見出し画像

巣篭もり生活と毎日の料理 [中編]

あるものでぱぱっと料理ができるスキルを最短で身につけるには?という問いに向き合い続けて、見えてきたことがいくつかあるので、今回はそれを書きたいと思います。(前編はコチラ)

料理の捉え方を変える

毎日の料理は、そんなにちゃんとしたものをつくる必要はないと思っています。実家の食卓に並んでいたような、茶色くて甘辛い味のおかずが1~2品と、白いごはんに味噌汁があればそれで十分です。

今日はハンバーグ、明日はオムライス、その次の日はロールキャベツなんてやってたら、とてもじゃないけど持たないですよね。たまにそういうのが食べたくなったら、買ってくればいいと思います。レトルトでもちょっと高めのやつを選べば、普通に美味しいです。

では、そんな実家のおかずのような料理って、どうやったらつくれるのでしょう?
正直、なんて名前なのかも良くわからない(聞いても、アレをアレしたやつよとか言われる)ので、レシピを検索しようとしてもうまくできません。そこで、料理の捉え方をちょっと変える必要があります。

なす

(最近つくっておいしかったやつです。チンしたなすを手で割くと、いい感じのしみしみ感が出ます)

料理 = 食材 x 味付け x 調理法

料理はざっくり捉えると、どんな食材を、どんな味付けで、どんな風に調理するか、という3つの要素から成っています。
この3つの要素をバラバラにして組み立てるという発想を持つことが、あるものでぱぱっとへの第一歩になります。

例えばきんぴらなら、細く切ったごぼうをしょうゆとみりんを使って、フライパンで甘辛く炒めるようにしてつくりますが、きんぴらは「ごぼうじゃないとダメ!」とは誰も言ってなくて、大根とかカボチャでやっても美味しくつくれます。また、「根菜じゃないとダメ!」とも誰も言ってないですから、思い切って鶏肉でやってみたりしてもいいと思います。きんぴらのイメージからはちょっと離れますが、鶏の照り焼きみたいな感じに仕上がります。

「え?そんな単純でいいの?」と思うかもしれませんが、まずは単純化して捉えた方がいいです。細かいことは後回し。

きんぴらでも、照り焼きでも、何か1品つくったことがある料理があれば、食材をあれこれ入れ替えるだけでいくつかのバリエーションができますし、使う食材はまったく同じでも、ちょっと味付けを変えればいつもと違った楽しみ方ができます。

だいこん

(きんぴらをごぼうじゃなくて大根でやるとこんな感じです)

味付けの肝はしょっぱさ

しょうゆとみりんは和食の味付けの基本ですが、毎日同じ味ではさすがに飽きてしまいます。では、味付けのバリエーションはどうやって広げたらよいでしょう?

ポイントは塩気(しおけ)にあります。しょっぱさのことですね。
丁度いいしょっぱさが付いた料理を口にしたときに、人間はそれをおいしいと感じます。砂糖だけで味つけしたおかずが無いように、料理には塩気が欠かせません。(スイカに塩をふった方がおいしいのも似たような理由です)

しょうゆとみりんに飽きたら、別の調味料とみりんを組合せてみます。その料理に適度なしょっぱさが付くなら、みそでも、ポン酢でも、なんならナンプラーでも大丈夫です。しょうゆとみりんでつくる照り焼きを、ナンプラーとみりんでつくれば、タイ風の照り焼きになります。

慣れてくると、「今日つくる野菜炒め、どの調味料で塩気をつけようかな〜?」みたいに考えられるようになります。そのときの気分で「今日は、シンプルに塩でいってみよう〜」と選ぶ感じですね。

ソース

(この日はソースで味付けしたような気がする。焼きそばみたいな感じ。)

ちなみに、みりんは何をしているかというと、マイルドさを足すのに一役買っています。しょうゆだけ、味噌だけだと、しょっぱさだけが際立って味に深みが出ません。みりんをセットにすることで、いい感じのマイルドさが出ます。もし、みりんが無かったら酒と砂糖を半々で入れれば、だいたい似たような効果が得られますよ。

みそいため

(みそとみりんでカンタン味噌炒めです。みりんは偉大だ!)

