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上司の仕事は部下がやりやすくすること、部下の仕事は上司がやりやすくすること

おはようございます。

そろそろ後継に伝えようと思っていたことも中盤に差し掛かってきました。

もうかれこれ1552記事もあげてたんですね。

自分でもビックリ。

まだかれこれ2年も経ってないはずなんですけど。
もともと、私に部下がいれば長い時間をかけてじっくりと理解してもらって、ビジネスを含め色々なところで活用してくれればと思ってため込んでいたこれらのノウハウも、いい加減伝える機会もなさそうなのでこうして書き綴っているのですが、いったいいつになれば終わるんでしょうねー。

Twitterに書いているショートver.も、そのうち整理してnoteにサマリ記事をまとめていきたいと思います。そのうち。


さて今日のお題は「上司」と「部下」という、ちょっとあいまいな関係性やその役割についてです。

「上司」と「部下」という言葉には上や下という文字がついているので、どうしても上下関係ばかりに目が行ってしまいがちですが、本来「上司」と「部下」の間に上下関係なんて関係性はありません。

役割と責任と権限に違いがあり、それぞれがそれぞれの役割を果たしたうえで仕事上のつながりがあるというだけでしかないのです。なまじ(適切に行使するだけの力量の有無にかかわらず)人事権を持っているがために、支配・従属のような関係が成立しているかのように誤解させてしまっているにすぎません。

そもそもマネジメントは上司が部下を思うままに操る術ではありません。
マネジメントは上司と部下が力を合わせて取り組むものです。

上司は部下が成果をあげられるように部下に最大限の裁量権を与えることであり、部下は上司が成果をあげやすくするために上司に最大限尽くすことです。

上司をマネジメントすることは、上司との間に信頼関係を築くことである。そのためには、上司の側が、部下が彼の強みに合わせて仕事を行い、彼の弱みと限界に対して防衛策を講じてくれているものと信じられなければならない

P.F.ドラッカー『プロフェッショナルの原点』

ドラッカーはこのように、「上司と部下の間に信頼関係を築きたければ、まず上司が部下に適切な環境を与えてくれる存在なのだと信じさせよ」と言っています。裏を返せば、それができない上司は部下からの信頼を得ようなどとおこがましいと言っているというわけです。

この著書では、要するに

 「部下は、上司の命令にただ従っていればいい」

ものではなく

 「部下が上司をマネジメントしてあげなければならない」

上司はそういう存在だと、現代経営学の権威が公に言ってのけています。

上司は…言い換えると管理職は自ら企業に貢献する度合いは決して大きくありません。指示や決断をする責任を持っていますし、それら指示や決断1つで貢献に大きくかかわる立場とはなっていますが、結局売上や利益に貢献するのは実務を担う部下たちです。上司が多くの部下以上に貢献するということはあり得ません。

上司が出世する時、それは部下たちの努力と成果によって出世させてもらっているにすぎないのです。

上司は決してイエスマンを望んでいるわけではない。何にでも反対し、文句を付けてくるへそ曲がりももちろん困る。上司がほしいのは理にかなった直言なのだ。賢い上司は部下を本能的に3種類に分類している。「ゴマすり」「アマノジャク」、そして「バランス感覚のよい部下」。できればこの第3のカテゴリーに分類されたいものである。

デービッド・ダレンサンドロ

バランス感覚のよい部下とはどんな部下なのでしょうか。そもそも上司と部下はお互いどんな関係なのでしょうか。

上役と部下はお互いに貢献し合う関係である。すなわち、上役に自分が何をプラスすることができるか。逆に、上役から自分にプラスになるものとして何を奪えるかという関係である。このバランスが崩れれば上役であること、あるいは部下であることに意味がなくなる。

P.F.ドラッカー

上司と部下の関係はこうありたいものです。

上司は部下との間に信頼関係を築かなければなりません。上司が部下とよい関係を築くことは、精神的なものでもなければ単なる心掛けでもありません。それは「仕事」であり「責任」です。

仮にプレイングマネージャーとなっている上司であれば個人活動のなかで少なからず貢献しているかもしれませんが、それでも所詮は1人分の功績にしかなりません。よほど優秀な人でも2~3人分、よほど生産性が高い人でも4~5人分が限度でしょう。

しかし、部下…と呼ばれる人たちは上司の数倍~数十倍存在しています。

彼らが1人分だけでなく、現在の1.2倍、1.5倍、1.8倍…と成果を上げられるようになれば上司が1人で実現する程度の貢献度なんて雀の涙ほどでしかないことがわかります。

