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たけのこピラミッドの謎

写真は春の味覚「たけのこ」をアク抜きしているところ。穂先のところはアクが強いので斜めにカット。そこから中心を切らないように縦に包丁を入れ、米ぬかと唐辛子が入った大鍋で1時間弱煮込むと、ふわっと柔らかい土の匂いがしてくる。ふつふつと鍋の熱に揺れる落し蓋を見つめながら「そういえば、たけのこを丸々調理したのって初めてだな」と思う。

東京のスーパーで売られているのは、パックになった水煮がほとんど。生で売られていても産地が遠かったり、高価だったりするので手が出ない。春の山菜類は鮮度が命だし、アクが強いものが多く、時間が経つとどうしても味が落ちてしまう。だから産地に近ければ近いほど美味しいし、採れたてをその場で天ぷらというのが最高の贅沢!いつかは鍋と油を持って山へ行ってみたいなぁ、などと換気扇の下で妄想していると、タイマーが鳴る。

竹串で煮え具合を確認したら、そのまま鍋に放置して粗熱を取る。冷水に上げたいところだけれど、それだとアクが抜けないそうなので、さらにじっと1時間ほど我慢。ようやくアク抜きが終わったら、ドキドキしながら皮を剥いてみる。茶色く分厚い皮をめくっていく...が、どこからが食べられる部分なの!?と困惑。いつもたけのこの周りにある溝のような、ピラミッドの段のような表皮を、なんでこんな形なんだろう?と不思議に思っていたけれど、実は柔らかい身の部分が硬い皮に繋がっていて、それを剥いでいくので段になるようだ。玉ねぎの皮は綺麗にまん丸に剥けるけど、たけのこは似て非なるものだった。恐る恐る剥いていくと、ようやく白くつるりとした見慣れたたけのこの姿になってホッとする。よく「魚が切り身のまま海を泳いでいると勘違いしている子供達が増えている」なんて話を耳にするけれど、大人だって知らないことはたくさんあるみたい。

記念すべきMyファーストたけのこは、土鍋で炊き込みご飯に。カツオと昆布でとった出汁に、たけのこの素朴な春の香がふわっ。底にできたおこげも混ぜ込んで、最後に塩茹でした菜の花を刻んで散らせば、春の味覚・夢の共演!さらに天ぷら、ワカメと炊き上げた若竹煮、味噌と山椒を乗せて焼きたけのこにと大活躍!食卓が一気に春になる。

ちなみにタケノコ、筍、竹の子、たけのこ...色々表記があるけれど、私は「たけのこ」と書くのが好き。柔らかくて美味しそうに見えませんか?

寺岡歩美

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