調味料をどれだけ入れればいいのか問題

なんとなく味付けの仕組みはわかったけど、どれくらいの量の塩や醤油を入れればよいのでしょうか?

しょっぱさを決める調味料をどれだけ入れるかは、使う食材の重さによって決まります。
専門的な本を読むと、使う食材の重さに対してだいたい0.9%程度の塩分量になれば良いなどと書かれていますが、はい、もうムズカシイですね。
重さ何グラムとか塩分何パーセントとか、毎日の実家のおかずがそんな緻密な計算の元につくられていたとは到底思えません。

それに、大さじ小さじはちゃんと計らないと失敗しそうだから量るけど、食材の重さなんていちいち量らないですよね。
自分は、「この端っこの部分、余らせて捨てちゃうのはもったいないから全部入れちゃえ〜!」って感じでやりますが、みんなそんな感じじゃないですか?
そもそも食材はテキトーなのに、調味料だけキッチリ量っても、あんまり意味ないです。

じゃあどうすればいいかというと、あれこれ考えるより、感覚で覚えてしまった方が早いと思います。覚えるというよりは、「自分にはコレくらいが丁度いいな」という好みのしょっぱさを見つけにいく感じです。

こんにゃく

(すごい実家感。ちなみに、こんにゃくを最初にクルってやった人は誰なんでしょうか?天才ですよね。)

普段つくる料理の量なんて、一人暮らしなら1人分だし、4人家族なら4人分なわけで、そんなに頻繁には変わらないですから、いつも使ってる鍋のサイズに対してこれくらいとか、ドボドボッだとしょっぱすぎるからドボッくらいが丁度いいなみたいな感じで、体で覚えてしまうのがいいと思います。ボトル直のフリーハンドスタイルが怖ければ、1回スプーンにでもあてて注げば、入れすぎることはないし、割合もだいたい揃いますね。

それから、肉じゃがの味付けは「しょうゆ大さじ2と、砂糖小さじ1......」とかって暗記しようとすると、脳のメモリーがいくらあっても足りないので、割合で覚えることをおすすめします。肉じゃがみたいな甘辛い味はしょうゆとみりんが味のベースになっていて、しょうゆとみりんは1:1で合わせるのが基本というルールを覚えます(追記:「和食 黄金比」とかって検索すると、テンプレっぽい割合がいっぱい出てきますよ)。味見して薄かったら、同じ割合でちょっと足せば、簡単に調整できます。

アスパラ

(ここまでの写真6枚中4枚にごまがふってありますね...。あんまごま好きじゃないんだけどな...。)

味のブースターという考え方

いわゆるさしすせその基礎調味料だけでも色んな味が作れますが、それだけだと物足りなくなってきます。そんなときはブースターと(勝手に)呼んでいる食材を活用すると、簡単に味をリッチにできます。

どういうことかというと、塩味というのはもともとさっぱりしてますが、そこにレモン汁をプラスしてさっぱり感を更にブーストさせるみたいなイメージですね。
焼肉屋でタン塩を食べるのを想像してみてください。レモンなくても美味しいですけど、あったほうが断然いいですよね!

すなぎも

(家でタン塩は焼かないので、かわりに砂肝をのせます)

レモン汁もそうですし、しょうが、にんにく、ごま、しらす、梅干、ネギとか色んな食材がブースターになりえます。追い鰹とか追いバターとか言うように、仕上げに鰹節やバターを入れて旨みやコクをブースト!みたいな使い方もよくあります。

中華なんかだと、中華鍋に注いだごま油に、刻んだにんにく、しょうが、長ネギなんかを入れて炒めて香りマシマシオイルをつくって、それでジャッ!と炒めたりしますよね。香味ブーストみたいなテクだと思います。

また、味のベースをつくるために必須の調味料と、ブースターとして加えているプラスαの調味料を区別できるようになれば、参考にするレシピに載っている材料が全部揃っていなくても恐れることはありません。
塩気の要になっている調味料を省略してしまっては美味しく仕上げることはできませんが、足りないものがブースター系なら、省いても多少あっさり目になるだけです。

ブースト

(香りマシマシオイル。この後、麻婆豆腐的なやつをつくったハズ)

