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課長に求められる役割は全部プラレールが教えてくれた

課長職とは何でしょう?その具体的な役割について、自分の経験を振り返ってみたところ、プラレールに例えるのが最もしっくりきました。

実は、軽〜い気持ちで書き始めたこのテーマですが、書いているうちに「自分の経験を後進に伝えねば!」という使命感のような自己満足のような想いが募り、最終的にはかなり真面目な内容に仕上がりました(笑)

課長になりたての人、なったものの伸び悩んでいる人、これから目指している人に、息抜き程度に読んでもらえたら嬉しいです。

きっかけとなった毎朝のルーティーン

こんにちは、菅野です。私が課長職になった頃、当時の上司からは「野球の監督みたいなものだ」と言われました。

チームスポーツ経験がなさ過ぎる私はピンと来ず、課長職とは何かがよく分からないまま5年以上が過ぎたある日のことです。

息子のために毎朝のようにプラレールを作っていて、突然「こういうことか!」と脳天に電流が走る衝撃を覚えました。

2歳の息子とプラレール

プラレールの知識がなくても大丈夫です。ちなみに野球監督の気持ちは未だに全く分かりませんので、野球の話は一切出てきません(笑)

また、この記事では、ついつい細かくプラレールの製作過程も書いてしまいましたが、その一連のプロセスに、私が課長職を経験して辿り着いた真理があると考えています。5つのポイントで解説していきます。

そもそも課長って・・・?

その前に、そもそも「課長とは何か」について、私なりの解釈をお伝えしたいと思います。

私としては「間接マネジメント」という言葉への置き換えが最もしっくりきます。

メンバーを率いて現場で指揮を執り、部門のミッションを達成すべく、メンバーの直接的な指導・評価を行うものが直接マネジメントです。一般的には係長やグループ長と呼ばれます。

これに対し間接マネジメントは、グループ長率いる部門を3〜4つ束ねた存在です。複数部門が統合的に目指す世界観を示し、各部門が目標を達成できるよう、総合的な戦略立案とマネジメントの支援をしていく、いわば「マネジメントのマネジメント」がその主な仕事だと考えます。

さて、前置きが長くなりましたが、プラレールが教えてくれた「課長に求められる役割」を、5つのポイントで見ていきましょう。

その① ビジョンを練る

当時2歳の息子にせがませて、毎朝プラレールを作ることが私の日課でした。いつも同じパターンの路線では作る側も遊ぶ側も飽きてしまうので、その都度どんなものを作るか、頭の中で構想を練ってから作り始めます。その際に、エリア毎に大枠のテーマを決めて棲み分けをしておきます。

また、今までやったことのない新しいアプローチを取り入れることも大事です。息子の驚き、喜び、そして父への尊敬の度合いが変わってきます。そのため、起床間もない脳みその段階で、なかなかクリエイティブな作業を強いられます。

「40分は遊んでもらう!そして、息子(なんなら長女や妻も)から、昨日よりも大きな驚嘆のWoWを得る!」

そんな目標を胸に、完成形のイメージを膨らませることから始まりますが、これがまさに課長の仕事の最初の一歩と同じです。

配下部門の全体としての仕上がりのイメージ、つまりビジョンと、その実現度を測る目標値を先に固めることが最重要です。これがないと、後々大変なことになります。

<ビジョンがないと起こる問題>
・目標に納得感がなく、ただ足下の数字に追われ、施策は行き当たりばったり
・今の延長線上で物事を考えてしまい、未来から逆算して新しいことにチャレンジしようというマインドが低下
・課配下の各グループの意識や行動がバラバラで、グループ同士の横の連携もなし
・グループ内では無駄な仕事が増え、グループ間では役割の重複が発生
・課全体が段階的に成長していくイメージが持てず、離職が進む

全体のビジョンは“ゾーニング”と“挑戦テーマ”を決定づける

プラレールでは様々な種類のパーツがありますが、手当たり次第、闇雲に組み合わせて作るのは大人の仕事ではありません。

例えば、このエリアは踏切セットを中心とした都心部、ここは郊外の新幹線レール、ここはトーマスのいるソドー島・・といった具合に、全体のビジョンに即したゾーニングが必要です。

組織も同じです。成し遂げたいビジョンが先にあれば、無駄や重複のない合理的な組織編成と、達成すべき目標を定めることができ、グループ間で何を連携すべきかも決まります。

また、ビジョンは「自分たちは何に挑戦すべきか?」を示します。

ビジョンはいわば「理想の世界を言語化したもの」ですから、そこに到達するための逆算思考で、今までやったことのない新しいアプローチを積極的に取り入れるマインドが自然と生まれてきます。未知への挑戦は組織の成長にとって不可欠です。

ということで、「その①」はビジョンを練る重要性についてお伝えしました。

その② 戦略的にリソースを配分する

ビジョンが固まったら、次に、手持ちの限られたパーツでどう作るかですが、見た目だけ立派なものを作っても、2歳児の前では5分で崩壊します。線路のパーツもゆるゆるなものがあったりするので、弱い部分を他でカバーしなければ、車両を手で動かすときに必ず崩壊してしまうのです。そうなると都度呼び出されてしまい、修理屋として駆けつけることになります。朝の仕事(本業)の準備が手につきません。

