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ChatGPT時代の企画能力の磨き方3.


リスクを取って最短の勝ちを目指す

前回に続いて、将棋の話です。

将棋の世界は、当たり前ですが、勝つか負けるかです。引き分けはありません。勝てば勝つほど収入が上がるわかりやすい世界です。

将棋AIは、当然ながらそのゴール設定に勝つことを設定しており、また、序盤であろうと、終盤であろうと、その時の局面局面で、最短距離で勝てる次の一手を指し示してきます。
時には、突拍子もない手を指し示すこともしばしばで、そんな時、「これは人類には指せませんね。」と解説の棋士が笑いながらコメントするくらい、人類に理解不能の一見非常識な手を指し示してきます。

それらを取り入れ始めた将棋界。
戦い方の変化で何が起ったかと言うと、玉を囲わずに、どんどん攻めていくという戦い方です。

例えば、従来は、図①矢倉囲いのように、玉の周りに金銀を配置して、敵駒を王様に近づけないようにするのが普通でしたが、最近では、図②通称裸玉のように王様を全く囲わずに戦うケースが居飛車戦ではメジャーになっています。(振り飛車の場合は、若干異なります。)



千年近い将棋の歴史の中、ここ数年で戦い方のもの凄い変化が起っています。
この戦い方を一言で言えば、「リスクをとって、最短の勝ちを目指す」ということでしょう。

このことは私に、欧米ブランディングと日本ブランディングの違いを思い出させます。

ブランドの仕事のゴールは、言うまでもなく強いブランドづくりですが、最短での勝ちを目指す欧米ブランドは、その手段として、初期段階での強烈な認知と体験を目指し、広告を中心にもの凄い量を投資してきます。PL的には真っ赤っかでもやってくるのです。

一方、日本ブランドは、よく言えば、ブランドは一朝一夕にならずという姿勢で慎重です。PL的にはそこそこの赤字で済まし、まずは小さい成功を目指すパターンです。

20年前、バンコクでアセアン・ブランディングの仕事をしていた時、このことが話題になりました。当時の具体例としては、TVにおけるサムソンの躍進で、その投資額の趨勢から「このままでは、パナソニックはサムソンに負けるな」などと言っていました。サムソンは韓国ブランドですが、ブランディングは欧米流です。
そして、10年も経たずに、その通りになりました。



ついこの間も、日本産のお酒を世界にブランディングしようという日本人と欧米人の混成チームの議論で、日本人の出した初期投資額と欧米チームの出したそれとが桁が違っていたなんていう話を聞きました。
欧米と日本の考え方の違いは、ずっと前から変わっていないのだなと再認識した次第です。

言ってみれば、欧米人は、歴史的に、リスクを取って、最短の勝ちを目指すという姿勢なのに対し、日本人は石橋を叩いて渡るという姿勢なのです。


欧米VS日本ブランディング初期投資の違い

翻って、将棋の藤井聡太七冠ですが、彼はどんな局面でも絶えず最善手を目指すことで知られています。

例えば、最終盤の詰みがある局面(王様を次の手から連続で王手をかけ最後に仕留めることができる)、将棋AIは、この手を指せば詰みだが、他の手だと評価値が70%に下がる(つまり、3割は相手が勝つ筋が芽生える)と解説ボードで出たとします。しかし、この手は人間的には勝ちやすいと棋士が解説。
このような場合、彼はほとんどその詰みがある手にチャレンジします。
一手間違ったり、読み抜けがあったりすれば、即負けにつあがるとしてもです。
先ほどの文脈で言うと、「リスクを取って最短の勝ちを目指す」姿勢なのです。
そこに、非日本人的な強さを感じます。

AIが入ったビジネスでもこういった思考が強まる予感がします。

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