しゅへ
架空の医師 中谷進が書いているという体裁の日記。
「……そうです、僕が殺しました」 刑事の追及は完璧だった。言い逃れはできない。絞り出すように、眼の前の刑事にそう告げた。いま自分が立っているちょうどこの辺り、部屋の中央で奴の首をロープで絞めた。そして天井の梁を利用して死体を吊るし、自殺に見せかけた。密室も作った。 抜けはなかったはずだ。しかし刑事は、仕掛けられたトリックをことごとく見破ってみせた。 しかもそれだけではない。この刑事は、最初からこの事件を殺人だと決めつけていたようだった。「なにか、まだ私に聞きたいこ
☆この読書感想文にネタバレはありません。未読の方も安心です。 普段から趣味で「ウミガメのスープ」をつくっている。 「ウミガメのスープ」とはウミガメの肉を野菜といっしょに水と酒で煮込んで塩コショウで調味したものであるはずがなく、水平思考クイズとも呼ばれるものだ。 ある不可解な状況が提示され、回答者は出題者がYES・NOで答えられる質問をして真相を突き止めるゲームのことである。 もっとも代表的なウミガメのスープは、「ウミガメのスープ」という問題である。 この問題の答え(
他者を必要とせず、自らの意思を超然と行使する。 そんなキャラクター像は、他者をアンコントローラブルなものとして排除し、もっぱら自分の考え方と行動を変えることで人生を良くしようとする最近の自己啓発本と重なる。 ただ成瀬がそういう「超人」と異なるのは、彼女が漫才を楽しんでいることだと思う。 漫才はアンコントローラブルに満ちている。相方の存在、客の空気、香盤、トレンド、舞台や時間帯、こうした要素がその場1度きりの演芸を作る。 成瀬は1度目のM-1グランプリ出場のあと、文化祭
買い物を終えてバスの最後部席の左端に座ると、赤いエコバッグを抱えた女性が近づいてきた。 夕方、ショッピングモールから最寄り駅までをつなぐシャトルバス。車内は若干だが余裕があり、その人は僕と0.7人分のスペースを空けるようにして僕の横に座った。 そして赤いエコバッグを自分の体の前に抱えると、ネギが伸びてきた。 うん、確かにネギだ。 あの、鴨が背負ってくるタイプの。 僕と女性を隔てる0.7人分のスペースは、ネギのために用意されたものだった。僕の右腕に接触しない、絶妙な構造
平日の夕方、それなりに混んでいる喫茶店の奥で、むずかしい顔をしてスマホを見つめる史織を見つけた。 近づくとこっちを見て「気づいていたよ」と言われたので、「気づいていたことに気づいていたよ」と返した。史織の席が空調の温風直撃な気がして、替わろうかと言ったがただニヤニヤされて終わった。いつものやり取りだ。 史織とは年が明けて初めて会う。彼女の実家は北陸なので心配だったが、強い揺れは感じたものの幸い被害はほとんどなかったという。怖がる弟と久しぶりに同じ布団で寝たと惚気けられた。
日向坂46が人狼をやる配信を観ました。 人狼(じんろう)というゲームがありまして、ヒトコトで言えば「嘘をついている人を話し合いで見つける」ゲームなのだけど、これが日向坂46というアイドルグループのメンバー内で、今なぜか流行っている。 やったことがある人ならわかると思うけど、人狼はそれなりに人数と時間が必要で、気軽にできるゲームではない。が、この人たちはライブのリハーサルのスキマなどちょっとでも空き時間があれば人狼を始める。 アイドルがかつて持っていた神秘性・超人性が剥が
すっかり遅れてしまったが、2024年も宜しくお願いします。 大晦日は紅白歌合戦を観ました。 先日のM-1グランプリに続いて、こういう風物詩的な番組をリアルタイムで視聴するのは数年ぶりの快挙。なんだろう。寂しいのかな。 もともと観る予定はなかったので誰が出るのかロクに知らない状態で観たけど、楽しかったな。不勉強で知らないアーティストさんもチラホラいたが、初見の私も巻き込むような歌やパフォーマンスを皆さんされていて、流石だなと思いました。 純烈は、紅白でこんなに笑うことあ
