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仕事には時間を無駄にするものがたくさんある

「何の成果ももたらさない仕事が時間の大半を奪っていく。
 ほとんどは無駄である。
 地位が高くなれば、その高くなった地位が、さらに時間を要求する」

P.F.ドラッカー『経営者の条件』

仕事には、時間を無駄にするものがたくさんあります。

そもそもその「無駄」を無駄ということを考えずにタスクを生み出している人がいるということが諸悪の根源なのですが、たとえば

 得意先からの電話に「出られない」とは言えない

なんてことがありますよね。仮に日曜のゴルフのお誘いであろうと、娘が希望の大学に入ったという自慢話であろうと、得意先の話には耳を傾けなければならないケースがあります。

同様のことは社内でもあります。
上司や経営層のお誘いはその内容が何であれなかなか断りづらいところがあります。

電話応対なども調べればわかるようなことを聞いてきても、ていねいに応対したほうがいいケースがあります。

そのようなことが1日中続くこともあるでしょう。
そんな時に

 「今日はどんな仕事をしたの?」

と言われても、企業貢献とは呼べないものはなかなか口にすることもできないことがあります。まさか「時間の無駄遣いをしてました(させられていました)」ともいえません。しかし、案外誰もが同じ事情を抱えていたりするのです。

 成果にはなにも寄与しない仕事に時間を取られる。
 膨大な時間が、ほとんどあるいはまったく役に立たないことに費やされる。

非常に嫌ですね。人生の無駄遣いです。
自分のためにはまったくなりませんし、企業のためにもなりません。

ドラッカーはただでさえ時間のないところへもってきて、マネジメント上の欠陥による時間の浪費もあるといっています。

以前もお伝えしましたが

基本的に、仕事の成果とは

 成果 = 業務効率 × 時間

で成り立ちます。
ここでいう業務効率とは、「生産性」と言い換えてもいいでしょう。

そして、この生産性…業務効率を下げれば下げたぶんだけ企業は利益を下げ、時間を無駄に費やした分だけ次の仕事にシフトする時間が遅れるため、限られた枠内で活動できる仕事量が減ります。そのぶん機会損失も増えて売上も低下します。

収益構造を根本的に改善したいのであれば、新しい事業に手を出すのもいいのですが、まずは既存事業において最も業務効率を高めるところから始めるといいでしょう。

 「もうこれ以上、改善できない」

といえるところまで改善してから次の事業に手を出して遅くはありません。その業界、その事業で他社と比べても圧倒的な差がつけられるくらいの生産性、業務効率となればそれだけで圧倒的な競争力を身につけているはずです。

「よくマネジメントされた組織は日常はむしろ退屈な組織である」

P.F.ドラッカー『経営者の条件』

では、そもそも「生産性」を阻害する要因とはどこにあるかというと、よく新人教育の中で説明していたりもするのですが

生産性を低下させるソリューション活動の阻害要因

基本的にこの5点。

個人レベルであればこの5点を解決し、最適化するだけで劇的に生産性が向上することになります。

①手を動かさない時間

「悩んでる時間」、「しゃべってる時間」等まさに手を動かしていない時間です。②の準備不足と重複する可能性もありますが、基本的には別の要因で手が止まる時間だけと考えてください。

 1時間あたり、"10"の仕事が進む

ことを前提に計画を立てている場合、その"1"未満になるような仕事の仕方をすればおのずと遅延が発生します。たとえばあるタスクを割り当てられ、1日で"80"の成果を出さなければならないとしましょう。

 成果 = 業務効率 × 時間

と考えた場合、

 80 = n × 8(1人日=8時間)

となりますので、生産性(時間あたりの成果量)を"10"で保てなければ遅延するというわけです。もしも悩み始めて生産性が"8"となってしまった場合

 80 = 8 × m

…m=10時間となりますよね。単純な算数ですけど、実際にそうなります。

以前、実際にとても生産性の悪い子がいました。

具体的な手順を伝え、目の前でやって見せ、一緒に隣について作業の内容を見ながら都度説明しているにもかかわらず、納得ができないのか、ほかに何か理由があるのか、とにかく手を動かそうとしなかったんです。20時になっても、23時になってもほとんど進まない…でも、何が理由で進められないのか当人は何も話そうとしない。