だからこそ、部下たちが

 「上司をどれだけ信頼できるのか」
 「どれだけ働きやすい(物理的、人的、プロセス的)環境が用意されているのか」

でその組織のもたらす成果は大きく変わりますし、結果として上司の組織をまとめる能力評価にも影響を与え、出世等にもかかわってくることになります。

ゆえに上司は、部下にとって「仕事をしやすくする」ことが最も重要なミッションであり、また部下はそういった上司をさらに出世させて、自分たちがもっと仕事をしやすくするようにすることが求められているわけです。

上司が適切な環境を整え、部下たちの働きやすさを最大化できれば、次は部下たちがそんな素敵な環境を与えてくれた上司に報い、また自分たちが最も働きやすい形にするために上司の身の回りをコントロールしてあげる番です。

若手の場合

若いうちは、上司との接点において上司に負担をかけさせないことに注力するといいでしょう。その最たるものが適切な「報連相」です。

・上司が欲しいタイミングで情報を提供(報告・連絡)する
・上司が欲しい形で情報を提供(報告・連絡)する
・上司に負担がかからない質問・相談の仕方を見出し、実践する

たったこれだけです。上司は必要十分な情報さえそろえば適切に判断し、最も有効な指示をくれます。場合によっては指導や教育もしてくれることでしょう。

しかし、それが有機的に機能するためには、とにもかくにも上司がそうしやすい状況にまで持っていってやる必要があります。そこで重要なのが「情報」の取り扱い方です。そして情報を取り扱うインターフェースは十中八九

 コミュニケーション

です。これを理想的な形にする努力を継続してください。コミュニケーションがある一定水準になれば、上司はとてもスムーズにマネジメントできるようになります。むしろ上司に良いマネジメントをさせることができるのは、部下の情報の取り扱い方次第だといっても言い過ぎということはないでしょう。


一人前の場合

情報の取り扱い方やコミュニケーションが一定水準以上となった人が、次に「自分たちが最も仕事をしやすい状況を形作るために」実施すべきは

  • 自分でもできそうな仕事は上司から引き取る

  • 上司でなければできない仕事を見分け、上司にはそのことだけに集中してもらう

ことです。そうすることで上司はますます余裕ができ、できた余裕を部下の環境改善のために費やすことが可能になります(もちろん、そんなまともな上司だったら…という条件が付いてきますが)。そうなるよう上司のタスクマネジメントをしてあげるのが部下の隠れた役割といってもいいでしょう。

ただし、その際に気を付けなければならないのは

  • 抱えている自分の仕事を疎かにしないこと

  • 根拠なく「その仕事を私に任せてください」とやらないこと

この2点だけです。

一人前であれば、こういったことが「できていない」ということはないと思いますが、できていない場合は、結果的に自分の周りのタスクが破綻し、逆に上司に迷惑をかけてほかのことに注力できる余裕なんて生まれなくなることも理解しておかなくてはなりません。

「上司の負担を減らす」というのは、なにも上司のタスクを減らすだけではありません。上司に(自分のせいで)想定外の余計な面倒を負わせないようにすることも大きく貢献することになります。

こう言うと、中には「どうして自分が上司の仕事のことまで考えなければならないのか?」と思われる人もいるかもしれませんが、長く務めることを視野に入れているのであれば決してムダになることはありません。

なぜなら、いずれその仕事はそのままあなたの仕事になるかもしれないからです。


適切な上司と部下の輪にない場合

この輪の外にいる人たちは言ってみれば、企業にとっての負債であり、リスクです。

上司と部下との間で、お互いにお互いの役割を十全に発揮するための意思、思考、努力が見られず組織としてきれいにかみ合っていない状況というのは、間違いなく余計なコストがかかっている状態です。他の「お互いにお互いの役割を十全に発揮している」組織であれば数倍の成果を上げているかもしれないところを、延々と低燃費で走り続けているわけですからおかしくなるのは当然です。

1速、2速と、低いギアでアクセル全開にしているような違和感を感じることでしょう。車なら間違いなくエンジンやギアに負担がかかり、故障のもととなります。

組織であれば、まず部下たちにしわ寄せが行きます。

場合によっては車の部品が摩耗するのと同様に、部下たちの疲弊・憔悴・不満・軋轢などが発生し、心的障害をかかえてしまったり、ストレスに耐え切れず辞めていく人も出てくることとなります。

そこそこ規模が大きい企業であれば売上や利益などの数値目標を達成することはできるかもしれません。表面的なKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)だけしか見ていなければそうでしょう。

しかし、実態を見てみると部下は入れ代わり立ち代わり交換されていて、自転車操業のようになっているなんてのも珍しくありません。実際、人の変更にかかるスイッチングコストや、そもそも辞められたりしなければかからなかった採用コストなども計上すれば、KPIは著しく悪化していることがわかるでしょう。

一次元的なKPIしか見れない経営者の下では通用するかもしれませんが、遅かれ早かれ徐々に歪みは大きくなり、負債を負債と気づいたころには手遅れ…ということになりかねません。

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