いざ作り始めると、無駄に複雑な立体交差をしたくなるなど、ついつい”映え”に執着し、過度にリソースを注ぎ込んでしまうことがあります。

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”映え”に拘った結果、ハリボテのように構造的に弱くしてしまうか、補強に次ぐ補強でパーツを消費することで、全体のビジョンを実現する手前でリソースが底をついてしまうことにもなりかねません。

(プラレール作りの)目的に立ち返ると、見た目の映えも大事ですが、その上で、できるだけ長く遊んでもらわなければ意味がありません。そう考えると、見えない部分の構造的な強さにこそリソースを使うべきなのです。

これは、ビジネスの世界でも目の当たりにすることがよくあります。私自身、たくさんの心当たりがあります(汗)

課長としての視座が問われるリソース投下判断

短期的で目に見える成果ばかりを優先するとボロが出たり、長く続かなかったりします。短期的には成果が見えにくくても、しっかりとした強いビジネス構造を作ることに対して、戦略的に一定のリソースを配分していかなければなりません。

では、ビジネスにおける見えない部分の構造的な強さとは何か。以下は一例です。

<ビジネスにおける見えない部分の構造的な強さ>
・インフラの刷新による業務効率の向上
・業務のインハウス化による外注依存の脱却
・複数事業や他社を含めたエコシステムの構築
・チームビルディングの実施/新人育成プログラムの実施

業態によっては、SNSフォロワーを増やす、ブランドエクイティ向上を意識したコミュニケーションを継続する、などが挙げられるかもしれません。要は、短期的にはリターンを表面化しにくいものへのリソース投下の判断です。

この視座は、短期業績に目が行きがちなグループ長ではなかなか難しいものがあります。中長期の目的も達成するためのリソース配分の指針を固めることは、課長の重要な役割と言えます。

リソースの張り方は、リソースが増えるほど重要性が増す

また、課となると15人〜20人くらいになってきます。広告宣伝費や外注費も大きくなります。

リソース配分のレバレッジ(テコの原理)が大きくかかるのと、方針転換には慣性の法則が伴うため、そうそうスピーディに朝令暮改で体制を組み換えることはできません。

できるだけ事前のシミュレーション=思考実験を繰り返し行う事、または少ないコストで小さな実験を繰り返し、慎重にリソース配分を決定することが求められます。

プラレールは作り直しが効くので、サンクコスト(取り返しのつかないコスト)が発生しない点はビジネスの世界とは違いますが、試行錯誤の末に最適なリソースの張り方を決定していくプロセスは同じです。

その③ アサインとチーム編成を考える

先頭車両の采配は重要です。モーターの劣化や電池の消耗度合いで何両編成にするかが変わってきます。また、近くを走る他の車両との景観的な相性としても美しいかどうかが問われます。

試行錯誤の末に完成した線路に、いよいよ車両を配置していきますが、車両といっても新幹線から特急、在来線、トーマス列車など様々な個性があります。全体構想の中で予め決めておいたエリア毎のテーマに相応しい車両を配置していきます。

また、特定エリア内をグルグルと走る車両もあれば、長距離で複数エリアを横断する車両もあります。その全体のバランスを整えていきます。

個々の車両のコンディションも十分考慮する必要があります。例えば車両の連結部分がユルユルだと、下り坂で分離してしまいます。

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個性の発揮と全体的な連携。この両側面を上手くバランスさせる采配が、車両配置には求められます。これは、課を構成するグループ長やメンバーのアサインと同じことが言えます。

最大の悩みは人間関係

課長の最大の悩みは人間関係です。いや、人生最大の悩みと言っても過言ではありません。

それは自分(課長)と他者との直接的な関係のみならず、配下のグループ長とそのメンバー、グループ内のメンバー同士、グループ単位同士の人間関係においても、ケアしていかねばならない点で、苦労が絶えません。

アサイン(人員の適切な配置)を疎かにすると、後々大変な対立や遺恨を生み出してしまいます。

<アサインを疎かにすると起こる問題>
・グループ長の抜擢に納得のいかないメンバーが非協力になる
・グループ長が非協力的なメンバーとグリップすることにエネルギーの大半を使ってしまい、疲弊する
・メンバー同士の相性の悪さは、それが一部の問題であっても、グループ全体の空気の悪化に及び、チームの成果より個人の成果を優先するようになる
・横のグループ同士の対立は、リソース争奪が暗黙の勝敗条件となり、上層部には真贋入り乱れた情報が錯綜し、歪んだ意思決定を招く

挙げればキリがありません。センスのないアサインは、優秀な人材の退職という結果を招きます

この記事の前半でお伝えしたポイント②「戦略的にリソースを配分する」において、どれだけ完璧なヒト・モノ・カネの配分を計画できたとしても、戦略を実行するのはヒトです。相性やコンディションというものがあります。