こうなってしまうと生産性も何もあったものではありません。

スケジュールというものは、一人ひとりの生産性を考慮に入れて時間配分されていますが、そのなかに「個人的に悩んでる時間」なんてものは含まれていませんので、想定されていない時間に費やさないよう、費やす割合を大きくしないよう

②準備不足

何か行動を起こす際にはかならず「段取り」というものが必要です。

料理をするにしてもそうですよね。

「下ごしらえがすべて住んでいる」状態
「目の前に材料がすべてそろっている」状態
「これから買い出しに行く必要があるかもしれない」状態

それぞれ、開始から終了までに要する所要時間は圧倒的に変わります。スケジュールを考える際に、現状を正しく把握できているかどうかにも大きく影響を受けますが、なにもこれはマネージャーだけの責任ではありません。個人レベルでもそうです。

・自分の担当する業務に対する理解を深めておく
・引継ぎ等をしっかりしておく
・課題やリスクを洗い出しておく
・洗い出した課題やリスクのクリティカルパスなどをイメージしておく

といったように事前にどこまで情報を収集しているかによっても生産性は劇的に変わります。

準備をおろそかにすれば、活動時間のなかで準備から始めなければなりません。

 成果 = 業務効率 × 時間

ではなく

 成果 = (業務効率 × (時間 - 準備時間))

となります。
期待されている「成果」と「時間」はスケジュールや計画によって先に定められてしまっていますので、先ほどと同じように「1日で"80"の成果」を出す必要が生じた場合

 80 = (n × (8-準備時間))

となりますから、いかにnの数字を上げなければならないかがわかります。仮に4時間を準備に充てれば、

 80 = (n × (8-4))

となりますので、n=20…通常の倍の生産性を発揮しなければ、期限までに納められないことになります。

③作業パフォーマンス

単純生産性のことを指していると考えてください。

たとえばタッチタイピングの速度のようなものです。1秒間に10回打てる人と1秒間に20回打てる人では、当然生産性は倍の差があります。ちょっとしたことですけど、生産性を大きく変えることはよくあります。

私が新人にもオススメするのは

 IME辞書

を駆使することです。

タスクバーの「あ」とか「A」とか表示されたアイコンを右クリックすると、こんな感じのコンテキストメニューが表示されますよね。そこに『単語の追加』というメニューがあるはずです。これをクリックすれば単語の登録画面が表示され、自分で任意の辞書を登録することが可能です。

たとえば

単語の登録画面

こんな感じで単語を登録すると、何十文字、何十タイピング分の労力をたった1文字で変換することも可能です。その用語・用字の使用頻度が高ければ高いほど、生産性は何十倍、何百倍にも向上させることが可能になります。

たとえば議事メモなどをとる際に、話すスピードになかなか追いつけなくて困ってる…なんて人は、こういった機能を駆使してみると案外楽になりますので活用してみてください。

④ミス・誤りによる手戻り

その名の通り、ミス・誤りによって修正作業が発生することを指します。「抜け・漏れ」なども考慮に入れるべきかもしれませんが、不足している場合はそもそも100%完了した状態とはいえませんので手戻りとは呼ばない…と解釈してください。

すでに一度100%完成した(と思った)状態から、改めて修正を加えなくてはならない時間…というものは、案外スケジュールに考慮されていないことがあります。

与えられたら与えられた時間だけ使い切ってしまう…すなわち

パーキンソンの第一法則

が生じてしまって無用な時間を大量に消費してしまう問題です。修正前までの分については確かに期限内に抑えることができて目的を果たせたかのように見えますが、そもそも成果としては不十分な状態ですからここで

を強制されてしまい、さらに余計な時間を費やさなくてはならなくなります。

 作成のために消費した時間 + 修正に要する時間

を失ってしまうため、生産性はガクンと下がります。単純に費やした時間が無駄になるだけでなくその修正・改善などに費やす時間も必要になることで通常の生産性低下とくらべても倍以上の損失を生み出しかねないため、この点には注意しなくてはなりません。

 ・ミス/誤りを減らすためにはどうすればいいか
 ・そもそもミス・誤りを混入させにくい様式や手順はないか

という点は常に配慮しておいたほうがいいでしょう。これはスケジュール破綻をさせないための取り組みとしても有効ですが、それ以上に「企業貢献」にものすごく効果のある取り組みでもあります。

