短編:【3号棟のその先で】
「スミマセン、この住所の所に行きたいのですが…」
夏の暑い日、必要以上に叫び鳴くセミの声。小さなハンドタオルで汗を拭いながら、白い半袖のYシャツを来た女性が声をかけて来る。
「ここの住所で間違いないようだけど…4号棟って…」
たまたま2号棟の前でバケツで打ち水をしていたシニア女性が答える。
「やっぱり、3号棟の先って、5号棟…ですよね」
「う〜ん、ウチはもう50年、ここの2号棟に住んでいますけど、4号棟は…」
「そうですよね…いやウチの父も転勤が多くて、私も昔、しばらくこんな