストはセンター試験よりも10点下げ、平均点を50点とするよう調整する方針でした。)
また試行調査の平均38.86点と比較して、特に第一問を中心に明らかに易化しました。これは、事前の発表通りでした。(事前の分析はこちら

<他の理科科目との比較>

今年度は生物が非常に簡単(平均73.14点)で化学が難しかった(52.84点)ことから、物理・化学・生物間では得点調整が行われました。調整方法自体は多くの方がYoutube等で解説されていますので、そちらをご覧ください。
自分も一通り全科目目を通しましたが、化学がかなり難しく、生物は未履修者の私でも比較的太刀打ちできる内容だったため、やはり簡単だったと思われます。(地学は分からないです、すみません…。)

<傾向>

出題数→大問4つ。第一問は小問集合、第二、三問はA,Bに分けて出題。
出題分野→原子分野も含め、全分野がまんべんなく出題。
出題形式→試行調査と同様、数値をマークで埋める形式の問いが出題。
※第一・第二日程ともに同傾向。
この内容だけ見てもらえれば十分ですが、外見的には試行調査を踏襲しているような形に見えます
設問の内容を具体的に見てみると、第一問は試行調査よりも易化したものの、第一日程においては第二問以降は試行調査同様、現象を基にどのように定式化し、実際に解いていくかを考察することが求められているようでした。一方第二日程の問題は、正直どちらかというと知識ベースで、一部考察問題がある従来のセンター試験に近い内容でした。
なお、難易度に関しては個人の感想も混ざると思うので、所感・展望の項目に記します。

<所感・展望>

・問題の質に関して

当たり前のことですが、流石に本番の問題は非常にクオリティが高い。特に第一日程に関しては全体的に実用的な内容であり、また問題の意図である、「知識を基に実際の現象を物理的な見方・考え方」を用いることが非常に明確になっていると思います。
ただ第二日程に関しては、数問単純に知識を聞いてるだけのような問いがあったり考察も常識的に解けてしまう問いもある(マーク番号11,21)など、少々質が落ちるように思います[模試よりははるかに良問だが]。
(これは根拠がない自分の想像ですが、共通テストの記述式問題等廃止のあおりを受け、共通テスト自体が延期になった場合に備えてセンター的な問も作ったのかもしれないですね。他の科目もそんな感じでしたし。)

・難易度に関して

いずれの日程も、例年のセンター試験のよりは高いレベルにあるでしょう。
但し、第一日程と第二日程では難しさの質が全然異なります。
第一日程は、「公式暗記の丸覚えではなく、現象を式にする力」が従来よりもはるかに重要になっています。

スクリーンショット 2021-02-08 151040

スクリーンショット 2021-02-08 151154

スクリーンショット 2021-02-08 151132

特徴的な問いの一つが第三問。授業で扱ったことがない現象について、見たことのない図を基にうまく考察を行う内容になっています。
また従来の問いに比べて計算量は非常に少なく、定性的な議論を式やモデルで行うことが重要です。(エネルギーがどこに移動しているのか、結果としてどうなったかなどの現象を脳内再生することが大切)

一方第二日程は、純粋に前提知識がかなり必要です。

スクリーンショット 2021-02-08 153041

スクリーンショット 2021-02-08 153106

波の基本式は多くの受験生がぶっちゃけスルーする所だと思いますし、電圧測定なども知っていれば常識ですが、知らなければ大変でしょう。第四問も単振動で大問一個使っていて、中々酷かもしれませんね。

以上の通り質は全然異なりますが、いずれの日程もやはり難しいです。ただ第一日程に関しては、物理の考え方ができる人にとってはむしろ従来より得点でき、時間も余ってしまうでしょう。即ち、本当にできる人だけが高得点を維持し、中位層は点数が低下したと予測できます。これで平均点が58点なら、正直今年の受験生は健闘したといっていいのではないでしょうか。
(そのあたりも含め大学進学教育GHS様が分析しておりましたので、リンクを掲載しておきます。一つの参考として。)
一方、第二日程は上位層も含めて比較的苦戦する内容だと思います。個人的には第二日程のほうが難しく感じました

・次年度以降の傾向予想

・出題傾向に関して
私としては、試行調査や第一日程のような出題傾向が続くと予想しますし、そうあってほしいと思います。少しわき道にそれますが、そもそも「物理」が目指すこととして、H20年中央教育審議会答申において以下のことが挙げられています。

~前略~ 理科を学ぶことの意義や有用性を実感する機会をもたせ,科学への関心を高める観点から,実社会・実生活との関連を重視する内容を充実する方向で改善を図る。~後略~

特に物理分野は計算が多いこともあり好き嫌いが分かれる科目との指摘も多く、学校現場では実験や考察する時間を増やす等して有用性の実感をする工夫を行っています。定量的な計算による議論こそ物理とおっしゃる方もいますが、それだけでは物理が嫌いな人は嫌いのままです。計算へのハードルを下げつつ、かつ本質を失わず全員に教育するため、「高校」物理は日々教員や物理の専門家、上の人たちが研鑽しているわけですね。そうした様々な事情を絡めて、共通テストの問題は作られています(記事参照)。
これらを考えると、やはり今年度第一日程のように、定性的な問題を多めにして作問するのではないでしょうか。そしてそれは、「高校」物理の観点では望ましいことだと私は思います。
ただし、だからと言って定量的な議論が無駄というわけではありません。定量的な議論を行うことで、より機械的かつ明快に問題が解けるようになります。イメージを行う上で、数式は非常に役立ちますからね。
定量と定性は対立ではなくつながっている、ということです。

・出題難易度に関して
今年並みまたはやや難化と予想します。理由としては今年度生物が簡単すぎたこと、平均点58点ならまあ許容範囲であることが挙げられます。50点平均のテストを作ろうにも、また生物が簡単すぎて差が開く危険性を考慮する必要があることから、まあ60点いかないくらいの平均にするんじゃないですかね。平均50点のテストを作る予定にもかかわらず70点越えの平均となった生物はマジで反省ものだと思います。「思考力」の定義の認識が教科によってバラバラだからこうなってしまったんでしょうけどね。

まとめ

長々と喋りましたが、共通テストの展望はこんな感じです。

今まで以上に、1問ごとに現象をイメージする力が重要!
→定性的な問題が多い!定量的な議論も参考にしながら解くのが大切!
(おそらく次年度も、今年度第一日程の形式・難易度を踏襲すると予想。)

具体的に何をすればいいのかという話ですが、普段の演習問題から、(1),(2)のような問題の誘導をみて式を書くだけではなく、そもそもなんでこんな問題を出題するのかといったことまで問題研究をすることが、自分でモデルを立てるいい練習になると思います。

それでは、ここまでお付き合いいただきありがとうございました。
よろしければいいねやフォロー等よろしくお願いいたします!!

今日の写真:苫小牧フェリーターミナル
最近ではLCCも飛んでいるのであまり使わなくなりましたが、たまにはゆっくり船で帰省するのも楽しいです。写真は「きたかみ」という船です。ちょっといろいろ映り込んでいますがまあ、許してください。

よろしければサポートのほどお願いいたします。サポートいただいた資金をもとに、さらに記事を拡充していければと思います。