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マネジメントではなにと向き合うべきか

要するに"属人化"させようとしているか否か、ということです。

部下と課題を直結して「部下」とだけ向き合い部下たちに丸投げで課題解決させようとすると、どうしてもその課題=部下のものという構図から脱却できません。

優れた上司は部下固有の課題にせず、課題そのものを組織の課題として取り上げ、誰でも解決できるように仕組み化します。これは課や部と言った組織だけの話ではありません。プロジェクトチームという組織の中でも同様のことが言えます。

 「アイツができるから、アイツにやらせておけばいい」

ではなく

 「アイツができるから、アイツに支援させて他のヤツでもできるようにしていこう」

となるのです。
これは言い換えると「すでにできてるヤツにやらせても成長率は高くない。組織としては成長率の総和が高い方がいいに決まってる」という考え方になっているといってもいいでしょう。

そんなメンバーや部下と向き合う際によく用いられるのが「打合せ」や「会議」です。

会議を意義深いものにするために大切なのは、マネージャーと個々のメンバーの間で日ごろから質の高いコミュニケーションが行われていること、これに尽きます。そもそも会議とはコミュニケーションの結晶のひとつにほかなりませんから、当たり前のことです。

しかし、実際には「言うは易く行うは難し」。
人間同士の営みですから一朝一夕に改善できるものでもありません。

ですから、マネージャーはあまり焦らず時間をかけて、粘り強くメンバーとのコミュニケーションの質を高めていく努力をする心構えをもつことが大切です。

そのために、まず第一に押さえておかなければならないのは、

 「役職の違い」は「役割の違い」であって、
 「人間としての価値」に高低はない

という基本を徹底することです。

ここで

 「オレは●●なんだから(人として)偉いんだ」

等と意味不明なはき違え方をするとメンバーはそれを敏感に察知しますから、どんなに上辺のコミュニケーションを工夫しても信頼関係を築くことは不可能です。

役割には権限と責任の大きさに差があるだけで、人間として偉いかどうかは関係しません。その権限と責任をコントロールする覚悟と、最低限の能力さえあれば本来誰がその役割を演じても問題はないはずなのです。中には人として偉い人もいるかもしれませんが、偉くなくても上司にしてしまえます。

しかし、「自分はそんな思い違いはしない」とタカをくくるのは禁物です。

人間の多くは条件が整っている間でのみ正しいことを行いますが、条件が整っていなければあるいは条件が崩れれば不正を起こしかねないようにできています。

同じように人間はよほど条件が整っていない限り、知らず知らずのうちにすぐに思い上がってしまうものですから、日ごろから自らを振り返って軌道修正を続ける習慣をもつのがよいでしょう。「セルフコントロール(自制)」とはそう言うことです。

これが、良質なコミュニケーションを生み出す基本中の基本です。

そして、常に「何かを成し遂げる」ことに集中することです。

「ヒト」と向き合うのではなく「コト」と向き合うと言ってもいいでしょう。相手の非を責めるためのコミュニケーションではなく、「どうすればコトを完遂できるのか?」を見出すためのコミュニケーションに徹するのです。

たとえば、メンバーが何らかのトラブルを生み出した場合であれば、その責任追及などは脇に置いといて、まずはトラブルの解消に集中する。そして、トラブルを乗り越えていかに目標達成を成し遂げるかに全力を注ぐ。

そのためにリーダーシップを発揮するのが、マネージャーの仕事なのです。

だから…というわけではありませんが、私は仕事で発生した問題において、過去一度も「責任追及」も「怒る」こともしたことがありません。

ただの一度もです。

もちろん「サボる」「手を抜く」「責任感がない」など、仕事との向き合い方に根本的な問題があるメンバーには適切にそれを指摘して、改善を促す必要はあります。

ときには、説教や叱責も避けるべきではないでしょう。
それでも改善しなければ、段階を踏んで評価に加筆することも辞しません。

しかしそれも、あくまで「何かを成し遂げるため」という目的に沿っているべきで、その方向性からズレて「人格否定」のようなニュアンスを帯びてしまえば、メンバーのモチベーションと良好な信頼関係を損ねる結果を招きます。

ですからマネージャーは、メンバーという「ヒト」と向き合うのではなく、あくまで「コト(課題)」に向き合うことを徹底すべきです。

そして、メンバー全員と同じ「コト」の方向を向いて、

 「どうすれば成し遂げることができるか?」

とコミュニケーションを取る。これができるようになれば、チーム内のコミュニケーションはかなり良好な状態になるはずです。

こうした関係性をメンバーと構築するうえで、最も重要なのは1on1ミーティングにおける「報連相」です。実際には、打合せや会議と言うシチュエーションにしなくてもかまいません。1on1を実施するという点に意味があるのです。