日付変わって2024年1月1日、CDTVライブ!ライブ!年越しスペシャル2023→2024にて、日向坂46の出演がありました。 するとTwitter(現 X)に、「かわいかったあの子誰?」「なんていう名前?」みたいなツイート(現 ポスト)が流れます。 あっ。はいはい。 そうですね、そういう顔になりますよね。 「りおたむ推しだし日向坂に興味持ってくれて嬉しいしこの人が今後ファンになってくれたらもっと嬉しいからリプしちゃおうかしら」顔ね。 でも、待ってください。 そのリプ
(画面の下からマイクが出てくる) マイクに遅れること3秒、現場到着。 どうも〜中堅芸人です。 さぁ今回ワタクシがやってきたのはこちら、千代田区神田神保町ということでございまして。こちらは本の街、カレーの街で知られてるということで。読書家のインド人の方が発展させたということなんでしょうねこれは。(SE:笑い声) こ〜んなところにデカ盛りがあるのかって感じですけれども、なんと!こちらのビルの中にあるということでございましてね〜。大きなビルですね〜。ではさっそく中に入ってみま
26日放送のゴールデンラヴィット!を観ました。今年で2回目。楽しかったなあ。 ラヴィットって、面白いだけじゃなくて楽しいと思えるのが良い。大人たちのお楽しみ会って感じで。最後のサンボマスターの演奏も良かったし、ひな壇にスタッフが勢揃いしているのもグッときた。ラヴィットはMCの川島さんが率先してスタッフを巻き込もうとするから余計にファミリー感が出ている。 個人的にはとても好きなうまい棒当てが行われて嬉しかった。このときのニューヨーク嶋佐さんはちょっと面白すぎる。私はこのコー
M-1グランプリを生で観ました。2018年以来かな。霜降り明星が優勝した。 なんで観たのかっていうと、令和ロマンとヤーレンズが出るから。 この2組はラジオも面白いし、漫才も好みに合ってるから、応援しようと思って。この「応援しよう」という気持ちが厄介で、だから私はコンテストものが苦手なんだろうな。 自分が応援しているコンビは、ウケてほしいし、優勝してほしい。そこまでは良いとして、その先に「審査員のマイナスコメントを聞きたくない」とか「他のコンビがウケすぎないでほしい」とか、
ぼくは、ゆう名ツイッタラーのダ・ヴィンチ・おそれ山があこがれの人です。ぼくは、2009年ごろからツイッターをやっています。そのころのツイッターは、まだ知っている人がほとんどいなくて、よく見ていたのがダ・ヴィンチ・おそれ山でした。 ぼくは、おそれ山が、よくわからないインターネットの人だと思いました。なぜかというと、ツイッターで知ったからです。ほんとうにいる人なのか、もともとゆう名な人なのか、なにもわかりませんでした。 でもそのときのツイッターの中ではフォロワーがたくさ
2023/11/13 会議室6B 自動書き起こしによる会議ログ 話者A おつかれさま 話者B おつかれさまです 話者A 悪いね、わざわざ来てもらって 話者B 編集部来るの久々で緊張しますね 話者A いや、いつも通りリモートでも全然良かったんだけどね、やっぱちょっと直接のほうが良いかなと思って 話者B 全然大丈夫ですよ、どうしたんですか? 話者A どうしたっていうか … じゃあちょっとさっそくで申し訳ないんですが、本題に入るとね … 昨日送ってもらっ
✦ 「今日ね、学校でおえかきしたの」 平日の食卓。 息子が慣れない箸でハンバーグをこねくり回す。 「上手にかけた?」 「お母さんのえかいたよ」 微妙に食い違う会話の中に出てきた、私を指すと思われる一般名詞に、思わず喉をつまらせそうになる。 「だいじょうぶ?」 「うん、ごめんね、大丈夫」 息子はその後も、今日がどんな1日だったかを、子どもらしく、しっちゃかめっちゃかに教えてくれた。腕につけたバングルと机が当たる音が少し耳障りだった。 食器の後片付けを終えると、息子