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短編:【スエトモの物語】

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短編小説・物語はこちらです。 ◉毎週1本以上、継続はチカラを実践中!新作順にご紹介。短い物語のなかに、きっと共感できる主人公がいるはず…見つけて頂けたら幸いです。
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2024年6月の記事一覧

短編:【たまには逃げたい日もあるさ】

仕事で失敗をした。 「何で気づかなかったかなぁ…」 「申し訳ございません…」 部長は叱らなかった。 「以後気をつけてね」 明らかに私の落ち度だった。 「あの…部長。ちゃんと叱って頂かないとまわりに示しが…」 「いや、いまの時代、声を荒らげたら、ナニハラとか言われちゃうでしょ。ただでさえ新人さんが入らない会社で叱って辞められたりしたら、私が首切られちゃう、ハハハ…」 部長は力無く笑う。 「今どきの若者は、大切に扱わないと…」 「部長…私はちゃんと叱って頂きたいです。それに私

短編:【不穏な予兆】

普段見ている風景が、実は何かの予兆となっていることもある。不調和音は日常生活にも潜んでいて、何かの拍子にすべてが一変してしまう。そんなアンバランスな世界。その日、窓の外には縦に走る不気味な雲が伸びていた。 「何で気づかなかったんだよ!」 「スミマセン!」 社内に響き渡る怒涛。90度を超える直角に体を曲げて平謝りの男性社員。 「一千万だぞ!こんな不祥事、取り返せんぞ!」 「本当に申し訳ありません!」 部長は手を振って、いますぐ回収に向かうよう、その社員に指示をする。 いつだ

短編:【トマト、いかが?】

「ウチの小さい庭で家庭菜園をやってましてね…」 休日の昼前に突然の訪問者。マンション1階に住んでいるという50歳くらいの中年女性。正直見かけたことも挨拶をしたこともない。 「あ、そうですか…わざわざスミマセン…」 3階に住む僕は、面識のない人からいきなり野菜を持って来られて動揺していた。 「あ、あの…なぜ僕の部屋に?」 「あら、ゴメンナサイ…いつもゴミ捨てとかちゃんとなさっていて、帰宅も遅いのにエコバッグさげて、食材を買って自炊なさっているのかなと思ってね。…いきなりでご迷惑

短編:【ユメのない夢】

病院の診察室。白衣男性の前に座る若い女性が語る。 「ちょっと信じて頂けないかと思いますが…」 カルテにはスズキユミコ 27歳とある。 「夢を見るんです。あの夜寝た時に見る…」 「眠りが浅いんですかね…」 「あ、いえ…夢を見ることは良しとして…」 何か言いにくそうに戸惑っている。 「どうぞ気になることをお話し下さい」 「はい…その夢が…その…」 先生は親身に静かに次の言葉を待っている。 「すべてですね…その…ミュージカルなんです…」 言い終わると静寂が流れる。 女性はとんで

短編:【クレーム、または罪深い人類へ】

「だいたいさ!オタクの商品、効果が無いんだよ!」 『そんなことはございません…』 「うるおいをもたらし、命を救う?」 『…はい』 「サラサラで、無味無臭?」 『そうです』 「安価でお得?すべての国民に必要だと?」 『その通りでございます…』 「過大広告だろう!謝罪しろ!」 『お客さま…いま、お試し頂けますか?』 「い、いま?」 ゴクゴクゴク… 『いかがですか?解約されますか?』 「…」 『良いんですよ、この世界から“お水”と言う、万能な商品が消えて

短編:【職を決める】

「農業は天候に左右される。漁業も自然の影響を大きく受ける。どちらも鮮度が重要視され、収穫から消費者へ届けるスピードが求められる。流通はそのスピードが命である。物を製造する場合は、職人の技術力や大規模な機械導入がある。在庫管理する場所の確保も必要で…」 郊外型の広いファミレス。向かい合わせに座る男性ふたり。 「で、何やるか決まったか?」 スーツ姿の男性が、ホットコーヒーを飲みながら聞く。 「そこなんだけどね…」 白いパーカーにジーンズの男性がアイスコーヒーのグラスに口をつけず

短編:【知らないとこから、こんにちは】

「今日さ、SNSに知らない外国の人からコメントが来たのね…」 「どんな?」 「この写真、素敵ですね、どこで撮影したんですか?って」 女性3人でフレンチを楽しんでいる。 「あ〜、デタ〜たまにあるよね〜」 「やっぱたまにある?」 「この猫ちゃん、可愛いですね、何歳ですか〜とか」 「あるある!欧米の人とか!」 「え〜私はアジア圏の人だったよ〜」 届いたマルゲリータを裂きながら皿に取り続ける。 「やっぱりあれって、何かの詐欺なのかな?」 「ロマンス詐欺的な?男性からなら疑っちゃうよ