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テレビ離れは進むか? アニメ「ウィンドウ戦略」はポートフォリオの時代に

 少し時間が経ってしまいましたが、11月30日にCOMEMO xアニメビジネス NIGHT OUT vol.4「ファイナンスから考えるアニメビジネス」を開催しました。
 アニメ企画・製作会社ツインエンジンのCOO内田康史氏を招き、アニメファイナンスの最新動向を伺いましたが約100名の参加者で大盛況となりました。ご参加していただいた皆様ありがとうございます。

 その時にいただいた質問からさらに「ファイナンスをテーマに!」と思ったのですが、想像以上に質問は多岐にわたっています。ジャンルごとに分けて、何回かでお答え出来ればと思います。

 まずアニメの「ウィンドウ展開」についてです。2018年は動画配信の成長、映像ソフト(DVD・ブルーレイ)の不調、劇場映画活性化など、ウィンドウの変動がとりわけ意識されました。一年の最後のテーマに相応しいのでないでしょうか?

“アニメーション業界全体として、アニメ作品による展開だけでなく、長期的IP(知的財産)として多ウィンドウから展開していく動きは活発化しているのでしょうか?“

 作品をどのメディアで最初に披露し、どういった順番で他のメディアに広げていくのかを「ウィンドウ戦略」といいます。

例えば映画であれば、①劇場上映→②映像ソフト→③映像ソフトレンタル→④有料テレビ放送→⑤無料テレビ放送。こんな具合です。
テレビアニメであれば、①無料テレビ放送→②映像ソフト/映像ソフトレンタルがこれまでは一般的でした。作品によっては総集編や新作として、その後に劇場展開があるかもしれません。

 かつては映像展開のウィンドウは、「テレビ」「映画」「映像ソフト」の3つでしたが、現在はこれに「配信」が加わり4本柱になっています。問題はこの4つをどのように組み合わせて、どの順番で展開していくかです。
 その結果はまだでておらず、現在は最適解を摸索している状態です。テレビ放映後の配信がいいのか、配信が先か、映像ソフトは必要か、といった感じです。
 配信の成長でテレビや映像ソフトの役割がなくなるとの指摘もありますが、4つのメディアのどれかだけに収斂するのでなく、ポートフォリオとして4つをどう並べるのかの問題です。まさしく「多ウィンドウ」の考え方です。

 アニメに関しては映像だけでなく、さらに「商品化」「音楽」「ゲーム」「ライブ」「イベント」「舞台」「コラボレーション」と他分野に広がっていきます。この並べかたとバランスも重要です。それは長らくメディアミックスと呼ばれ、日本のアニメビジネスの得意な手法とされてきました。昨今はジャンルの拡大傾向が強まっています。

“京都アニメーションが映画作品を増やしたと伺ったのですが、ブルーレイで回収できる割合の縮小が理由でしょうか?”

“アニプレックスがアプリゲーム化できるアニメしか作らないと噂で聞きました?“

 個別企業の戦略については、当事者以外で断言するのは少し難しいものです。ただこうした話がされるのは、制作会社、映像ソフトメーカーに限らずアニメ業界の企業の多くがアニメビジネスの多角化、広がりを意識しているからでしょう。
 どれかひとつに集中するのでなく、ビジネス化のできる分野、開拓余地のある分野を強化しようと考えていると思います。重要なのは何かが別の何かに代わるのでなく、いくつもの選択肢を持つことでしょう。
 そうしたわけでアニメ業界の関係者、とりわけプロデューサーはこれまでに以上に多くの分野の知識と目配りが必要となっています。アニメビジネスは2019年以降、さらに複雑化し、高度化していくはずです。

 2018年に4回にわたって「マーケティング」「海外」「ゲーム」「ファイネンス」をテーマに開催しました「COMEMOxアニメビジネス NIGHT OUT」ですが、お蔭様で毎回満員御礼となりました。ご参加いただきました皆様と関係者にはあらためて御礼を申し上げます。

 そして2018年も引き続き2月27日に第5回を予定しています。
次回のテーマは「テクノロジー」です。アニメプロデューサーの平澤直さんと僕、そしてゲストに日本のゲームAI研究者の第一人者である三宅陽一郎氏を迎え、アニメ分野で気になるテクノロジーの最新動向を紐解きます。

関心とお時間がありましたら、是非ご参加ください!


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