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2001年のゴジラ映画が意外と怖かった...ハム太郎と2本立てだった凶悪なゴジラ

『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』(2001年、東宝)

 タイトルはいかにも子供向け。同時上映は『劇場版 とっとこハム太郎 ハムハムランド大冒険』でした。懐かしいですね。映画1本分の値段で、2本の映画を観せてもらえたお得な時代です。今回、すっかり内容を忘れた状態で観ましたが、こんなに怖い演出あっただろうかと驚いてしまいました。

怪獣映画<ホラー映画

 本作では、長く眠っていたモスラ、キングギドラ、バラゴンの3体が覚醒し、護国聖獣としてゴジラから日本(クニ)を守るために戦います。主人公は、新山千春さん演じるマイナーBSテレビチャンネルのリポーターです。新山さん、きれいですね。「モーニング娘。」を彷彿とさせるお手本のような当時のメイクです。

 話が逸れましたが、本作のゴジラは非常に凶悪です。最初は小笠原諸島に上陸し、手始めに島を壊滅させます。民宿のトイレで用を足していただけの善良な温水洋一さんを踏み潰し、さらに若い男女の旅行グループも巻き込みます。ただし、50年前のゴジラ退治を知って「殺すなんてかわいそう」と言っていた女性客(篠原ともえ)は重傷を負いながらも生還しました。

 話が進むと、助かった彼女は静岡県清水市の病院に入院し、ベッドで療養していることがわかります。しかし、海を渡ってきたゴジラは焼津市に上陸。地響きを轟かせながら病院に迫り、女性は揺れる病室で、恐怖のあまり狂ったように笑い出します。

 これだけで十分に怖いのですが、驚くのはここから。ゴジラは病院のビルにぶつかる直前に進路を変え、女性は胸をなで下ろします。と、次の瞬間、ゴジラの巨大な黒い尾が叩きつけられ、病院はあっけなく倒壊するのです。主要ではないモブキャラ、しかもゴジラに同情した被害者を二度も助かったと思わせて死なせてしまうあたり、かなり殺意が強めの描写です。

 当時も劇場で観たはずなのに、こんなに怖かったか…? まるでホラー映画のような演出に、小学生の私は耐えたのでしょうか。全然覚えていないのは、恐ろしすぎて記憶から消したのでしょうか。この場面以外にも全編にわたって、怪獣の出現による人々の明確な死の描写があります。現実の自然災害のように、生前の行いにかかわらず容赦なく人が死んでいく理不尽を感じます。2021年現在では、子供向けの作品で、ここまで直接的な表現は難しいかもしれません(とはいえ『鬼滅の刃』はPG-12指定でも大ヒットしたなと思い出したり…)。

私がウェブ担当なんですわ!

 本作は2001年公開。インターネット利用が一般化した時期で、聖獣伝説を追う主人公たちに、山梨県警の署員(松尾貴史)が「うちの警察のホームページを見られたんですか?」「私がウェブ担当なんですわ(笑)」とドヤ顔で自慢するシーンが象徴的です。確かにお役所のホームページといえば、詳しい職員が手弁当で作っていましたねえ。

 そのほかにも、テレビ局のロン毛デスク(佐野史郎)が、暴れるゴジラの生中継でネット配信を指示し、主人公の新山さんがハンディカメラを携帯端末に接続して中継映像を飛ばしたり、その手法に局員が「素人のデジカメ映像なんて!」と反対したり、随所に当時の空気を感じます。

 調べてみたら、2000年末の家庭へのインターネット普及率は34%、翌2001年には60%と過半数に達し、かなりの勢いで普及していたようです!

出典元:平成13年「通信利用動向調査」の結果(総務省)※PDF

宇崎竜童と石原さとみ

 個人的に主人公の父親で、防衛軍のヒゲの准将・宇崎竜童さんがハマり役でした。ちょっと棒読み感がある演技は、意図的な演出と解釈。巨大怪獣の襲撃というあり得ない虚構と、対峙する日本社会の現実的対応という相反する状態をつなぐ橋渡しです。本作から15年後の『シン・ゴジラ』(2016年)で石原さとみさんが演じた、わざとらしい英語を話す日系アメリカ政府高官と似た役割かなと思いました。

 近年の邦画では見かけないパニック感を味わいたい方に、おすすめの一作です。

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