そして、1on1ミーティングでメンバーと良好なコミュニケーションが取れるようになることが、少人数ミーティングや定例会議の品質を決めることになります。

ですから、まず第一に、

 いつでもメンバーが「報連相」をしやすいようにする

ということを心がける必要があります。

そのためには、日ごろから「挨拶を欠かさない」のはもちろん、「気軽に声を掛ける」ことです。メンバーに心を開くのを期待するのではなく、こちらから心を開く。

これが基本です。

なかには不愛想なメンバーもいるでしょうが、図々しく声をかけ続けるのが正解。

両者の間に“壁”ができてしまうと余計に相手は心を閉ざしますから、常にマネージャーの側から“壁”を越えようとする姿勢を示すことが重要です。

そして、

 できるだけメンバーから自主的に「報連相」をしてくるような空気を醸成する

ようにします。

もちろんこちらから「報連相」を求めざるを得ない局面はありますが、マネージャーに呼びつけられるとメンバーはどうしても“防御的”になりがちです。

ですから、できるだけメンバーの主体性を尊重して、「呼ぶ」のを我慢するのもマネージャーの力量と心得るべきでしょう。そのためにも先に述べた「コト」に向き合う姿勢を徹底することが重要です。

メンバーは、何らかの問題を抱えているからこそ「報連相」に来るわけです。
それを責められたら、誰だって足が重くなります。

逆に、「一緒に問題を乗り越える」という姿勢を示すマネージャーであればより気軽に「報連相」できることでしょう。

そして、1on1ミーティングにおける鉄則は「話す」より「聞く」ということです。
これは非常に重要なポイントです。

なぜなら、メンバーには「自分の頭で考える人材」になってもらわなければならないからです。自分の頭で考えたうえで、マネージャーを通して組織とコミュニケーションを取りながら「なすべきアクション」を確定させ、それにまい進する。そんな「自走するメンバー」が組織に何人いるかで、そのチームの生産性は決定づけられます。

現代のように、ビジネス環境が刻々と変化する時代には上意下達だけでは環境変化に即応するのは不可能です。環境変化を最もダイレクトに感じている現場のメンバーが自分の頭で対応策を考えて、組織的な意思決定を勝ち取り、実行に移すというサイクルを最速にすることができなければ生き残ることすら難しくなるでしょう。

そして、あらゆる会議や打合せ、報連相はそのような「自分の頭で考える」メンバーが集まって知恵を出し合うことで、よりよいアイデアを生み出し、よりよい意思決定を生み出すことにこそ意味があるのです。

つまり、「自分の頭で考える」メンバーを増やすことこそが、「会議の品質」を高める必須条件であるというわけです。

そのためには、1on1ミーティングで「自分の頭で考えたこと」を話してもらうことを徹底すべきです。だからこそ、マネージャーは「話す」より「聞く」ことが大切なのです。

もちろん、最初から「聞く」ことに徹していても若いうちは"自発的に考えたり""自ら勉強したり"という人は多くないでしょう。

ですから、そういうメンバーにはまず、

 自分の知っていることを一通り「予備知識」として渡す

事から始めます。

経験談でも見聞きしたことでもかまいませんが、メンバーが考えるための参考となる情報提供を行ってみましょう。それも行わずに「どうするんだ」「どうしたいんだ」とまくし立てても、知識量が乏しく、自ら考える癖をつけていないメンバー相手では、ものごとは前進しません。

では、どうすれば「聞く」ことができるか?

方法はひとつです。

「指示」するのではなく「質問」することを第一に考えるのです。

メンバーの「報連相」を聞いて、すぐに「指示」をしたほうが速いケースは多々ありますが、それでは「自分の頭で考える」というプロセスがなくなってしまいます。そして「指示待ち人間」をつくってしまう結果を招くでしょう。

中堅層にこうした人材が増えてしまうと上長は非常に苦労することになるでしょう。

それよりも、多少手間はかかってもまずは

 「君はどうしたいの?」
 「どうすべきだと思う?」

と質問をする。
その回答に疑問点があれば「否定」するのではなく、「なぜ、そう思うの?」とさらに質問をする。そして、自らの頭で最適解を見出すのを促すようなコミュニケーションを基本に据えるのです。

ただし「誘導尋問」になってはいけません。

マネージャーが「答え」を知っており、その「答え」に導くために「質問」を繰り出すというコミュニケーションは、むしろマイナスの効果さえ生み出しかねません。

「誘導」されていることをメンバーは敏感に察知するために、良質なコミュニケーションの根本にあるべき信頼関係を損ねてしまうからです。

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