経営者や管理職は「プロジェクト」など非常に大きな枠でしか管理できないため、なかなかこの地味すぎる取り組みの効果を数値化することもできず、実感することができる人はいないでしょう。

しかし、ミスや誤りをそもそも発生させないようにするというのは、大幅に生産効率を高めるだけでなく、その先にある利益率の向上であったり、顧客満足度向上にも大きく寄与します。また、ネガティブ要因(トラブルの発生確率や過剰労働を強いることによる人材の流出など)の低減にも大きく貢献します。

 手戻りを減らす

というのは単純に個人レベルの生産性を向上するというだけではない、壮大な戦略レベルで検討してもいい取り組みにもなります。

案外、そのことを理解している経営者や管理職というのはなかなか見ないので、結局は個人レベルで"自分の身の回りだけでも"なんとかするしかないケースが多いでしょう。その意味でも、従業者個々人はあまり企業や組織に期待しすぎない程度に、自身の取り組みとして検討するとよいかと思います。

⑤認識祖語による手戻り

同じ手戻りですが、同じ手戻りであるがためにこちらもとても重要な取り組みとなります。当然、生産性向上の効果も大きくなります。

こちらは個人レベルのミス・誤りではなく、主に複数人の間で起こる

 コミュニケーション不良

によって全く期待されたものとは異なる成果を生み出してしまった場合の手戻りです。実はこの問題が一番発生しやすく、しかも一番生産性への影響も大きい問題だったりします。

たとえば

 上司やマネージャーからの指示
 お客さまからの依頼
 次工程による上位ドキュメントからの引継ぎ

などといったように、ヒトとヒト、モノとモノのインターフェースにおいてコミュニケーションがうまく連携されず、認識齟齬が発生する場合というのは発見が遅れがちです。

上司に提出して、上司が確認しなければわからない
お客さまにレビューしていただいて、指摘されなければ発覚しない
テスト工程に入って、実際に動かしてみて初めて気づく

といったように、かなり終盤に差し掛かってからでないことが多いため、残り時間の少ない中で、作成した成果の一部または全部をもう一度やり直さなくてはならない可能性をはらんでいます。

スケジュールを破綻させる影響度としてこれほど大きなものはないでしょう。

こうしたリスクを減らすには、とにかく「コミュニケーション不良」を生じさせないことです。コミュニケーション不良は、

 受け手(聞き手/読み手)の読解力が
 送り手(話し手/書き手)の表現力と一致しない、または表現力よりも低い

状態の場合に起こるものです。

これは必ずしも受け手側の責任が大きいというわけではありません。そもそもそういった潜在リスクを考慮に入れて表現していない側にも同量の責任が伴います。

たとえば、

項目○○に"1"を入力し
「登録」ボタンを押下した場合、
データベースのカラム△△に"1"が登録されていること

といったシンプルかつ具体的な確認項目となっていれば、読み間違える危険性も大幅に減ることでしょう。しかし、具体的にするのが面倒だからと手を抜いて

適切な値を入力し
「登録」ボタン押下時
正しく登録されていること

と記載されているとどうでしょう。

「わかる人にはわかる、わからない人にはわからない」が成立してしまいますよね。

私たち、IT業界における不良や欠陥というのは、厳密には

 決定論的原因故障

と言って、偶発的に生じるものではなくすべて『人災』によって起こすべくして起きている不良や欠陥となっています。そのため、そこに携わる人たち一人ひとりがどのように取り組み、どのようにリスクを回避するか、その姿勢と貢献によってこうした問題を低減することも回避することも理論的には可能なはずなのです。

コミュニケーションは質を高めれば高めるほどに、生産性にも大きく寄与・貢献します。


さいごに

 「すでに起きたことのある問題で同じ混乱を三たび起こしてはならない」
 「混乱に対処できるようになることは進歩とはいえない」
 「対処以前の問題として予防するか、ルーティン化してしまわなければならない」
 「いちいち時間を取られてはならない」

ビジネスにはとにかく時間を無駄にしてしまう要素が多いものです。

他人の時間を奪わなくていいようにすることはもちろん、自分の時間を効率的に使えるよう立ち回り方を極めましょう。そうしたぶんだけ時間的余裕は生まれます。時間的余裕が生まれればもっと企業貢献が行えて評価を高めることもできるでしょうし、そうしなければプライベートな時間をその分増やすこともできるはずです。

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