人間という変数を考慮しない、戦略だけの人員アサインをする指揮官は、冷徹なイメージを持たれ、人望が集まらないものです。今の時代には相応しくありません。

つまり、戦略的にリソース配分を考えるだけでは片手落ちなのです。頭数があればいいということではありません。ここで必ずと言っていいほど、人的リソース配分の修正が発生しますが、とても大事なプロセスなのです。

“良いアサイン”のための唯一の方法

では、どうすれば良いのでしょうか。それは、日頃からメンバー一人一人をよく観察し、じっくり会話するほかありません。

人事発令はいつも突然です。事前にリークすることは余計な混乱を生む為、多くの企業では避けたいことでしょう。

故に、組織再編の時期のみならず、日頃からメンバーとは信頼関係を作り、時にはギリギリのところで秘密を共有しながら、会話を通して隠れた本音を洞察していくことに尽きるのではないでしょうか。

ちなみに、この記事のタイトル画像は、メンバーとしっかりグリップして力強く牽引するグループ長をイメージして、「はやぶさ」と「こまち」が連結して走る様子をチョイスしました(笑)

その④ 持続可能な仕組みを作る

プラレールは、子供が3〜4歳くらいになってくれば、作ること自体が遊びになってくるのですが、2歳児くらいでは、まだまだ親が作ってあげることが多いです。本人が作るならまだしも、親が作る場合、作ること自体に労力や時間がかかる分、より長く遊んで欲しいと思うのが親の心情です。

そこで、忙しいと省略されがちですが、「情景」と呼ばれる、駅やトンネル、信号機などのパーツも配置も、遊びのモチベーション維持には欠かせない要素となってきます。

また、1回あたりの遊びの長さだけではなく、2歳から5歳くらいまでは長く遊んでほしいという思いもあります。後者においては、パーツを新たに買い増す動きも必要になってきます。「どのパーツをいつ、何のために追加するのか?」
そこは妻の稟議承認が必要になってきます。

遊びのモチベーションを短期・中長期で維持することは、リソースマネジメントの考え方にも通じる部分があります。課長は経営と現場のパイプ役です。課の代表として上や横と調整することが日常の役割であり、その話題の中心はリソース管理です。

短期的なモチベーションの維持は、チームビルディングや昇給などで対応できますが、中長期的に持続できる部署を作っていくためには、「リソース調達」が最も重要な手段となります。

ずっと同じ顔ぶれ、同じ予算で部署が続くことはあり得ません。持続的に成長し、社会に対してより多くの価値提供をしていくならば、常にリソース調達を考えていなければなりません。

リソースを増やしたい、もしくはマイナス分を補いたいならば、足元の成果と将来的なビジョンを示して稟議を得る必要があります。

家庭内でも同じです。全リソースの管理者が妻ならば、妻はプラレール以外にも、トミカや絵本、学習教材や習い事のポートフォリ全体を見ながら、祖父母からのプレゼント、姉と弟の割合、ママ友トレンドなども考慮し、なけなしの子供部屋面積の中でやりくりすることを考えています。実に様々な課題を抱えている状態です。

そんな中、自分の都合だけで「パーツを増やしたい」と言っても中々通るものではありません。「なぜ今このリソース調達が有効なのか」を説明できるだけの、俯瞰的・網羅的な視野の広さが必要です。

その⑤ 柔軟に計画を変更する

いよいよ5つ目。最後のポイントです。課を構成する各部署が成果を出しながら、持続的に成長していく仕組みを一発で構築できれば、極論、課長の仕事は最初だけが忙しく、あとはほぼ暇になります。

しかし、簡単にはそうはいかないので、計画に修正を加えることが常です。プラレールでいうと、「壊れたから直して〜」と呼び出される状態です。それが続くようなら、そもそも構造を大胆に見直すことが必要になってきます。

ポイントその②で「容易にリソースを組み替えられない」とお伝えしましたが、それはあくまで原則です。必ず言って良いほど組み替えは発生します。実際に組んで、実際に走らせてみないと分かりません。故に、柔軟に計画を変更するスキルが課長にとっては必須です。

計画の変更を宣言することは、心理的にきついです。人間はいつだって一貫性を求め、変化を好まない性質があるからです。あえてスキルと書いたのは、計画の変更を正統性のある合理的な理由で組織全体に腹落ちさせるプロセスは、非常にテクニカルな手法だと考えるからです。

また、そのスキルは課長以上の特殊なものと言えます。グループ長は期初に定められた自部署の予算に縛られがちで、なんとか自グループの範囲内で完結しようとします。

それでは本来、他のグループからリソースを融通すれば達成できたはずの目標が、未達になってしまうことも起こり得ます。「グループ間でのリソース融通」、これを当初計画の変更と合わせて、柔軟かつスピーディに実施することが、課長には求められます。

最後に

いかがだったでしょうか。今回は私の経験を元に、課長に求められる役割を、プラレール作りになぞらえて解説していきました。

「別にプラレール作りになぞらえる必要はなかったんじゃ・・・?」

という声が聞こえてきそうですが、そこはご容赦ください。私自身、楽しんで書くことも目的の一つでありますゆえ。。

今回も読んでくださった方、ありがとうございました。

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