バランス献立のカギは調理法

ここまでくると、1品くらいならパパっとつくれそうな気になってきますが、おかず1品だけの食卓はちょっとさみしいので、プラスαが欲しいです。
品数を増やそうとすると今度はバランスをとるという別の仕事が発生しますが、そんなときは、調理法を意識すると簡単にバランスを取れます。

焼き魚、おひたし、みそ汁、ごはん の献立がバランス良く感じるのは、焼き物、あえもの、煮物(汁物)と、それぞれ異なる調理法を用いることで、食感や温度にコントラストが付くからです。また、焼き魚は塩味、おひたしはしょうゆ味、みそ汁はみそ味、と、味がかぶっていないところも良いですね。

さんま

(さんまは塩マシマシで焼くとおいしいです)

考え方の参考に、自分の例を挙げると以下のような感じです。

まずメインのおかずに使う食材と調理法を決めます。昨日が肉なら今日は魚と決めてしまって、その日のお昼に食べたものとのバランスや、寒い日だったら煮物にするとか、そんな感じで、今日は肉を炒めるとか、魚を煮るとか、ざっくり決めます。
次に副菜を考えますが、メインのおかずは大体温かいので、冷たい小鉢で何ができるかな?と考えます。メインが油っぽければ、もう油は使いたくないので、さっぱりした酢の物にしようとか、消去法っぽい感じで決まっていきます。
余裕があれば、メインとも副菜とも違う調理法でつくれる小さいおかずを1品用意して、これに味噌汁とごはんを付ければ、バランス献立の完成です。慣れればパズルのようなもので、結構楽しいです。

こんだて

(ある日の夕飯です。なんか品数が多いですが、多分残り物です。)

料理のトレーニング

さて、いろいろ書きましたが、ここに書いたようなことは、読み物っぽい料理本を紐解けば、必ずと言ってよいほど載っています。もっと知りたいと思った人は、ぜひ本屋さんに行ってみてください。きほんのおかず50とかのレシピ本ではなくて、写真の少ない、文章で書かれた料理本がいくつかあるはずです。

この著者の考え方は自分にあってるなと思った本があったらそれを一冊読み、基本的な考え方をインストールした後は、実践あるのみです。
「こうしたら、こうなるかな?」という自分なりの試行錯誤を繰り返しやってみましょう。

正確な分量や材料が書かれたレシピを見ながら料理をするというのは、答えを見ながら問題を解くようなものです。その通りにやれば必ず正解が出ますが、正解の出し方はいつまでたってもわかりません

ピーマン

(ジャコでうまみブースト!)

「10年くらい主婦やってるんですけど、未だにレシピがないと何にもつくれないんですよ〜(苦笑)」という方に、これまで何人もお会いしました。理想は何ですか?と聞くと、口裏を合わせたように「あるものでぱぱっとできるようになることですね」と返ってきます。

何割かの方(結構いっぱいいる!)は、料理教室に通った経験があったり、中には料理系の学校を卒業したという方もいます。それでも理想に近づかないと言うのは、日々、答えを見ながら問題を解いている(というより写してる)からにほかなりません。
それでもやらないよりはマシで、ゆるやかには上達しますが、気がついたら10年経ってたなんてことは、現実に起こり得ます。

楽器でも、ダンスでも、車の運転だってそうですが、知識を得たその瞬間に上手くやれるなんてことはなくて、そのスキルを身につけるにはトレーニングが必要です。丁寧に解説された初心者向けのレシピ本も、料理教室も、その時々の課題である1品を美味しくつくるという目的に対しては有効ですが、もっと総合的な力・自炊する力を養うための学習法・教材としてはベストではないように思います。

パスタ

(最後の1枚はパスタ。在宅勤務のランチはパスタ便利ですね)

というわけで、ベストな教材がないなら作ろう!ということで、あるものでパパっとできるチカラが身につく、料理のトレーニングアプリを自分たちでつくっています。

アプリの名前は、おいしいたべかたチャレンジドリル たべドリというのですが、これを使ったら、本当に料理が上達するのか?あるものでパパっとできる理想像に近づくのか?という検証をこの数ヶ月の在宅勤務でやってみました。
次回後編ではそのことを書きたいと思います。お楽しみに!

追記:後編はこちら


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?